『静かな雨』本屋大賞受賞の『羊と鋼の森』作者、宮下奈都デビュー作!2020年に映画化された注目の短編小説
人の相談に乗るのって、とっても難しくないですか?
大切に思っている人であればあるほど、どれくらい踏み込んでいいのか悩んでしまう。
役に立ちたくて、背中を押してほしいのか、アドバイスが欲しいのか、話を聞いてほしいのかとか、あらゆる可能性を相手から感じ取ろうとして、ぐったりしちゃう。
そのわりに、全く役に立たなかったりしてね。人間って、むずかしい。
今回は、そんな身近の人への寄り添い方を考えさせられる、『静かな雨』をご紹介します。タイトル通り、静かで冷たくて、でも温かさも感じられる1冊だった。
悩んでいる相手に、どんな言葉をかけるべきなのか?
この『静かな雨』は、主人公の行助(ゆきすけ)と、1人でたいやきの屋台をやっている、こよみをめぐるお話。
2人は、くっつきそうでくっつかない、そんな関係だったのだけども。ある日、こよみが事故に巻き込まれた後遺症で、新しい記憶を留めておけなくなってしまうの。
この作品で印象的だったのは、こよみ本人の苦悩はもちろんなんだけど、それに寄り添っていいのか、深く関わって良いのか、立ち位置に悩む行助。
冒頭でも書きましたが、悩みに寄り添うのって、ほんとに難しいじゃない?大切な人であればあるほど、触れない方がいいのかも、って思ったり。
で、そんな行助に、ある人物がかけた言葉が印象的だった。
迷ってるうちは進まない方がいいよ
どちらかというと、悩んでいる人に対するアドバイスって、「やらない後悔より、やる後悔」、「悩む暇があるなら、とりあえず進め」って方向になりがちだと思うの。
もちろん、正解はそのときによって違うから、それも間違っちゃいない。
でも、この言葉をかけた人は、そんなの元気なときに効く言葉だと。行助の心情をしっかりと見極めて、こんなアドバイスをするのです。
ほんとうに迷ってるときは、進もうと思ってもどっちが前だか後ろだか、わかんなくなっちゃってるの。だからね、ユキ、迷ってるくらいなら、やめたほうがいい。後悔しても取り返しのつかないことって、あるんだよ。
ああ、こんなアドバイスができる人になりたいな、って思わされた。
登場人物全員が、お互いを思いやって、優しくもせつない時間が漂っている物語でした。ぜひ、1人時間にゆっくりと味わってほしい。
■この本が気に入った方には、こちらもオススメ
同じく宮下奈都さんの、本屋大賞受賞作。直木賞候補にもなりました。
山崎賢人さんで映画化されていて、そっちも、物語の世界観を丁寧に表現していて素敵だった。ピアノの調律師として成長していく青年のお話です。
わたし、ピアノに全然なじみがなかったけども、このお話を読んで、ピアノという楽器自体のしくみに興味津々になったよ。知的好奇心もくすぐられる1冊です。
この本の紹介記事は、こちらから↓↓↓
■次はコレ!この本が好きなら、これも好きなはずシリーズ
・『蜜蜂と遠雷』恩田陸――直木賞&本屋大賞ダブル受賞!ピアノに人生をかけた4人の闘いが、今始まる!音楽鑑賞のような読み心地の1冊
・『常設展示室』原田マハ――美術館の常設展示の作品との出会いをテーマにした短編集。あなたにしかない出会いがそこに。
・『ウエハースの椅子』江國香織――わたしには、6年の付き合いになる不倫相手がいる。絶望という死に至る病に蝕まれる女性を描いた物語
■全記事に飛べる目次記事はこちらから
※最近の記事は更新できていないので、近日Update予定です
「この本読んでみよう!」と思っていただけた方、サポートして下さると、とても励みになります!頂いたサポートは、こちらで紹介する書籍の購入費に充てさせていただきます。