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#564 「なぜ言わなかったんだ」という言葉を発する時点で管理職失格。
「なぜ言わなかったんだ」… 部下にとって上司に言われて虚しい思いをする言葉。それって、そもそもさぁ、と思ったので、メモ。
1、なぜ心理的安全性が重要なのか?
「なぜ言わなかったんだ」「なぜこうなった」「俺は聞いてない」などの言葉を上司から言われた、という話をいまだに聞くことがあります。
答えは、「言おうと思ったら強い口調で否定されたから」「以前言ったら怒ったから言い出しにくかった」「言いましたよ」とかあたりが考えられますが、言えるものではありません。そもそも、この質問を発する時点で管理職失格だと考えています。
その理由の1つは、問題が起こってしまっていること、です。そもそも管理職の役割として与えられた業務を期日通り予算通りに完了させることでしょう。そのために業務プロセスや役割分担を整理するのですから、問題が起こってしまった、ということは、それがうまく行っていなかった、ということで、管理職の責任です。
もう1つは、そういった問題につながりそうな情報が、事前に管理職の耳に入ってきてない、ということです。
心理的安全性、という言葉が定着して、自由に意見を言えることの重要性は誰しもが(知識としては)わかっている状況です。
通常は、多様な意見を取り入れることができ、生産性が上がるから、という前向きなメリットを心理的安全性が必要な理由に挙げることが多いのですが、個人的にはリスクマネジメとの観点でも重要と捉えています。
要するに、うまく業務プロセスが構築できていないことに加えて、問題となる前にチームメンバーが「何かおかしい」と気づいた時点で空振りかもしれないけど声が上げられる、つまりおかしなこと、不確かなことを報告しても、受け止めてもらえる、という雰囲気を醸成できていない、逆に言えば、こんなことを報告したら、まともに取り合ってもらえない、あるいは非難される、というような気持ちをメンバーが持っている、ということです。
この状態は「心理的安全性」がない状態、です。
このようにリスクマネジメント上も心理的安全性は重要なのです。
2、なぜ心理的安全性は失われるのか?
ではなぜ心理的安全性が失われるのでしょうか?皆がその重要性を認識しているのに。
今一度、心理的安全性の定義を見てみましょう。
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness#introduction
読むと、ふむふむ、というところでしょう。
ではなぜみんな知っているのにできないのでしょうか?
当然ですが、この環境を作るのは管理職です。チームメンバーにどうやって感じてもらうのか。
よくみられるのが、「私は心理的安全性を重視します。何でも言って来てください」というものです。
そもそもなのですが、何でも言ってきて、と言って来るようなら、その前に来ているはずです。こう言ったことを改めて言わなければならない、ということ自体、その環境づくりができていない証拠だと思います。
こうした管理職は、何か問題が起こった時に「なぜ言わなかったんだ」という管理職でしょう。
では、なぜ、こうしたことが起こるのでしょうか?
それは、管理職の常日頃の振る舞い、です。
管理職は役割とはいえ、決裁権や人事権、評価権などの「権力」を持っています。部下としては従うしかないです。
その「権力」を持っている人間が発する言葉ですから、本来はよくよく注意しなければなりません。なのに、自分が管理職になるとそうしたことを忘れてしまう管理職がどうしてこうも多いのでしょうか?
常日頃の振る舞い、というのは具体的には例えば、相談に来た際に、顔もあげずに生返事をする、今忙しいから後でを繰り返す、またはその後に自分から確認しない、会議での態度が高圧的(に取られる)、などなど、です。
となると、コンタクトするのは必須の場合のみで、なるべく関わらないようにしよう、となってしまう。そのために「なぜ言わなかったんだ」となる、ということです。
3、まとめ
いかがでしたでしょうか?
心理的安全性はリスクマネジメントにも必要で、その心理的安全性がある環境を作るのは管理職の責任であるが、「権力」を持つことに無自覚な振る舞いをしていると、結果的に心理的安全性が脅かされる、というお話でした。
すなわち「なぜ言わなかったんだ」という発言をする時点で管理職失格だ、ということでした。
本当に立場変わると、その立場が持つ権力に無自覚な人が多く(あるいは自覚して自分の力と勘違いする?)、大丈夫かなぁ、と思うことがよくあります。
とはいえ、人のことはよく見れるものですが、自分のこととなると意外なほどよく見えないものです。ザ中間管理職として、自戒もこめたメモでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
いつも通り当たり前の内容で恐縮ですが、どこか参考になったところがあれば嬉しいです。