#329「ビジネス頭の体操」 6月9日、10日のケーススタディ
はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。
→部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。
6月9日(水) 鍵を破らないで入る泥棒が多い!?
東京都千代田区神田神保町に事務局を置き、防犯の要である錠の取り扱い業者の団体である日本ロックセキュリティ協同組合(JL)が2001年(平成13年)に制定した錠の「ロックの日」です。
日付は「ロック(69)」の語呂あわせ。
ロック、鍵。
まず鍵の業界について調べてみました。
が、残念ながらきちんと裏付けのとれるデータが見つけられず…
複数の資料からほぼ確からしい事業者として、圧倒的1位はシェア6割を握る美和ロック株式会社です。
☑️ 創業:1945(昭和20)年
☑️ 資本金:6.1億円
☑️ 従業員:1,441人
(2020年4月1日現在、同社HP)。
たしかに自宅の鍵を見てみたら「MIWA」と書かれています。
同社の決算公告を見ると、2020年3月期で、
☑️ 売上高:504億円(前期比5.2%増)
☑️ 経常利益:86億円(同10.01%増)
☑️ 総資産:808億円(同6.91%増)
となっています。
優良企業です。しかも昨年度、売上高、利益とも伸ばしています。さらに特筆すべきは資本金6.1億円に対して利益剰余金が587億円あり、純資産が598億円あります。
その秘密を知りたい、と思ったのですが、これ以上情報なく…(こればっかりですね…すいません)
他には、株式会社ゴールという、1914年創業の老舗メーカーがシェア3割を持つとのことで、美和ロックと合わせるとほぼシェア9割、という寡占市場であることが分かります。
ちなみに、ゴールの概要は以下の通りです。
☑️ 資本金:3億円
☑️ 従業員:439人
☑️ 売上高:82億円
(2020年度、同社HP)
シェアと売上高の計算が合いませんが、美和ロックは、海外展開もしており海外での売上高が入っていることが理由のようです。
さて、業界を概観したところで、そもそも鍵が必要とされる背景である、侵入窃盗、つまり泥棒、の現状について調べてみました。
警察庁「住まいる防犯110番」によると、侵入窃盗の認知件数は下図の通り減少傾向にあります。青が全体、赤が住宅対象侵入窃盗です。赤は平成15年に19万件程度でピークでしたが令和元年には約2.9万件と17年連続で減少しています。とはいえ1日あたりでは約79件発生しており引き続き注意が必要です。
次に発生場所ですが、最も多いのは一戸建住宅で43.9%となっています。次に共同住宅で14.8%ですが、うち10.7%は3階以下となっています(下図)。
侵入手口ですが、実は最も多いのは、「無締り」、つまり、鍵がかかってない窓などから侵入されているのです。そりゃ、いくら高性能の鍵をつけてもダメ、ですね…(下図)
最後に鍵の世界の最新動向ですが、スマートロックという市場が立ち上がっています。
簡単にいうと、スマホやIDカードなどで認証して解錠する鍵、なのですが、従来からホテルなどでは存在していたと思います。
何が違うか、というと、例えばオフィスの鍵では、スマホやIDカードに紐づけられた入退出の記録を出退勤のシステムに自動連携し、自動で勤怠管理をしたり、時間外には開かなくしたり、ということができる仕組みです。
大規模な鍵の付け替え工事も不要で、今あるサムターン錠に取り付けるだけで利用できるものもあったり、初期料金なしで勤怠管理ソフトの利用とセットでサブスク的に利用できるものも登場しています。
以下にあるサービスを紹介しているHPをご紹介させていただきます。
→鍵。今後は鍵も外出先からかけ忘れを確認できるようになるようだ。一方で、鍵がネットにつながることでセキュリティも心配になる。この辺りを解消して「鍵を持つ」という人々の習慣を変えるにはどのようなマーケティングが有効だろうか?
6月10日(木) 路面電車は「団子の串」!?
1995年(平成7年)のこの日に、全国の路面電車を持つ自治体が広島市で開催した「第2回路面電車サミット」で制定した「路面電車の日」です。
日付は「ろ(6)でん(10)」(路電)と読む語呂合わせから。
路面電車。
大正から昭和初期にかけて大都市を中心に大活躍した路面電車。高度成長期に自動車の普及が進むと渋滞の原因として1970年代に廃止されることが多くなりました。
東京の例で恐縮ですが、最盛期の路線図がこちら(出典:Tram Walker)。
何がなんだかわからないぐらいびっしりと路線が広がっていたことが分かります。
国土交通省の「日本の路面電車の現状」によると、
昭和初期には
☑️ 路線長:1,479km
☑️ 都市数:65都市
☑️ 事業者数:82事業者
もの隆盛を誇った路面電車は、
平成25年には
☑️ 路線長:205km
☑️ 都市数:17都市
☑️ 事業者数:20事業者
にまで減少しています(下図)。
とはいえ、思ったより残っているんですね。どこ?という方のために平成25年時点ではありますが同資料からこちらをご紹介します。
このまま衰退していくかに思えた路面電車ですが、時代とともに見直しの動きがあり、平成18年には富山に日本初のLRTが新規に開業しました。現在では、東京や宇都宮などでも導入が検討されています。
LRTとは、Light Rail Transitの略で、低床式車両(LRV)の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システムのことです。近年、道路交通を補完し、人と環境にやさしい公共交通として再評価されています。
既存の公共交通には様々な種類があります。国土交通省「LRT導入の背景と必要性」にマッピングがありましたのでご紹介します。
つまり、地下鉄、新交通システムは、輸送力、速度ともに大きく、一方で、路線バス、路面電車になるとかなり小さくなり、ギャップが存在する、そこにLRTが当てはまる、ということです。
路面電車とLRTの違いですが、路面電車は1両で運行するのに対し、LRTは複数の車両を連結して運行ができ輸送力が路面電車より大きいことが違いとなります。
<路面電車>
<LRT>
こうしたLRTの特徴を生かし、コンパクトなまちづくりを目指した富山ライトレールについての事例が興味深かったのでご紹介します。
まず、課題として、市街地の低密度化が挙げられています。
(出典:経済産業省「ライトレール導入によるコンパクトなまちづくり」)
要するに、戸建志向が強い結果、地価の安い郊外へと市街地が広がった結果、低密度な市街地が広がった、ということです。
そのため以下のような課題を抱えることになりました。
☑️ 車を自由に使えない市民にとって極めて生活しづらい街
☑️ 割高な都市管理の行政コスト
☑️ 中心市街地の空洞化により都市全体の活力低下と魅力の喪失
→今後の人口の減少によりより悪化していく可能性が高い
その解決策として、従来言われている、中心部一箇所へ集中させるコンパクトシティではなく、「お団子と串」の都市構造を打ち出しました。
「串」がLRTというわけです。
結果、交通弱者であった車の運転できない高齢者の移動が活発化、加えてLRTの駅を中心とした「団子」内に人が集まって住むようになったことがデータで分かっています(下図)。
この富山の成功を受けて、各地で計画が持ち上がっていますが、2022年開業予定なのが、芳賀・宇都宮LRTです(下図)。
また、CO2削減でも自動車やバスからLRTへとシフトが起これば効果がある点も注目されています。
→人口密度が下がることで行政サービスなどの提供コストが上がる、医療などへのアクセスが悪くなるなどが課題とされてきたが、一方でコロナ禍は密を避けた街づくりを求めるところもある。今後、街づくりはどのようになっていくだろうか?
最後までお読みいただきありがとうございます。
皆様にとって1つでも頭の体操ネタになるものがあれば嬉しいです。
昨年7月からこのような投稿をしてきました。だいぶ溜まっています。以下のマガジンにまとめてありますのでよろしければ、チラ見してみてください。