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2021年1月に読んだ本
2021年1月に読んだ本
去年はInstagramでやっていたのですがいかんせん読みづらいので今年はnoteでやろうかなと思います。
1 中島らも『アマニタ・パンセリナ』
新年1冊目は中島らものドラッグエッセイ。タイトルのアマニタ・パンセリナはテングタケの学名。西荻窪の古書音羽館で購入。
クスリには精神科にかかっていた時期、副作用等で振り回されまくったし、素面で幻覚も妄想もひどいのをやっていてそれらがすごくしんどかったので、クスリ全般に対して私は非常にネガティブな感情があるのだが、このエッセイは面白かった。中島らもは自分のことを自分のこととして書く時の自分との距離感が好ましい。この距離の取り方が下手糞な人の自分語りは耐え難いものがあるので。ブーメランだな。
2 新宮一成『ラカンの精神分析』
友人のお父様推薦書。紀伊国屋書店新宿本店にて購入。
やっぱりラカン、難しい。黄金数が出てきたあたりから雲行きが怪しくなりはじめ、四つの語らいとかはもう何が何だかパーである。四つの語らいの話は学部3年のときに授業で聞いたんだがな…。まあでもラカンにしては分かりやすいと思う。ほんとエクリ何言ってんのか分かんなかったあの悪夢に比べれば他は全部マシ。次は転移について分かりやすく説明してくれている本が読みたい。誰かオススメありませんかね。
3 中島らも『酒気帯び車椅子』
中島らもの遺作。吉祥寺の古書百年で半年前くらいに購入。
『ガダラの豚』の3巻みたいなバイオレンスもの。メチャメチャなドタバタ劇で人が死にまくる。最後に編集部から一部矛盾があるとことわりがあるのだがどこが矛盾しているのか分からなかった。悔しい。どこか分かった人は教えてください。
4 吉村萬壱『流卵』
中2男子が勃起した陰茎でダウジングしながら近所の雑木林に分け入り魔女になろうと全裸で瞑想(迷走)する話。紀伊国屋新宿本店で購入。好みだね。かなり面白い。
5 𠮷田恭大『光と私語』
吉祥寺の古書百年にて購入。歌集である。まず装丁がすばらしい。あえて解像度を上げ過ぎない日常の目線で歌が詠まれている。
6 本谷有希子『嵐のピクニック』
吉祥寺の古書防波堤にて購入。確かに裏表紙に書いてあるとおりキュートでブラック、奇想天外な短編集。私はまず書かないし書けない設定、展開、語り口だなと思う。演劇的なのかもしれない。
7 阿部大樹『翻訳目録』
西荻窪の今野書店で購入。絵本みたいな本。翻訳の面白さを伝える本というよりは言葉の採集標本をめくりながら眺める本。著者の抽象的なコメントがことごとくピンと来なくてそこが逆に他者感を醸してよかった。
8 ジョルジュ・バタイユ『エロティシズム』
「エロティシズムは死にまで至る生の称揚である」
2冊も持っているのに通読はしてなかったので読んだ。読んで思ったがやはりこの本に関して通読はマストではない。極論序論だけ精読すればよいと思う。はじめて買った古い100円の『エロティシズム』は学部2年のときに高円寺のルック商店街の方にあった土日しかやってない古本屋で、2冊目の新しい500円の『エロティシズム』は就職1年目のに代々木上原のロスパペテロスで買った。澁澤龍彦訳の非常に装丁が麗しい本である。
9 ロラン・バルト『恋愛のディスクール・断章」
吉祥寺の古書防波堤で購入。断章形式なので読みやすい。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』が出てきまくる。『若きウェルテルの悩み』はピース又吉がノブコブ吉村に勧めて失敗した本である。めちゃめちゃどうでもいいが。私は読んでいない。超雑に言うと恋愛に関する名言っぽいことがたくさん書かれている本。
10 乗代雄介『旅する練習』
西荻窪・今野書店にて購入。もはや叔父叔母文学の名手である乗代雄介の最新作。今までの作品は語り手が甥or姪側だったが今回は逆だった。
同作ではジーコとおジャ魔女どれみとカワウと柳田國男という、どれについても詳しい人は彼のほかに一人もいないだろう組み合わせで高解像度の描写がなされているのだが、そういう点から言うとみうらじゅんの系譜にも位置づけられる作家なのかもしれない。組み合わせの意外性が高ければ高いほど一目置いてしまう、私好みである。
ネットでちらっと感想を検索してみたら「泣いた」みたいな感想が多くて驚いた。確かに泣けるっちゃ泣けるんだが、語り手は「感動を忍耐しなければ書くことはままならない」と言っているのだし、読み手も泣くべきではないと思いながら私は読んだよ。
11 村上春樹『海辺のカフカ』
ブックオフ(たしか阿佐ヶ谷)で購入。本当に恥ずかしながらはじめて村上春樹読めた(『ノルウェイの森』に何度か挑戦して失敗していた)。私は中性的な人に非常に強い憧れがあるので大島さんが好きだね。終始楽しく読めたのでこれを機にほかの作品も読んでいきたい。村上春樹はもはや古典と化していると思うので。
12 森見登美彦『四畳半神話大系』
紀伊国屋新宿本店で購入。絶対売ってるだろうし古本屋で買えばよかったな。これまた恥ずかしながら森見はじめてちゃんと読んだ。今まで「ああ森見ね」みたいな顔して一作もちゃんと読んでなかったんである。
感想としてはなんかムカつく小説だなって感じ。自分が高卒だったらものすごい大学コンプレックスに苛まれそう。しかしまったくよくできている。文体も内容も展開もちょっと失敗したらえらいことになりそうなのに、一輪車で安定感のあるコーナリングで可能なんだ、と思わせるバランス感覚。森見の真似して死んだ人たくさんいそう。
13 金原ひとみ『マザーズ』
吉祥寺・古書防波堤で購入。出産してすぐの頃の作品は他の時期の作品より重いものが多いのだが、『マザーズ』は金原ひとみ作品の中で一番長い長編とこともあって群を抜いて重たい。チェイサーを挟みつつ読むことを勧める。
同書では3人の母が描かれているのだが、その3人ともに金原ひとみ自身が投影されている。不倫してた場合の金原ひとみ、虐待してた場合の金原ひとみ、専業主婦だった場合の金原ひとみ、、私は読んで男も子供もいらないわと思ったけれどそういう話ではなくて、もっとフェミニズムの観点から解釈されるべき作品だと思う。
14 戌井昭人『ひっ』
吉祥寺・古書防波堤で購入。クズ男文学ではあるが女にだらしない系ではない。テキトーに生きてる人って人より逞しいよなと思った。
15 町田康『きれぎれ』
吉祥寺・古書百年にて購入。言わずと知れたクズ男文学。クズお坊ちゃん系である。いやー、でもクズは楽観的でよいよね。悲観的すぎる人間は多少見習ってもいいんじゃないかね。あと高田馬場駅前の喫茶店ロマンがマロンとして出てくるよ。
16 江永泉・木澤佐登志・ひでシス・役所暁『闇の自己啓発』
西荻窪・今野書店にて購入。読書会の議事録が基になった本。面白いし刺激的。私も読書会したい。
17 吾妻ひでお『地を這う魚 ひでおの青春日記』
高校の同級生に勧められたので探していたところ中野のまんだらけで発見・救出。何か作画が丁寧な気がする。普通に青春しててよいね。
以上。今月は結構読めたね。今月の大賞は『闇の自己啓発』かな。感想全然書けなくて短いけど。