駅前散策日記 JR弁天町駅前編
降りた駅の最寄りの楽しみ方といえば、私の場合は、まず書店。それからやはり食でしょう。今年はありがたいことに京都から外へ出る機会が増えましたから、せっかくなら、その地を歩き、その地を肌で感じたいと考えるようになりました。
今年4月から毎週水曜日、始発で行ってる大阪弁天町は、そういえば、職場に行くだけで町を歩いたことがほとんど無いじゃあないか、これでは実にもったいない!というわけで、今日は昼飯を食うことにしたのですが、やはり、その前に書店なのです。私が弁天町へ行くことになったのとほぼ同時期にWAY書店という書店がオープンしておったのですが、私、ちゃんと中に入って本と向き合ったことがありませんでした。こう言っては失礼かもしれませんが、どこにでもあるような書店・・なのかと思いきや。ここがなかなか面白くて、他所の書店で同じようなことやってるのかは知らないのですが、「本の福袋」というコーナーでは、本のタイトルや作者などの情報が隠されており、帯の一節やオススメの一節だけで本を選ばせるという仕組み。ただ、面白いとは思うけど、私にはこれに何百円を費やすことができませんでした。いちばん安いのでも700円くらいしましたからね。同じ金額を使うなら、ちゃんとフィーリングががっちりハマった本がいい。お互いに剥き出しの感情で愛し合いたい。
WAY書店で面白いと思ったのは、これだけではなくて、「明日返品されてしまう本」ばかり集めた棚があったんです。「ここにあるのは返品予備軍。今日を逃すと、もう二度と出会えない本があるかもしれません。」なんて書かれていたら触手がのびるじゃありませんか。これもいわゆる「ナッジ」ですね。行動経済学において、人々が自分自身にとってより良い選択を取れるよう手助けする手法のこと。「ナッジ」には「そっと後押しする」というような意味があるらしい。そっと後押しされて私は小松左京『日本沈没』の上巻を買ってしまいました。よくよく考えてみたら、『日本沈没』なんて絶対にどこか違う店で出会えるのにね。まんまとやられちまったけど、それはそれで清々しくもある。
WAY書店があるのは職場のある駅直結の大阪ベイタワーっていう商業複合施設です。これまでの私にとって弁天町=大阪ベイタワーでしたので、今日は少し駅前を歩いてみましたら、なんともいえない味を放つ中華料理屋がありましたので、入ってみたら店内ほぼ満席。一席空いてたカウンター席に着席するも、入店から着席の間、店員さんには一言も声を掛けられません。「いらっしゃいませー!」とか無いんですよね。噂によると某ラーメンチェーンの「しゃっせー!」は「幸せー!」と言っているらしいですが、まぁ、しかし、そんなつまらない言葉遊びに比べたら、満員の店内で新規の客に手が回らずあたふたしている店員さんの汗のほうが微笑ましい。仕事が一段落したおばちゃんが水を持ってきてくれたので、比較的リーズナブルと思われる「ちゃんぽん」を注文。「ちゃんぽんでーす」とオーダーを通すおばちゃんを厨房のおっさんは無視しています。聞こえているのかいないのか。私のあとにも新規の客はひっきりなしに入ってきて、次々おばちゃんがオーダーを通しますが、厨房のおっさんが何か返事をすることはない。ああ、これがこの店の日常なのだ。
無事に出てきた「ちゃんぽん」は、期待通りの「ちゃんぽん」で、なんら裏切りの要素がなく、ただただ美味い「ちゃんぽん」でした。野菜多め、おそらく冷凍の魚介たち、そして存在感抜群のキクラゲ。もちろん麺の安定感がなければ「ちゃんぽん」の「期待通り」は成立しません。すぐ近くにこんなお店があることを知らずに半年以上過ごしていたことを悔いても仕方がありません。人生なんて、だいたいそんなことばかりで、万事に気付くことなどできないのです。遅ればせながら気付けたという、このご縁がありがたいではないですか。一歩踏み出すことで広がるご縁。人生の縮図を体感いたしました。
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