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人員配置基準の「根拠」って何だろう?

注:本記事は介護サービス事業における「人員配置基準」の根拠に対する疑問であり、明確なアンサーは提示しておりません。むしろ、ご存知の人がいたら教えていただきたいくらいです。

■ 介護職員は何人いればいいい?


社会全体で「介護業界は人手不足」という認識があるが、私の管理・運営している事業所や介護施設も人員は充足していない。

現場職員からは日常的に人員補充を希望する声を受ける。
しかし、求人を出しても応募が全くない時期はあるし、仮に応募があったとして誰でも良いというわけにはいかないので、求人を出し続ける。

そんなある日、とある職員から「介護施設って普通は何人いるものなのですか?」という質問を受けた。どうやら、他の施設と比較して、自分たちの施設の人員が少ないのかを知りたかったらしい。

そこで、「常勤換算」や「人員配置3:1」といった、介護サービス事業では運営基準といった法令で必要な人数が定められていることを説明した。

それは必須の最低基準であり、あとは事業所の方針によって人員をやりくりしたり、必要な時間帯や役割の人員を追加する・・・といった話をしたら、一応は納得した様子だった。

その職員との話を終えてしばらくした後、ふと思った。

「常勤換算」や「3:1」といった人数は、何の根拠をもって法令に定めているのか・・・と。


■ 常勤換算や「〇:1」の根拠は何?


介護サービス事業を開設するにおいては、しかるべき役職者の配置と既定の人数が法令に人員配置基準として定められている。

それが「常勤換算で×人以上」とか「利用者〇人あたり、介護職員1名配置」といった数字として規定さている。

国に請求する介護報酬を上乗せする要件として、「介護福祉士の割合として△%以上」とか「常勤職員が△%以上」というものもある。

これは義務であり、定められている人員配置基準を満たしていないと違反となり、改善指導や罰則が科せられる。

そのため、どの介護サービス事業所も人員配置基準に違反しないように、求人を募集したり、現行職員に資格取得を促したりするわけだ。

数字として明確に規定されている以上、それに準じる努力をすることは当然と言えば当然だ。

では、法令に定められている人員配置基準の数字は、一体どこから出てきたのだろう? 

例えば、訪問介護に規定されている「常勤換算2.5人以上」とか「サービス提供責任者1名の担当できる利用者は40名まで」といった数字は、何を根拠となっているのだろうか?

グループホームにおいて、「利用者3名に対して介護職員1名常駐」という、利用者3名の根拠は何だろうか?

検索エンジンで「常勤換算 根拠」などと調べると、その計算法はたくさん出てくるが、その数字になった根拠は見つからない。

私が見つけられないだけという理由もあるだろうが、それともこのような根拠を探ると、介護制度の歴史の話になるのかもしれない。


■ 「法律で決まっているから」は根拠か?


このような話をすると、「法律で決まっているから、守るのは当然だろう」と思われるかもしれない。

しかし、それだと交通ルールを子供に教えるとき、「信号機を守るのはそのように決められているから」と言うようなものだ。

あるいは、三角形の面積を子供に教えるとき、「タテ × ヨコ ÷ 2という公式があるから」と言うようなものだ。

何も法律を非難しているわけではない。
面倒なことを言っていることも自覚している。
法令によっては背景が分かることもある。
管理者や計画作成担当、看護師や相談員の配置などは、役割として必要だということは分かる。

しかし、人員配置基準においては、その人数の根拠が不明である。

例えば、介護施設においては基本的な生活サイクルを具体的に仮定して、しれをもとに何件かの介護施設で運用した結果、一定のパターンの統計モデリングが得られた・・・といったならば分かる。

しかし、「法律で決まっているから」の「決まっているから」の根拠が提示されないと、私のような面倒くさい奴は納得できないのだ。


■ 根拠がないと現場は負担に思うだけでは?


個人的な理由だけではない。

介護サービス事業の管理職としては、介護職員にもちゃんと、人員配置基準の根拠を説明してあげたい。

法令とは社会のあり方を形にしたものだ。
法令を通じて世界に触れるためには、やはり背景や根拠といったものを提示するほうが理解も視野も広まるはずだ。

しかし、その背景や根拠が分からないと、その業界・職場という範囲の限られた世界でしか思考できなくなってしまう。
ただでさえ介護現場は人手不足という現実があり、そのまま世界のあり方に触れる機会がないと、ただ「自分達だけが大変だ」「この職場は忙しい」という偏った認識になり、打開策や違う視点でモノが見れなくなる。

そしてそれは、私も含めた管理職や経営陣も同様だ。

「法律で決められているから」という思考だと、「どうすれば人員が集まるか?」「どうすれば人員基準を守れるか?」という議論になってしまう。

大切なことは「なぜその人員が必要なのか?」「介護サービスにとって、利用者にとって何故その人数が必要なのか?」ではないか?


■ 科学的介護は推進しているのに・・・


介護サービスでは数年前より「科学的介護」を推進しており、それが介護保険制度においても実用化と報酬化されている。

介護支援を事業所や介護職員の狭い主観ではなく、全国のデータも取り入れた客観的なデータサイエンスに基づいて行うことは非常に重要だ。

テクノロジーの進化によって、このような取り組みはどんどん拡充していくべきだと思う。

しかし、介護サービス自体にエビデンスといった根拠が蓄積される一方で、法令に対してのエビデンスが明示されていないのは疑問だ。

法改正は確かにあるが、法令を時代に即して根本から見直すということはあまり聞いたことがない。(年金制度も、ほぼ昔のままらしいし・・・)こうなると、法令の根拠が曖昧なのではないかと思ってしまう。

テクノロジーや思考法が進歩しても、その基盤たる法令が時代に追いついていないという事実もある。

これは介護に限った話ではない。例えば、カーボンニュートラルに向けた機器や交通手段が形になっても、それを制度が阻むという話を耳にする。
もちろん安全面も踏まえた実用化の確認は必要だが、行政内のPDCAサイクルをもっと最適化・高速化できないものかと思う。

国を非難するわけではないし、行政も人手不足であることも理解できる。
しかし、それこそ民間のDX化を推進するよりも、行政はもっとテクノロジーを取り入れてたほうが良いだろう。
それによって、様々な分野の制度化が高速化できるならば、もっと時代は良い方向に向かうと思う。

しかし、そのアルゴリズムを作り上げるには、やはり法令もまた、世間に公表して納得を得られる根拠が必要なはずだ。


■ 最後に


本記事は、私が人員配置基準に対して無知な面が多々あるため、一方的にわめき散らした内容になってしまった。お目を汚したら申し訳ない。

しかし、利用者たる高齢者に介護サービスを提供にあたっては、ADLや生活歴をもとにしたアセスメント(現状把握と課題分析)を根拠にするのに、事業所の運営のもとになる法令に根拠が見えないのは疑問なのだ。

また、その事業所もまた「法律で決められているからやる」というのもまた、何というか思考停止のようにも思えてしまう。

うーん、せっかくだから行政に問い合わせしてみようか?
おそらく事業所内や上層部から「面倒になるからやめてください」と止められるだろうが・・・。まあ、興味は尽きないテーマだと思う。

ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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