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市場創造したかったら、〇〇に会いに行け!スタートアップに贈るマーケティングのススメ

「SPEED UP!START-UP!」をコンセプトに、スタートアップのCXO層やアドバイザーが経営の失敗やノウハウ、メソッドの共有を行うことで、様々な経営の壁を乗り越え、事業の成長を加速させるためのコミュニティ「Startup CXO Meeting 柏の葉」。

各社NDA締結のもとに完全非公開で定期的に開催する「CXO Meeting」では、参加者の実体験や現在進行形でぶつかっている課題などが赤裸々に語られます。

今回のCXO Meetingは、「Startup CXO Meeting 柏の葉」のコミュニティアドバイザーであり、トレジャーデータの日本市場立上げや日米を拠点とするVC、Carbide Venturesで活躍する堀内健后氏を中心に、「スタートアップのリアル〜マーケティングで市場創造した成功と失敗〜」をテーマに開催。完全非公開のため、具体的なエピソードはお伝えできませんが、少しだけ当日の模様をお届けします!


創業からPoCやPoBを経て、プロトタイプの開発、PMFと進み、いよいよ製品の販売を進めたいスタートアップにとって、まず始めにやらなければならないのがイノベイティブな人がいる営業先の開拓とそこから生み出される市場を創っていくこと。これこそがマーケティングの本質であり、市場ができ、ブランドが作られていきます。市場創造したら営業先が現れると思っているかもしれませんが、営業先が0なのに、市場はできませんよね。マーケティングは営業活動の一環として行われるものです。限られたリソースのなか、闇雲に営業先のリストを作成したり、営業電話をかけるのは、あまり良い手とは言えません。そこで必要になってくるのが「マーケティング」です。

今回はコミュニティアドバイザーの堀内健后氏がトレジャーデータ立上げ時に行った市場創造やマーケティング施策の実体験を元に、米国と日本のアプローチの違いも交えながらマーケティングとは何か、営業との違い、大企業との連携を進めるにあたってのノウハウなどが話されました。

マーケティング=風呂敷を広げイノベーターのリード獲得に全集中

「マーケティング=顧客が商品を購入するまでの仕組みづくり」ということを知っている人は多いと思います。しかし、マーケティングとセールス(営業)はそれぞれ異なる活動であることを明確に意識している人は少ないのではないでしょうか。

堀内氏によると、米国と日本ではマーケティングの考え方が違うそうで、堀内氏が在籍している米国型のトレジャーデータでは、マーケティングとセールスは以下のように明確に分けられているといいます。

・マーケティング:広義で市場を作り上げる活動、そこからリードを獲得していく活動
・セールス(営業):直接顧客にアプローチして購入を促していく活動

マーケターには風呂敷を大きく広げて有望な顧客を惹きつける力が求められ、セールス担当はマーケターから引き継いだ顧客を確実にクロージングしていく力が必要とされます。こうした役割分担は米国ではごく一般的なものとして考えられているそうです。

一方、これまでの多くの日本企業では、セールス担当(いわゆる「営業」)が顧客開拓のキャンペーンを開催したり、展示会での商品アピールなどを行い、そこで知り合い、関係が深まってきた取引相手に対して実際の商談を仕掛けていくといった流れが慣例的で、営業部署の担当者がマーケティングとセールス両方の活動を無意識的に実施することが普通です。

しかし、スタートアップのように新たな市場を必要とするビジネスを立ち上げる場面では、既存顧客がいないためこれまでのような手法は通用しません。新規市場を効率的に開拓するためには、やはりマーケティング活動を分離して専任が担当することが不可欠になってきます。

トレジャーデータは、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)の日本における第一人者的ポジションを担っていますが、それは当初取り組んでいたマーケットに大手の競合が現れたため、マーケットチェンジが必要となったのも大きな要因だそうです。CDPを日本に広げていくために、マーケティング活動でその新たな価値に共感してくれる仲間を広げ、広告やPRなど様々な施策を打ち、展示会出展時のリード獲得に明確なKPIを設定し、怒涛の勢いで顧客を増やしていったそうです。

オタク・チャラ男・政治家を探し出せ!大企業の口説き方

マーケターが獲得したリードをセールス担当に引き渡す際は、セールス担当が「この相手なら売れる」と思えるような見込み顧客を明確にしておくことが重要です。
例えば、展示会やセミナーで名刺交換をしたり、ウェブ広告を通じて資料請求を促すことがありますが、そこで数百〜数千のリードを獲得したとします。マーケターとして風呂敷を広げながらも、その中のキーパーソンだと思われる人物を明確にしておくことは、後々のセールス活動の効率化につながります。

では、その「キーパーソン」とはどうやって見つければいいのでしょうか。
ここで一つのヒントとして挙げられたのが、「オタク・チャラ男・政治家を探し出せ!」です。チャラ男に政治家でピンときた人もいると思いますが、これは早稲田大学 大学院 入山教授の提唱するイノベーションを起こすために必要な人材「チャラ男・チャラ子と根回しオヤジ」の応用版でもありますね。
自社の商品を買ってもらいたいとき、こうしたキーパーソンといかに早く出会い、営業回数をどれだけ少なくできるかがポイントとなりますが、時にこうした開拓には、同じ相手を50回訪ねて口説くなど、泥臭い仕事が必要になる場面もあります。
そうまでしても出会っておきたいキーパーソン…それぞれの役割はこんな感じです。

・オタクの役割
新しい商品を市場に訴求する際、重要なポイントは商品価値をいかに効果的に伝えるかです。しかし、現実は残念ながら多くの人々は新しい情報を学ぶことに積極的ではないため、商品理解の促進には工夫が必要です。
ここで重要なのは「オタク」層を見つけることです。オタク層は商品に対する強い興味を持ち、その価値を深く理解しています。彼らを見つけて味方にすることが、商品の訴求を成功させる鍵となります。

・チャラ男・チャラ子の役割
オタク層は企業内でも重要なプレーヤーですが、彼/彼女らは表舞台に出ることが少ないため、直接の接触は難しい場合が多いです。そこで役立つのが「チャラ男・チャラ子」層です。チャラ男層は異業種交流会やネットワーキングイベントに積極的に参加し、社内外の広いネットワークを持っています。彼らを通じてオタク層と接触することができます。

・政治家の役割
商品を企業に売り込む際には、深い商品理解を示してくれるオタク層と、その企業の窓口として様々な部署につながりを持つチャラ男・チャラ子層に加えて、「政治家」層も必要です。政治家層は必ずしも商品理解に明るくなかったり、社外との交流の場に出て来ないこともありますが、社内稟議を通すことに長けているので、商品導入の最終決定に影響を与えます。理想的には、この三者とうまく連携することで、スムーズに商品の導入を進めることができます。

こうした考えは、早稲田大学 大学院経営管理研究科の入山章栄教授のお話しが参考になります。リンクを貼っておくので、ぜひ一度読んでみてください。

日経ビジネス(2019.9.19)

Harvard Business Review(2024.5.13)

海外展開したい。よし、まずは現地の人材を獲得しよう

海外でビジネスを展開する上で必要な要素が何か、についてもディスカッションが交わされました。結論から言うと、現地出身の優秀なセールスパーソンなどスタッフを獲得することが肝となります。

国・地域を問わず、新しいものを購入するときに大きく影響するのは、誰から、そのサービスをすすめられるか、ですよね。
例えば、いまあなたの目の前に全く知らない外国の方がいて、彼/彼女の国では大変よく売れているというよく分からない商品をすすめてきたとします。初めて見たその商品がいい物なのか、価格の相場は適正なのかも判断がつかないなか、あなたはそれを買いたいと思うでしょうか?

これまで数多のスタートアップの事例を見てきた堀内氏は、実はこれと全く同じ状況が、実際のビジネスの場面でもよく起きているといいます。他国で商品を売りたいと思ったとき、強い味方となるのは現地のコミュニティに深く入っていける優秀な現地のセールスパーソンです。

そういった現地の優秀な人材を採用するためには、自社を推薦してくれそうな有名投資家のネットワークを活用した紹介などが効果的です。セールスパーソンにも様々なタイプがいるので、有形商材/無形商材のどちらが得意かなどいくつかのポイントで見極めは必要ですが、この人が言うならば・・・、という人をまず見つけて、現地採用を軸に一気にセールス活動を進めていくことが大事、といったことなど、マーケティングから営業まで広く、深く議論されました。

今回見えてきた、スタートアップ経営の法則とは?

スタートアップのマーケティング・営業について深くディスカッションした今回のCXO Meeting から見えてきた法則。それは、米国企業のようにマーケターとセールス担当の役割をしっかりと整理し、扱う商材やセールスパーソンのタイプを考慮した組織づくりを進めること。

大企業への営業の際、話し相手が「オタク・チャラ男&チャラ子・政治家」のどれにあたるのかを見極めることができ、自社組織内でもリードをとにかく広げて仲間を見つけることができるマーケターや、実際に案件のクロージングを進めることができるセールス担当など、社内には様々な異なるスキルセットを持った人材がいると思います。そうした人材をうまく使い分けた組織づくりを行うことで、限られたリソースでも、より効果的なマーケティングやセールス活動が進められるのではないでしょうか。

当コミュニティや、CXO Meetingでの各トピックの続きなど、気になる方はぜひこちら(cxomtg@storydesign-h.com)にお問合せください。(運営・執筆 Story Design house)

<おススメの書籍>
今回のお話に出てきたマーケティング活動を進めるにあたり、ペルソナの設定を基に活動される方もいらっしゃるかと思います。そうした場面で非常に参考になる書籍として、以下をご紹介します。ご興味ある方は、ぜひご一読ください。

音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議、2021年)

コミュニティに新メンバーが加わりました!

今回のCXO Meetingより、新たに2社が加わりました!今後も参加メンバーを増やしながら、より広い&深いディスカッションができるような運営を心掛けていきます。

株式会社ワープスペース
ワープスペースは民間で世界で初めて、宇宙と地上を結ぶ光通信ネットワーク「WarpHub InterSat」の実現を目指す、茨城県つくば市のスタートアップ企業です。2024年~2025年には同ネットワークを構成する初号機衛星「霊峰」を打ち上げる予定です。


株式会社エコデシック
利益を上げることが困難な従来の植物工場の常識を覆し、誰もが高品質な野菜を一年中栽培できる環境を作ることを目指し、高品質野菜の栽培技術「Agrofactor(アグロファクター)植物工場」の開発を行う。

<コミュニティスタートアップ 一覧>

<コミュニティアドバイザー >
Carbide Ventures ゼネラル・パートナー 堀内健后氏
日米に拠点を持ちアーリー期のスタートアップへ投資実績のあるVCとして、また、アメリカ発のスタートアップTreasure Dataのマーケティング・ディレクターとして日本のビジネスを立ち上げた実績をもとに、スタートアップへの様々なアドバイスを行う。

<事務局>
Story Design house株式会社
スタートアップのコミュニケーション支援に10年以上の実績を持つコミュニケーションエージェンシー

【お問合せはこちらから】
コミュニティへの参加を希望するスタートアップ、本コミュニティと連携を希望する企業・団体、メディアの方などはこちらからご連絡ください。
Startup CXO Meeting 運営事務局:cxomtg@storydesign-h.com

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