AIに負けない!「読解力」を身に付けるには③-学校・教師編-
これらの記事の続きになります。こちらを読んでいない方は、ぜひ先に読んでいただけると今回の記事がわかりやすくなると思います。
読解力はいかにして身に付けるのか -学校・教師編-
小学校高学年を担任する経験があれば、多くの子どもたちが自分の読解力の乏しさに苦しみ、多くの保護者が子どもの読解力を何とか向上させたいと願っていることをご存じのはず。懇談会でも子どもの読解力についてなにかと話題としてあがります。
そういった子どもたちが読解力を身に付けられるように、学校教育で気をつけるべきことは何でしょうか?
今回も「AIに負けない子どもを育てる」(著 新井紀子)から、学校・教師にできることについて紹介をしていきます。
➣国語以外の教科でも読解力を伸ばす
本書の中で著者の新井さんは、
教科書が読めるようになる教育を小中学校できちんとやっていない。
と、指摘しています。この場合の「読めるようになる」というのは、ただ字面を追うことではなく、「意味を理解して読み取ることができること」を指します。
耳が痛いですが、これは事実でしょう。何しろ「教科書を読めば分かる」という前提で授業に臨んでいる教員が多くいるからです。国語の授業では、基本的な文法の仕組みや、長文の読み取りを扱う内容が組み込まれており、教えることは教えているはずです。
しかし、教えてもなかなか身に付かないのが「読解力」。そして非常に教えにくいというのが、自分の経験から思うところです。読解力は「教える」より「自分で身に付けにいく」スタイルでないと、なかなか身に付かないように感じています。一斉授業で、習熟率を最も把握しにくい分野の1つ。まさに伝統的な学校が苦手とする分野ではないでしょうか。
筆者は「理科や社会の教科書を音読する」ことが効果的であると述べています。また算数においても、「~とは・・・である。」といった定義をおさえるところは、意味を理解し説明できるようになるまで、何度も繰り返し読むことを勧めています。
ここから分かるように、まずは「読解力=国語の力」という潜在的な概念を捨て、教科横断的に取り組むべき課題であるという認識をもつ必要があると思います。
➣自分の力でノートにまとめること
筆者はこの読解力を向上させる有効な手段として、「自分の力でノートにまとめること」をあげています。授業の中で自分が「大事だ」と思ったところを見やすいように考えてノートに書くことは、非常に頭を使います。それに、要点をまとめる力は読解力に大いに生きてきます。
筆者は「小学校6年生までにリアルタイムで板書をノートを写せる子にするべき」と主張しています。
しかし、ここには弊害があります。それは「アクティブラーニング」です。
アクティブラーニングを実践するには、それなりに多くの授業時間を必要とします。そこで授業時間を確保するために活躍しているのが「穴抜けプリント」です。基礎知識をたくさん詰め込んだ穴抜けプリントを配り、一気に学ぶ。すると子どもたちはノートを取らなくて済んでしまいます。さらには、そのプリントを使ってテスト対策までやってしまう。そうなると、読解力が身に付かないまま進んでいくことになります。まさに暗記型の学習に陥ってしまいますよね。
そもそもアクティブラーニングは、自分で書物やインターネット記事を読んで調べ、情報を得る活動もたくさんあるので、教科書がきちんと読めるくらいの読解力がないと難しいところもあります。資料の中から自分に必要な情報だけを拾ったり、資料に対して自分の考えを述べたりするのも、全て読解力に関わってきます。
また、1人1台のタブレットが配布されます。嬉しいニュースですが、「読解力」という点においては心配な点ではないでしょうか。ますます教科書を読まなくなるような気配がしています。
よく「デジタルとアナログ論争」みたいなものが勃発しますが、タブレットはあくまでも便利なツールであり、教科書やノートにはアナログの良さがあることを忘れてはならないということでしょう。どちらの良さも生かしながら、ねらいをもって効果を見込めるものを適宜見極めて使っていくことが大切になります。
➣答え合わせの仕方を日常的に指導する
中学年ぐらいから教科書やプリント、テストなどあらゆる課題の中に、記述式で回答する設問が増えていきます。子どもたちがつまずきやすく、苦手意識をもちやすい課題です。中には、この手の問題は最初から諦めてしまい、何も書かない子もいます。
なぜ苦手だと思ってしまうのでしょうか。
それは、自分が書いた答えが、合っているのかまちがっているのかが分かりにくいからではないでしょか。中には一言一句合っていないとマルではないと思う子もいます。説明の問題は、もちろん答えと一言一句合う必要はありませんよね。答えと意味が同じであればマルになります。
しかし、今までの学校生活において、1つの答えを追い求める経験ばかり積んできた子どもたちにとっては、いくつかの答え方がある場合に納得できないことがあります。また、同じ意味かどうかを模範解答と照らし合わせることは、頭を使うので面倒くさいです。
そういった理由から、この手の問題から逃げてしまう傾向にあるように思います。しかし、「説明する」ということは読解力を向上させるうえで非常に重要です。
ですからまず、記述式の問題にきちんと向き合い頭を使ってチャレンジしている子をしっかりと認めてあげたいですよね。そして、その記述が合っているのかまちがっているのかをきちんと確認する力を身に付けていきます。自分一人では判断できない子が多いので、ペア・グループ学習で友達に聞いてもよいでしょう。その際、なぜ合っているのか、なぜまちがっているのかを伝え合うことを大切にしていきます。
2つの文章が同じ意味かどうかを自分で判断する力なしでは、自学自習は成立しません。さらには、自学自習ができていない状態では、自分で課題をもち、自ら探求していく問題解決型の学習も満足にできないことにつながります。つまり、アクティブラーニングでもつまずいてしまうということです。
まとめ -小さな読解力の種を拾っていこう-
本書の中から、教師が見落としがちなポイントに絞って、読解力を向上させるポイントを3つ紹介しました。
なかなか一筋縄ではいかない読解力ですが、僕はまず、取り組みやすいこれらの3つのポイントから意識して授業づくりをしてみようと思います。
本書を読んで強く感じたことは、読解力の向上には小さなことの蓄積がめちゃくちゃ重要だということです。それも日常に転がっている子どもが「ちょっと面倒くさい」と思う所に読解力成長のヒントが隠されています。筆者も本書で語っているように、読解力においては劇的にこれで改善するという特効薬のようなものはありません。これまでの記事にまとめたような、地味な作業や地道な努力の先に、積もり積もって身に付くものだと感じました。
この記事が、読解力に悩む多くの方の元に届き、何か得るものがあると嬉しく思います。僕も学校生活の中に転がっている読解力の種を拾っていけるように意識してみようと思います。
よろしければ、こちらの記事もぜひご覧ください⇩⇩⇩