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帯に短し襷に短歌

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素朴に歌を詠むということへの憧れがある。素朴に詠めるようになりたいと思うのである。とにかく詠んでみないことにははじまらない。「こんなものは短歌とはいいません」なんて言われたってい…
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2021年3月の記事一覧

衝突注意

衝突注意

誰が為に言いたきことか知らねども誰も気付かぬ「衝突注意」
(たがために いいたきことか しらねども たれもきづかぬ しょうとつちゅうい)

最近、毎日通勤で利用している駅の改札に「衝突注意」という表示が出ていることに気が付いた。大変奇異な印象を受けた。誰がどのような状況で何に衝突するというのだろうか。何かに衝突する危険が大きいのは視覚に障害のある人だろうが、そういう人に対して「衝突注意」と大書きす

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月例落選

月例落選

コロナ禍で帰れなかった故郷が数年ぶりの雪に埋もるる
(ころなかで かえれなかった ふるさとが すうねんぶりの ゆきにうもるる)

雪掻きでテレビ観られぬ日に限り箱根駅伝波乱の展開
(ゆきかきで てれびみられぬ ひにかぎり はこねえきでん はらんのてんかい)

「駅長さぁん」いくら呼べども返事なし雪国は今無人駅ばかり
(えきちょうさぁん いくらよべども へんじなし ゆきぐにはいま むじんえきばかり)

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夢超特急

夢超特急

リニアカー明るい未来の交通路地震と共に地下を爆走
(りにあかあ あかるいみらいの こうつうろ じしんとともに ちかをばくそう)

マイバッグ環境負荷を軽くする焼石に水地球嘆息
(まいばっぐ かんきょうふかを かるくする やけいしにみず ちきゅうたんそく)

ソーラーを木々伐り倒し据え付けて水害増えて空見たことか
(そうらあを きぎきりたおし すえつけて すいがいふえて そらみたことか)

普段、電

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濃厚接触

濃厚接触

感染のニュース見ながら手を握り固唾呑み込み濃厚接触
(かんせんの にゅうすみながら てをにぎり かたずのみこみ のうこうせっしょく)

アルコール吹きかけてから手を触れる感染予防濃厚接触
(あるこうる ふきかけてから てをふれる かんせんよぼう のうこうせっしょく)

念を入れそんなところも消毒し気休めしつつ濃厚接触
(ねんをいれ そんなところも しょうどくし きやすめしつつ のうこうせっしょく)

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手前太道

手前太道

旅日記ひとりよがりの愚かしさ面赤て呵々大笑
(たびにっき ひとりよがりの おろかしさ つらあからめて かかおおわらい)

「おくのほそ道」は元禄時代に刊行された。この頃の旅は徒歩が基本だったはずなので、「旅」の意味が今とは全く違っていただろう。出発して隅田川を渡り

行く春や鳥啼魚の目は泪

と詠んだ時の「啼」も「泪」も言葉の重さや質感が今とは比べようが無い。そう考えると、「旅」という言葉を軽々し

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