漢方薬は優しいだけのイメージとはちょっと違う
近年、漢方薬の使用シーンが増えているように思う。
そして、漢方に対して、良いイメージをもってくれている方が増えていることをとても嬉しく思う。
筆者の個人的な感情ではあるが、雑誌やテレビ、インターネットなどで漢方の記事などを読むとまるで我がことのように嬉しく、こっそりとガッツポーズを机の下で決めてしまうのである。
さて、とある調査では、漢方薬の良いイメージとしては「天然由来」、「副作用が少ない」、「慢性疾患に効く」、「効き目が強すぎない」などが挙げられているようだ。
一方、悪いイメージとしては「速効性がない」、「味がまずい」、「何に効くかわからない」などが挙げられているようだ。
こうしたイメージに対して、漢方の実際をちょっと解説したいと思う。
漢方は天然由来のお薬ということで、化学合成したお薬よりは、刺激が少なく、胃腸に優しい。
そして、様々な天然成分により相互作用をもたらすことができる。
しかし、副作用に対してはまったく心配ないわけではない。漢方薬には、発疹、むくみなどの副作用もあったりする。
また、慢性疾患に効く、効き目が強すぎないなどのイメージに対しては、確かにそのような性質の漢方薬も多い。
が、例えば風邪のひきはじめに使う葛根湯などは速効性もあったりもするのである。
このように、漢方は一部間違ったイメージも持たれているのが実情のようだ。
これは、一般論として、西洋医学は局所的な治療を中心に、漢方医学(東洋医学)は体全体の調子を整える治療が基本になっていることも影響がしているようだ。
残念ながら、漢方医学では手術という行為が発展しなかったため、世界の主流の医学体系にはなれなかったこともあるようだ。
さて、先日閉幕した東京2020オリンピックの開会式だが、漢方薬もドーピングとは無関係ではない。
大会主宰者側の規定で若干の相違はあるが、次に挙げる生薬はドーピングに抵触する可能性があったりする。
麻黄という生薬は、エフェドリンという興奮作用を持った成分を含み、それを含む葛根湯を服用した場合などはドーピング該当する可能性がある。
また、胃腸薬などに含まれている生薬で、ホミカ、陳皮(チンピ)などもそれぞれストリキニーネ、シネフリンなどの興奮作用のある成分を含むため要注意だ。
こうした生薬をもって構成されているのが漢方薬であり、漢方といってもやはり薬物なのである。
優しいイメージだけではない、優しさと厳しさを兼ね揃えているのが漢方薬なのである。
100%安全安心なものであるわけではなく、正しい使用法が求められるのである。
もちろん、正しく体質・病状(証)に合った漢方薬を使用すれば、良いイメージそのままの漢方薬の効果を発揮することができるのである。
私たちも、漢方をさらにより多くのシーンで活用されるよう、今後も正しい漢方技術の啓蒙に努めたいと思う。
今回はここまで。
読者の方に少しでも参考になれたなら嬉しみである。
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