利用者にムカついたら、介護施設に入所している理由を思い出してほしい
どんなに忙しくても、感情を露わにしたり、怒鳴ったりすることは決して良いこととは言えない。
理性を欠いた言動をしたとしても、何の問題解決にもならないし、何かが向上することは決してない。
つまり、忙しさに我を忘れて感情的になることは合理的ではないのだ。
・・・と、そのようなことを言っても、ついつい状況に忙殺されて「こっちは忙しいんだー!」「余計な手間を増やすな―!」と爆発してしまうのが人間というものである。
だから、感情コントロールをする前に「自分は忙しくなると感情的になってしまうことがある」という事実を受け止めたほうが良いと思う。
そもそも多くの場合、感情を爆発させてしまう対象は自分自身に対してではなく、他人という存在に対してである。
他人が自分の期待するとおりに動かなかったり、理解してくれなかったりするわけだから怒りや悲しみが湧き上がる。
その結果として感情的になってしまうわけだ。
これは介護施設でもよく見かける。入居している利用者(高齢者)に対して、介護サービスを提供している施設職員が感情的になるのだ。
その中でよく聞くのが・・・
「さっき言ったじゃない」
「どうして分からないの」
「余計なことしないでよ」
・・・といったものである。
もちろん、これらはそのまま利用者に言うことはない。しかし、結局のところ利用者の何かしらの不備に対して、どのような言葉にしたとしても上記のような言い方をしていることには変わりはない。
要は、利用者ができないことに対して責めるような物言いをするのだ。
これが間違いであることは、介護従事者でなくとも分かるだろう。
しかし、介護従事者の中には当然のように上記のような物言いをする方が少なくない。
その理由の1つは、お客さんである利用者(高齢者)に対して介護サービスを提供しているという認識ではなく、心のどこかで「介護してやっている」という認識になっているからだ。
利用者がいるから賃金を貰えて生活できていることを忘れて、介護してやっているという姿勢でいるから上から目線の物言いになってしまう。
もう1つの理由として、利用者たちが介護施設に入所している理由を忘れているということもある。
なぜ介護施設に入所しているのかと言えば、そこに住まう利用者が独りでは生活できないからだ。差別的な言い方だが、突き詰めるとそういう話だ。
もちろん、独りでは生活できないとは言え、すべてが何もできないというわけではない。できること・できないことがあって、できないことを介護サービスで支援しようとすることに意義がある。
しかし、介護従事者はときに「介護施設に入所しているのは、その利用者にできないことがあるから」という背景を忘れてしまっていることがある。
また、高齢になると心身や理解力が衰えることも忘れて、自分の心身や理解力をベースにして、それを利用者に求めていることも伺える。
だからこそ、理解力や記憶力の低下を忘れて「さっき言ったでしょ」「どうして分からないの」と責めたり、失敗したことに対して「余計なことをしなでよ」と棘のある言葉を言う。
そのような場面を見ると、「どうしても何も、分からない・できない状態の高齢者なのだから介護施設にいるのだろう」と思ってしまう。
これは高齢者のことを馬鹿にしているわけではないく、介護サービスというニーズの背景を考えると、結局はそのように言うしかない。
レストランに入店してきたお客さんに対してウエイトレスが「何しに来たの?」とは言わないし、調理員が「どうして自分で調理しないの?」と言わないだろう。
このようなことに気づけば、高齢者に対して「何でできないの」「どうして分からないの」と責めること自体が、いかにナンセンスかとお分かりいただけると思う。
介護現場はストレスフルになりやすい。
しかし、冒頭でもお伝えしたように感情的になっても意味はない。
そこで思い出していただきたいのは、介護サービスにおいて利用者(高齢者)はお客さんであり、その方々の存在あって介護従事者の生活の糧になっていることである。
そして、そのお客さんである利用者がなぜ介護サービスを使っているのか、施設に入所しているのかを考えたとき、そこには本人たちだってやむを得ない理由があるということも思い出していただきた。
そうすれば、多少は「ま、怒ってもしかたないや」と思えるのではないだろうか?
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。