健康と食について「医食同源」
昨今、人々の間では食について様々な関心が寄せられている。
コロナ禍の現在、おおかた話題になっているのは、手料理の技、お取り寄せグルメ、そして健康食だ。
健康食というカテゴリーを極めていきたいのであれば、漢方を必ず学んでほしいと思う。
というのも、漢方という医学は、食事の医学といっても過言ではない。
漢方医学では食のあり方や工夫について「食養生」と呼び、大変重要視している。
次の四字熟語を聞いたことがある方もいると思うが
「医食同源」
いしょくどうげん
という考え方を基礎にしているのが漢方医学なのである。
医学も食事も元(源)は同じである。
つまり、体を健康にしたいのならば医療を受けるだけではなく、食事を見直すことも必要ということだ。
ちなみに、この医食同源の四字熟語は日本での造語である。
漢方の大元である中国の古典に記載されているものは「薬食同源」という。
実は1972年NHKさんの「今日の料理」の中で、臨床医新居裕久先生が、日本人には「医食同源」の方が分かりやすいと考え出した言葉だそうだ。
そして、この医食同源の言葉は現在では、中国にも逆輸入されているという。
やはり、中国も日本同様、飽食の時代ということで生活習慣病などで医療機関にかかっている人が増加しており、この言葉の重要視されてきているのであろう。
漢方の食養生では、食物の味(薬味)と性質(薬性)を考慮している。
薬味とは、味のことで、酸、苦、甘、辛、鹹の5つの味で分類されている。
読み方はすべて音読みで、さん、く、かん、しん、かんと読む。
鹹はかんと読み、塩からっぽい味のことをいう。
この五味は、人体の機能を5つに分類した五臓(肝・心・脾・肺・腎)と呼ばれる概念があるのだが、これにそれぞれ関係をしている。(これを相関関係という)
酸は肝、苦は心、甘は脾、辛は肺、鹹は腎と関連し、それぞれの臓に良い影響をもたらすとされている。
なお、この五臓は西洋医学的な臓器とは必ずしも一致するものではない。
これを解説すると長くなるので、また別の機会に解説したいと思う。
つぎに薬性だ。
薬性は温めたり、冷やしたりする性質を指し、温、平、寒の3つの性質を基本としている。
温は温める性質。寒は冷やす・性質。平は温めも冷やしもしない性質というわけである。
ちなみに、お酢は酸温、すなわち薬味が酸で、薬性が温である。
レモンは酸寒、すなわち薬味が酸で、薬性が寒。
梅は酸平、すなわち薬味が酸で、薬性が平とされている。
このように食材にはそれぞれ、薬味薬性が備わっており、それらを季節、体調、精神状態などの状況に合わせてうまく活用することが食養生につながる。
例えば、蒸し暑い時期には、胃腸が弱りがちなので脾に良いとされる甘味の食材、湿気を発散するために辛い味の食材。そしてほてった体を涼ませるために寒性のものを組み合わせたりするのである。
具体的な食事例でいうと、夏野菜のカレーや麻婆茄子などいかがだろうか。
このように食物の薬味薬性を考慮しながら日々の食事も一工夫することが大切。
そして、それでも不足の場合は、生薬の薬味薬性を考慮し組み合わせて作られた漢方薬を服用することで、相乗的に効果が高まったりもするのである。
今回はここまで。
読者の方に少しでも参考になれたなら嬉しみである。
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