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【読書メモ】あのころはフリードリヒがいた(ハンス・ペーター・リヒター)【#101】
主人公はドイツ人の「ぼく」です。同じアパートに住む善良なユダヤ人一家、シュナイダーさんのところのフリードリッヒとの思い出が描かれています。4歳で出会った二人は、仲の良い友達なのですが・・・
時代はナチス政権化のドイツです。1925年に「ぼく」が生まれて、平和で素朴な描写で物語は始まります。第一次世界大戦が終わった後なのでドイツが貧しい時代ですが、僕とフリードリッヒは健全に大きくなっていきます。そして、1933年にヒトラーがドイツ帝国首相になってから、急速に世間の空気が変わっていきます。
シュタイナーさんに対する世間の風当たりの強さが、少しずつ狂気になっていくところは、現代でも起こりえることだと簡単に想像できます。まるで新型コロナウイルスが出始めたころのマスク警察や、田舎で起きたいやがらせのようなことがイメージされました。人は同じようなことを繰り返しているんですね。
児童文学というよりは、大人が読むべき本だと思います。平易な言葉で書かれていますが、それがシンプルな怖さを強調しているように感じました。読み終わった後はしばらく呆然としてしまいました。脱力と言ってもいいです。何もする気が起きなくなるというのはこういうことなのでしょう。
しばらくしてもう一度読み返してみたい本です。
続編もあるようなので、そちらも読んでみたいです。
おわり
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