#113 複雑になっているのはビジネスか?社内ルールか?
VUCAな時代。対応すべきマーケットは多様にかつ複雑になっています。そんな中でビジネスをマネジメントすることは大変なことです。
ここでありがちな対応を行うと、実は、スピードが落ち、競争から脱落していくことにもつながっているのでは?というメモ。
1、複雑さを増すビジネス環境
相手をすべきマーケットはより複雑になっています。
そうしたマーケットごとに対応した商品を投入するととで商品ラインアップも膨らみます。
加えて、1つの製品、1つのビジネスモデルの賞味期限はどんどん短期化しています。
それだけではなく、多くのマーケットを相手に、多くの商品を投入していますので、時には同じ企業内で矛盾を抱えることもあります。
例えば、大規模な小売りチェーンとの取引が成立し、そのチャネルは売り上げが伸びたが、従来のチャネルからの売り上げが落ち込む、といった矛盾です。
さらには、技術の進歩や規制の緩和などで、異業種であった業界が突然強力なライバルとして競合相手になったり、ということも起こります。
そこに起こる不連続で大きな変化…
日々実感されている通り、ビジネスの環境は日々複雑さを増しています。
2、複雑なビジネス環境に対応するために社内も複雑化?
これらにより、管理すべき数値や目標はどんどん増えます。
結果を求められるまでの期間も短期化が進みます。
経営陣は素早い現場の報告を望みますので、報告すべき量も頻度もどんどん増えます。
現場は次々に投入される商品を捌くためにプレッシャーがかかる一方で、様々な報告を求められます。
また、経営陣はこうした変化の時代に対応するために、「OODAループ」だとか、「アジャイル」だとか、流行りとも言える手法を採用しこれまた現場に落とし、その手法を定着させるため、社内ルールも整備をします。
さらに、権限を現場に委譲しよう、ということになり、それ自体はいいものの、すべてを移譲するのではなく、金額などで切って移譲しますので、ただでさえ複雑な決裁プロセスは重くなります。
こうした状況を改善するために、各部門を横断的に見て、情報を円滑にやり取りするための部署ができたりする場合もありますが、単に報告レイヤーが増えるだけの結果になる場合も多くなります。
こうして、外部環境が複雑化するのに対応しようとして、
☑️ 報告の量、頻度が増える
☑️ 新たな手法が導入される
☑️ 社内ルールが増える
☑️ 決裁権限が複雑化する
☑️ 組織レイヤーが増える
というように、外部環境以上に社内の「お作法」が複雑化します。
3、その結果…
ご想像の通り、「お作法」で時間がとられ、ルールが整備されたことで官僚化が進み、もともと狙っていた「迅速な意思決定&対応」からは正反対の結果となってしまいます。
結果、外部の変化に対応できず、競争から脱落していくのです…
4、まとめ
複雑化する外部環境に対応しようとした結果、それ以上に社内が複雑化してしまった、という事例をご紹介しました。
この事例は、私が業務改善という仕事を通じて事例を集めた企業で起こっていたことです。
こういったことがなぜ起こるのか?
多くの経営陣は環境の変化を認識し、危機感を持ち、「何か手を打たなくては」という気持ちが強いのですが、実は、それが原因なのです。
「何か手を打つ」ということは「今やっていることに加えて何かをする」ということです。単純に業務がプラスになるのです。
それならまだいいのですが、従来やっていることと矛盾や無駄が生じる場合もあります。
その結果、何が起こるかというと、現場の疲弊、か、新ルールの放置、のどちらかです。
つまり、どちらもうまく機能しないのです。
となると、さらに新しいルールや制度を、ということになり、どんどんと複雑になっていく、という負のループになってしまいます。
では、どうすれば良いのか?
まず、ルールや制度を整備すれば従業員がその通り動く、という発想にそもそも無理があることに気づくことが重要です。
なぜなら、組織や従業員の行動の「今」には、膨大なエネルギーと時間を費やして今の形になっているのです。加えて強い慣性の力が働いています。ルールや制度の変更で簡単に変えることはできないからです。
だから、新たに策を考える前に、現状をよく観察することです。
もしかしたら止められるものがあるかもしれません。
もしかしたらほんのちょっと変えるだけでいいかもしれません。
新しいことをやろう、ルールを変えよう、という時には、よくよく今を観察することが大事、ということなのです。
最後までお読みいただきありがとうございました。