『ツバキ文具店』多部未華子でドラマ化され、続編『キラキラ共和国』も話題になった小川糸の小説
いきなりですが、「代書屋」と聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?
代書屋は、字そのまま、本人に代わって手紙や書類を書いたりする職業です。身近なところでいうと、結婚式の招待状の宛名とか、諸々の賞状とかの文字は、代書屋さんが書いてることが多い気がする。
今回は、そんな代書屋の女性が主人公の『ツバキ文具店』をご紹介。
物語全体に優しい空気が流れていて、泣けるし、こころは温まるし、読むとデトックスになりそうな1冊です。
人は、どんなときに代書を依頼するんだろう?
舞台は鎌倉。主人公の鳩子が、亡くなった祖母が営んでいた文具店と、代書業を継ぐところから始まります。
お話としては、いろいろな人たちが、代書を依頼しに文具店へやってくる、って流れ。わかりやすい構成。で、それぞれの依頼を通して、鳩子の気持ちに変化が起きていく、っていうものです。
自分語りで恐縮ですが、わたしね、この本に出合うまで、代書って好きじゃなかったんです。でも、読んだら考え方が変わった。
賞状とか、公的な文書の代書は別として、手紙とかって、気持ちがとても重要だと思っているので、まったくの第三者に頼むなんて、わたしだったら、もらうの嫌だなって思ってしまって。
個人的に、わたしも周りの人から代書を頼まれることが多くて、ずっともやもやしてたの。頼まれるたびに、「自分で書かないと伝わらないと思うけどな」って思ってた。もちろん、言わないけども。
でもね、『ツバキ文具店』に依頼に来る人の色々な事情を知るにつれて、自分の想像力の欠如にハッとしたのです。
「そっか、そんな決意をもって依頼する人もいるんだな」とか、「相手のことを思って、ベストな選択が代書だったのか」とか、物語の中に出てくる依頼は、そう感じるものばっかりだった。
詳しくは読んでほしいので書きませんが、こういう、価値観を揺るがされる本ってなかなか出合えないよね。
柔らかくて優しい物語なので、「ちょっと読書疲れちゃってるな」って時期、でも活字に触れていたいという気分にぴったりな1冊だと思います。ぜひぜひ。
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