クララとお日さま。
4月23日はサンジョルデイの日。スペイン発祥、本を贈りあう日。
まだ4ヶ月しかたっていない2022年だが、間違いなく今年1番大事にしたい
本について
以下、ネタバレを含むため、未読の方はご注意ください。
初回読み・幸福な王子との類似点
クララの無垢なこころと、ジョジーとの友情。
人工親友という役割を超えて、ひとを愛するということ。
自分のカラダを差し出してまで、願いをかなえようとする信心または哲学。
これはどこかで読んだことがあるぞ。と記憶の中を探ってみると…
はたして、銅像の王子が自分にはめ込まれた宝石ををツバメに託し、貧しい子供たちに配ったという、児童書「幸福の王子」物語にそっくりだ。図書館で探してみると、その著者は「ドリアン・グレイの肖像」で有名なオスカー・ワイルドだった。
「クララ」を読んで良かったひとは、この絵本もぜひ読んでほしい。
まったく同じ読書脳だった 原正樹さんのnoteもぜひ参考に。 ↓
二度目読み・本編から引用
まず、クララがとても優秀で努力を惜しまず、まわりに気配りする、こころの綺麗なAIで本当に良かった。行間から透けてみえるのは、「性善説」と「何かをお願いする時は何かを犠牲にしなくては」の昔風の道徳観だ。現代の寓話と言ってしまえばそれまでだが、私の心をゆさぶった箇所を、ここに記す。
涙があふれ、活字がにじみ、読めなかった。
クララの無垢な問い。すでに虚しい喪失感を経験済の母親が、最悪の場合の最善策を準備せざるを得ない、かなしさ。
そして、いよいよジョジーの容態が芳しくないとわかり、みんなが覚悟を決めるところ
あぁ神さま。お日さまが、希望をあたえてくださった!
私の瞳から、うれし涙が洪水のようにあふれてとまらない。栄養びしょびしょである。
深読み・もろもろ
そして、クララがジョジーやその父親や、幼馴染のBFに関しては、名前で呼ぶのに対し、クララの母親については丁寧に接しているのは、雇い主(クライアント)はジョジーではなく母親だと分別しているから。だから、母親からの依頼は断れないし(上記引用箇所)、その意図もわかったうえで、お日さまの力を借りたいと働きかけたのだろう。
根底にあるのは
「ひとは何のために生きるのか。愛するとはどういうことか」。
AIと無償の愛、全然結びつかないふたつを寓話に仕立てたのはさすがだ。
翻訳の土屋政雄さんもいい。”疲れている”を”くたびれて”と読ませる段階で、すっと「カズオ・イシグロ」ワールドにどっぷり浸ることができた。
余談。
それにしても、本の装丁は各国の出版社が決めるのだろうか。私は日本版の『クララとお日さま』のイラストを気に入っているため、初版の英国版はなんだか素っ気ないと思ってしまうのだが、みなさんはどうですか?
今年いちばんの本(出版されたのは2021年)、我が人生の中で
心がくたびれたときに、何度も頁をひらくことになるだろう。
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