2022 年間作品より 悠凜さん選
今年noteに発表した俳句作品の中から
「今月の特句」
「今週の一句」
を、毎月選んでいただいていました
1句ずつにコメントもいただいています
1年をふりかえりながら
楽しんでいただければ幸いです
2022年
1月
〖今月の特句〗
ウイスキーこおりからんと年惜む
ウィスキーのロック、と言うと、バーのカウンターや静かな居間で一人静かに飲むイメージです。そのために氷の音も際立ち、またノスタルジックな気分にもなる気がします。
日本の年末年始と言うとウィスキーのイメージではないこともあるでしょうが、静かで寒い夜に響く氷の音は、回顧を促すように思えました。
〖余談〗
特句ではありませんが、厳寒の北欧では、冬ほどカフェテラスでお茶をする人が多いとのこと。寒さに強いと言うことだけではなく、日照時間の短い地域ならでは。少しでも陽に当たるために、わざわざ外でお茶をするのだそうです(笑)。
〖今週の一句〗
いちねんのすべてが今に除夜の鐘
あいさつのいち語いち語が花の春
早梅よ二階のまどのきょうあした
部屋猫にまどあかるいぞふゆの月
カフェテラスひとりふたりか春隣
2月
〖今月の特句〗
むかしからむかしのままか春の月
先日の帰り道、朧にも似たぼんやり月を見ました。春の雨が近かったのでしょう。
現代なら、昔と今の月の変化もきっとわかるのでしょうけれど、肉眼で見上げた人の目には、きっとそれほど変わらぬ姿を見せてくれているはず。
違うとすれば、それは見る側の心持ちの違い、なのでしょうね。
〖今週の一句〗
雪の夜よろくろのおとと土のおと
ペルシャ猫ふわりと立上がる恋か
むかしからむかしのままか春の月
たんぽぽ吹く表も裏もある路地で
3月
〖今月の特句〗
はじけてはいまを昔にしゃぼん玉
光をうけてキラキラ光るシャボン玉の中には、夢や希望がつまっているように思えます。
はじけて欲しくない気持ちがある反面、シャボン玉を見ている子どもの目がキラキラしているのは、はじけた時に何かが飛び出す期待があるからなのかも知れません。
大人になった今でも、フワフワと飛ぶシャボン玉に記憶や思い出がつまっているように思えます。
余談ですが、母が新潟にいた昔は桜と言えば真っ白な山桜で、山一面が緑の混じった白に染まったそうです。
〖今週の一句〗
はるの鐘ときにへいわの鐘となれ
はじけてはいまを昔にしゃぼん玉
さす傘につもりつもらずぼたん雪
山ざくらあおぎ見て空あおぎ見て
4月
〖今月の特句〗
こえのかずだけのあしたよ卒業歌
昨今、侵略の話を聞くにつれ、新しい世界=明日に向かって発つ希望と、その全員が無事に歩いて行って欲しいと言う願いがこめられているように特に感じました。
理不尽に芽が摘み取られることがないよう、祈るばかりです。
〖今週の一句〗
ぼろぼろの戦地にふるかはるの雪
こえのかずだけのあしたよ卒業歌
村人は居ないかに居てあたたかよ
明日あると思うばかりよ双葉萌え
春の靴行くあてもなくあるきだす
5月
〖今月の特句〗
ふうりんよ時代じだいの風のおと
気候の変化などで風の質もかわっているかもしれません。
材質や製造技術で風鈴の音も変わっているかも知れません。
でもきっと、時代よりも何よりも、その時、その人の心持ちで風の音も風鈴の音も違って聞こえるのでしょう。
〖今週の一句〗
あおぐたび影きらめかす夏つばめ
うしろ手をつけば富士見え風薫る
みずくさもゆらりゆらりと金魚鉢
ふうりんよ時代じだいの風のおと
6月
〖今月の特句〗
すぎた日が呼んでいるかに風鈴よ
一年中鳴らしっぱなしでうるさいお宅もあったりするのですが(苦笑)
本来、夏の暑さを和らげる、夏ならではの音の趣きだと思います。
時季物として、この音を聴くと甦る思い出の存在を想起させ、ふと過去にいざなわれる瞬間をも思い起こさせてくれます。
〖今週の一句〗
星空のまっただなかのベランダよ
すぎた日が呼んでいるかに風鈴よ
一本のくきからはらり花しょうぶ
どっしりといのちいだいて金魚鉢
7月
〖今月の特句〗
おおぞらのざわめくことよ木下闇
暑さが厳しい日が続くと、木陰の涼にほっとしますが、同時に思わぬ暗さに驚くこともあります。
木を境にして、明るい空と木陰(=闇)の間に隔絶した世界を感じるのは、人の心にも同じようなところがあるからなのかも知れないと思ったりします。
〖今週の一句〗
青りんごかりりと雨後の鬱晴らす
花言葉ありありと秘め薔薇ひらく
おおぞらのざわめくことよ木下闇
そのおとも諸行無常のふうりんよ
あめんぼがひろげる波紋数知れず
8月
〖今月の特句〗
せんこうの火のちいささよ盆支度
8月と言えば、私にとってはお盆でした。
母方のお盆は迎え火を焚く訳ではなく、むしろお墓に迎えに行き、提灯で導いて来る感じでしたが。
そして父方の墓参りでは、強風で線香が聖火リレーのようにボウボウに燃え盛ることもあり、思い描くイメージとかけ離れていたりするのもなかなかの味わいです(笑)
それと、今回選句には入っていませんが、スイカ割りにも思い出があります。
中学生の時の臨海学校でスイカ割りの代表に選ばれたことがあります。割れた班はそのスイカを食べていいルールでしたが、食べるのにちょうど良い塩梅で割れたのは私だけでした。(自慢)そもそもスイカに到達出来なかった人、もしくは男子は力加減が強過ぎて木っ端微塵でした(笑)
我らは後ほどスタッフ(班員)で美味しく戴きました(笑)
〖今週の一句〗
待つひとよ泡つぎつぎとソーダ水
朝顔よ明けたばかりのそらのいろ
はばたいてひかりふりまく秋蝶よ
かがみ見て自分じしんが秋だった
9月
〖今月の特句〗
一馬身ぬけだす騎手よあきのかぜ
どんな季節であっても、最後の直線で集団から抜け出す馬の加速感は同じですが、秋は季節感が見えるような風の爽快感を感じさせてくれるように思いました。
〖今週の一句〗
大いちりんひらいてからよ遠花火
変わらずに撞くとうとさよ鐘の秋
一馬身ぬけだす騎手よあきのかぜ
かおあげて信号待ちよきょうの月
10月
〖今月の特句〗
神かくしありそうな坂ひぐらしよ
黄昏時のあの不思議なまでのあやしい雰囲気は、本当に何なんだろうと思うほどです。不意に取り憑かれたように、魔が差したように、何かが起きても不思議ではない情景が浮かびました。
〖今週の一句〗
神かくしありそうな坂ひぐらしよ
かきまぜて秋深まるかコーヒー店
日がさして天も地も黄よ銀杏散る
とおく見て雲また風のすすきはら
ピーナッツ奥歯で噛んでバーの夜
11月
〖今月の特句〗
立つけむりゆうぞらになれ落葉焚
昨今は焚き火も出来ない世の中になっていますが、子どもの頃に祖父と庭で落ち葉を焚き、時には芋を焼いたりした記憶が甦ります。
我が家ではその際に、父が溶接して作ったストーブのような鉄の鉢のようなものを使い、灰が飛んだり広がったりしないようにしていたことなども。
〖今週の一句〗
さまざまのあかをつくして紅葉山
服を干すにおいともども小春日よ
おそるべき未知ひろがって冬銀河
鉄道員ひとりひとりに降るゆきよ
12月
〖今月の特句〗
えださきに木々は寒星かがやかす
枝だけになった冬の木立の隙間から、澄んだ空に見事な星空を見る光景が浮かびます。
そんな光景に出会ったら、まるで光を帯びた花のようなのだろうと、きっと寒さを忘れて見入ってしまうに違いありません。
〖今週の一句〗
地きゅうごとつづける旅よ冬銀河
いたはずのとんびが消えて空は雪
屋根屋根に一列ずつよふゆすずめ
引越しの部屋にのこして古ごよみ
悠凛さん
今年も選句ありがとうございました
今年も1年間
多作多捨で
句を詠んで投稿をしてきました
今年は下半期に
詠み疲れが出た
1年になってしまったようにも思います
また気持ちをきりかえて、
来年からも投稿を続けていければと思います
いつも
ご覧いただき
ありがとうございます
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?