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#143 「ジョブ型雇用」とネットフィリックスの「ノールールズ&脱ルール経営」

もう、新聞を紙で読んでいる人は少ないのかも知れませんが、私は好きです。
今日、日経新聞を眺めていたら(そういう読み方です)、日経の皮肉かしら、という記事の並びがあったのでメモ。


1、まず27面。「ジョブ型雇用と日本社会」

「ジョブ型雇用」。流行り言葉です。昨日勉強した通り、流行り言葉になると要注意、です。

恥ずかしながら、「ジョブ型雇用」漠然としたイメージはあるもの、きちんとした定義って知りませんでした。

この記事は、一橋大学神林教授がその定義から解説をされている内容でした。

(こういう、そもそも、定義もの、好きです)

私が興味を持った部分をご紹介すると、

「ジョブ型雇用」というのは、もともと、労働政策研究所・研修機構の濱口労働政策研究所長が日本的雇用慣行を「メンバーシップ型雇用」と呼び、その背反として定義されたもの。つまり、日本的雇用慣行ではないものをすべて含んでおり、論者により意味が異なる。

と、のっけから(私にとって)核心をつく、「使っている人で意味違うよね?」と指摘してくれています。そして、

まず、Jobを「職務、業務」と直訳すれば、「職能給」と解釈するのが適当。
だが、職務遂行の有無のみが問われ、同じ職務を遂行する限り能力を評価する契機に乏しいなどの欠点が明らかになり、20世紀半ば以降衰退した。

と、直訳である「職能給」も切って捨て、次に、

有力な候補として、「職務記述書」を活用しつつ成果給を取り入れる人事管理政策遠いう解釈ができ、職務内容をあらかじめ限定的に列挙して労働契約の内容とするものが「ジョブ型雇用」とするのが妥当。

としていますが、そのデメリット(運用の難しさ)として、

労働契約は一度締結すると変更が難しい。職務記述書に書き込まれていない職務が新たに発生し、現場にいる被用者に担当してもらおうとしても、職務記述書を改定しない限り命令できない。そしてその改定には使用者と被用者の双方の合意が必要。使用者の一方的の変更が可能な現行の就業規則とは異なる。

とその問題を指摘しています。

ここは、私も、「新しい仕事が発生したらどうするんだろう?簡単に追加できるのなら今と何が違うんだろう?」と疑問に思っていましたので、やっぱり、というところです。

この後も、

☑️ 成果給と併用する場合、外部環境や会社の施策などの影響で左右される要因の方が大きい場合、やる気をなくす可能性があるので「職務記述書」の内容をそういった被用者以外の要因を排除する書きぶりにする必要があること
☑️ 近いものとして、現在の派遣労働者が近いことから、どれくらい職務内容が変更されるか、成果給と併用されているかを調べ、実際は「職務記述書」と「成果給」の併用は難しいのでは

ということまで述べられています。

もちろん、この神林教授お一人の分析ですので、これが全て正しい訳ではないと思いますが、単に「ジョブ型雇用」が「ジョブディスクリプション(職務記述書)」で職務内容が明確に定義されたもの、と理解するより、遥かに視点と問題点が整理されます。


2、次に、30面。「アイディア、命令より刺激で」

これは記事というより、日経フォーラム世界経営者会議の内容をまとめたもので、3面に渡って、HISの沢田会長や、ニトリの似鳥会長などがフォーラムで講演された内容がまとめられているものです。

ネットフィリックスのリード・ヘイスティングスCEOがお話しされた内容を紹介したものもあり、その見出しが「アイディア、命令より刺激で」というものです。

その中に以下のような記述があります。

ネットフィリックスでは、「ノールールズ(規則なし)」を掲げ、「脱ルール経営」を進めている。優秀な人材に命令系統は必要なく、文化や価値観で管理できる。誰もが自分で意思決定をし、変化を起こしたいものだ。創造性が求められる組織では、命令より刺激を与える方がアイディアが生まれやすい。

いかがでしょう?

先ほどご紹介した27面の記事の次が広告を挟んでこの内容なのです。

思わず、最近の「なんでもジョブ型雇用」への日経新聞の皮肉かと思いました。

「職務記述書」で仕事をかっちり決めましょう、という話に、真っ向から対立する「ノールールズ&脱ルール経営」をぶつけているのですから。


3、まとめ

「ジョブ型雇用」。

昨日投稿した以下の記事中の「飛び道具トラップ」な気がしてなりません。

なぜなら、以下のような問題点があるからです。

☑️ 実際に人事制度として設計するの、思うほど簡単ではない
☑️ VUCAな時代に果たして職務を固定してしまうこの制度が合っているのか
☑️ 或いは、VUCAに対応するような「職務記述書」が書けるのか

加えて、この言葉が出てきたタイミングはテレワークへの移行期だったと記憶しています。その理由が、

☑️ 仕事をしているかどうか分からない
☑️ 仕事が明確でないのでテレワークが難しい
☑️ 仕事のアウトプットだけで評価されることになるが、そもそもの仕事が定義されていない

「今まででも、それって…」というものばかりです。

これは、正直、マネージャーが管理できてなかったという、運用の要因も大きいように思います。

それを制度で解こう、というところに「飛び道具トラップ」臭がプンプンしてしまうのです。

しかも、日本が「ジョブ型だ!」なんて騒いでいる、海の向こう側では、一周回って、「ノールールズ&脱ルール経営」なのです。
(これも、「遠近歪曲トラップ」かもしれませんが…)


こういう、私の「分かったつもり」を諌めてくれたり、記事を跨いだ気づきがあるので、新聞、紙で眺めるの、楽しいです。


最後までお読みいただきありがとうございました。

独断と偏見たっぷりの内容ですが、何かお役に立つことがあれば嬉しいです。


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