自分の見ている景色が、すべてじゃないから
医療介護の現場で働いていると、こんな指示を受けることがあります。
「栄養剤なんだけど、MIXでお願いします。」
これは、いろいろな味の栄養剤を寄せ集めて調剤してね。
という意味の指示です。
言葉通りの意味、と私は感じていました。
でも今日、この指示に頭を抱えている職員がいたのです。
「この指示なんですけど、自信がないので確認してもいいですか?」
いいよと頷いた私ですが、この単純な指示に対してなぜ自信が持てないのか疑問を抱いていました。
彼はこう続けます。
「MIXって、いろいろな味の栄養剤を混ぜて一つにする。という意味ですか?」
あれだけ単純な指示を、私は当たり前のように一つの解釈しかできないと思い込んでいました。
でも、彼はまったく異なった解釈を私に提示したのです。
あの短文の中に、二つの捉え方があることを教えてくれました。
10人で山へ登り、日の出を拝む。
でも、その10人が下山後に思い出を語ったら、きっとみんな違うことを語るのだと思う。
一人は日の出の美しさを、一人は山頂の香りを、一人は食事のことを、一人はみんなの笑顔を。
同じ空間にいて、同じ景色を見ていたはずなのに、きっと捉えかたはみんな違う。
分かってもらえなくてイライラしたり、ちょっと怒鳴ってしまったり。
でもそれは、あなたとは見ている景色が違うから仕方がないこと。
自分の見ている景色があって、相手の見ている景色がある。
そう知ると、なんだか心が軽くなる。
まるで山頂にかかる、雲のように。
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