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奇妙な味の短編

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奇妙な味の短編を集めてしまった。
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#短編小説

『誰』

脳が欠陥品と判明したので良品に交換して貰うことにした。
配送も終わったのであとは待つだけ。
これで仕事のミスも、無駄にざわつく不安感もなくなる。薬の量も減らせるかもしれない。
出ていった妻子も戻ってきてくれるかもしれない。
仕事も辞めなくて済むかもしれない。
何もかもに我慢してうつ向いているだけの生活もやめられるかもしれない。

僕は玄関まで椅子を持ってきて座って待つことにした。

それにしても

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『聞こえてますか?』

通りから銃声が一発。
日本でも聞こえるようになったか。
彼らの勝利だ。
祝ってあげる。
僕からも銃声を一発。
自分の頭がよく爆ぜた。
君の頭にも一発。
君の頭はよく爆ぜた。

嘘は良くないよ。
通りから銃声なんて聞こえない。

でもどこかの国で銃声が一発。
今日も誰かの頭はよく爆ぜた。

無言の返事

「ただいま」
母は死んでるのでもう答えない。
「おやすみ」
父も死んでるのでもう答えない。
生きているときから返事はなかった。
両親と入れ違うように喉の手術は成功して声を取り戻した。

やっと発声できるようになったのに無言で答える部屋は死んでいるようだ。

もう一度「ただいま」と私はいう。
もう一度「おやすみ」と私はいう。

いるいない人

 いない人を呼ぶのは不可能なのでいる人を呼んだ。
 いない人が来た。
 いない人はいなかったので「いないからね、僕は」と言った。
「いないですよね、あなたは」
「ええ、いるはずがありません」
「いる人を呼びたいのですが…」
「ええ、いる人を呼んでください」
「いない人がまた来ませんか?」
「いない人がいるんですか?」
「いない人が言うセリフではないです」
「いない人が言うべきセリフとはなんですか?

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静かな安心

バラバラになった夫はもう怖くなかったので夕食を作ってあげることにした。
また失敗して焦がしてしまった。
お前には時間の感覚もないのかと怒られてばかりだった。
殴られてばかりだった。
でも、もうあの手では殴れないよね。
今では浴室で静かにしている。
静かにしている夫のことは今でも好きみたい。

水回川頭鳥咥私

カラカラカラと水車が回って川底で頭を打った。
これで仕事が捗るかもしれないとオフィスでキーボードを打つ。
お客さんが全員戻って来た。
半裸である。
悲しそうだ。
見たことない悲しさだ。
でも川底はとても涼しい。
私に服は必要だ。
ダウンジャケットを重ね着する。
このオフィスはクーラーを効かせ過ぎている。
まるで冬のようだ。
この国は冬を殺したのにそれはおかしい。
お客さんは全員風邪を引いたまま帰っ

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聞こえない声

「おかえり」
妻は返事をしない。
帰宅したらメイクも落とさずソファーに横たわって何時間も動けなくなる。
「早くお風呂に入ってリラックスした方がいいよ」
返事はない。
身動きひとつない。
「食事も栄養バランスをもっと考えなきゃ」
妻はまた涙を流した。
「君なら大丈夫。俺は知ってる」
知ってるとも。

薄まっていく自分の体を見ながら夫はいつもの言葉をつぶやく。

ごめん、君のために死ねなかった。
ただ

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僕らの色彩

僕らの色彩

 気が狂ってしまった友人を弔うことにした。
そのために全員を集めることにした。
みんな大学や仕事先を休んですぐに集まってくれた。
 その友人もたいそう喜んだ。
 その友人は気が狂ってしまっていたので、
「久しぶり」「元気だった?」「会えて嬉しいや」「また遊べるんやね」「あの頃みたいに戻れるかな?」と言っている。
 僕らは答える言葉を持っていなかったのでそそくさと土を掘った。

 その友人は深い穴の

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必ず当たる先生の数字

「さっきあの先生に8と言われたんだけどなんだったんだろ?」
「言われたんだ?」
「うん。あの先生時々数字だけ口にするのなんなんだろね」
「知らなかったの?」
「なに?」
「受験が成功する生徒の数よ。先月は9だったわ」
「私…」
「必ず当たるから怖いのよね」

教えなくてよかった

昨日の夜電話くれた?

深夜に知らない番号からメッセージ入っていたからさ。

あまりに小さくぼそぼそ言ってたんで聞き取れなくて、もしかしたらそうかなと思ったけど。

えっ、前から掛け続けていたの?

五年も前からずっと?

手当たり次第にずっと?

080から090から続く番号をずっと?

へぇ、君らしいね。


#眠れない夜に