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美味しい本 PartⅡ▶︎チャーリー

イタリア半島の最南端、丁度ブーツの爪先にあたるところに「カラブリア州」がある。
そこにはアルバレシュ語という特殊な言語を話すアルバレシュと呼ばれる村が50ほど点在している。
村は15世紀から18世紀にかけてオスマン帝国の圧政から逃れてきたアルバニア人によって築かれたもので、人口は10万人ほどになるらしい。
そんな村の一つであるカルフィッツィで産まれたのが、作者であり、本作の主人公であるカルミネ・アバーテ。

「海と山のオムレツ」 カルミネ・アバーテ作、関口英子訳
(”Il banchetto di nozze e altri sapori” Carmine Abate )

彼は小学校に入るまでイタリア語を知らず、アルバレシュ語しか話せなかったそうだ。
この物語はカルミネの少年期から、成長して、結婚して、家庭を持つまでの作者自身の半自伝的とも言える短編の連作集。

彼の生まれた村は決して裕福ではなく、父親は家族を養うためにドイツに出稼ぎに行かざるを得ない状況だったこと、幼馴染みも大抵は進学せず、村で仕事を見つけたり、出稼ぎに行くのに対して、彼は父親の強い思いがあって大学に進学たこと、父としては息子は大学で学んで、出稼ぎに行かなくても村で稼ぎを得られるようになって欲しかったにも関わらず、カルミネは教師としてドイツや、他の街で働く道を選んだことなどが描かれていく。

その連作の中で常に語られるのは、故郷の村カルフィッツィに対する郷愁と、その想いを表した郷土料理だ。
どの作品にも沢山の料理が出てくる。パスタやパン、スープ、ワイン、そしてオリーブオイルといったイタリア料理ではお馴染みのものは当然として、カラブリア料理へのこだわりが強い。
カラブリア料理は赤唐辛子をふんだんに使うのが特徴のようで、カルミネの母が赤唐辛子がたっぷり入った激辛のパスタを作る場面なども出てくる。

名前だけで、いったいどんな料理なのか味はもちろん、姿もよくわからない料理が多数出てくるが、父や母と、時には友人や恋人と料理を食べているその風景、それぞれが年月ともに歳をとり、変わっていく様子が愛おしく感じる。

ちなみにこの話の中で一度だけ「ピッツオケッリ」という蕎麦粉を使ったパスタが出てきますが、ピッツオケッリはわたしも大好きで、蕎麦の香りとともに早春を感じるパスタです。

それからもう一つ。
この本の表紙のイラスト、そしてこの本のリズムというか、内容と文体からくる感触、「いかにも新潮クレスト・ブックスだなぁ」と感じました。

横浜読書会はただ本の話をするだけではありません。時々脱線もします。
また終会後の自由参加の懇親会に行くと食事をしながら、本から発展した話題にも触れられます。
皆さんもぜひ一度参加されてみては?

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投稿者▶︎チャーリー

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