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令和五年読書の記録

 2023年、最初に読んだのが東野圭吾『マスカレード・イブ』。東野圭吾さんって有名すぎて邪道というような変な捻くれ方で見てしまっていたところがあり、ずっと読まなかったんですけど、昨年あたりから、そういう捻くれ方のせいで名作を見逃し、「いやあ、僕、東野圭吾とか、そういうのは読書じゃないと思ってるんで」などと嘯くのはつまらなさすぎると思い、読むことにしたんですが、読んでみたら、とにかく、まあ、面白い。今年最後に読んだのも東野圭吾さんの作品で、この『ある閉ざされた雪の山荘で』というミステリー小説は新春早々映画公開されるので、それも楽しみです。

 ミステリーといえば、斜線堂有紀さんの『楽園とは探偵の不在なり』も面白かった。ミステリーでありSFでもあるこの作品の世界では、二人以上の人を殺すとその者は地獄へ堕とされてしまうので、本来なら連続殺人は起こらないはずなのに・・・という、物語の設定が現実離れしている作品なんですが、当然のことながら、作中ではその世界が「当たり前」で、その「当たり前」から成り立つ理屈を理解したうえで読んでいく、という面白さを私は斜線堂さんの小説で覚えました。SFは読み始めたばかりですが、SFを読むことによって、自分のもつ「当たり前」とは異なる「当たり前」が存在することを想像できるようになりました。多様性を受け入れる社会を構築するためにSF小説が必要なんじゃないかと思う。SFでは筒井康隆『パプリカ』小松左京『日本アパッチ族』のほか、乙野四方字『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』も面白かった。この二作は物語が繋がっていて、いわば前編後編なんですが、どちらから読み始めてもよく、読み始めたほうが前編になり、どちらから読み始めるかによって物語の意味が変わるという、実験的な作品でした。あとは『新しい世界を生きるための14のSF』も私の世界を広げてくれた。

 世界が広がるのはいいことに違いないのですが、その分、狭い世界のつまらない論理を押しつけてくる強者たちを毛嫌いするようになってしまいました。本当はそういう人たちが生きる世界も受け入れていかないといけないのではないか、とも思うんですが、嫌いなものは嫌いで仕方ありません。来年もなるべく接触しないようにしたい。どう頑張ってもわかりあえない人はいる。若林正恭『ナナメの夕暮れ』氷室冴子『いっぱしの女』などのエッセイを読み、こういう方々のこういう意見もあるのだと心強くなったりもしました。

 私は「言葉」の持つ正負両方の強い力に関心があり、その強さをなるべく意識していたいと思うんですが、意識しすぎるがために他人の発したつまらない一言を延々と引きずりがちになります。前段の私の嫌いな人というのは何人かいますが、そういう人たちが顧みることさえしない一言で深めの傷を負ってしまった私の側を「そんな小さなことで」と笑ってしまわない優しい世界は月より遠くにあるらしいから、私も今、SFの世界を生きているといえる。

 少しでも明るい未来を生きたいという思いから、高円寺の蟹ブックスで買ったヤマザキOKコンピュータ『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』を読んだことで私の人生は変わるかもしれない。

 ほかにもたくさんの本を読みましたが、すべての読書が私の世界を広げてくれたと思います。来年以降もそうやって世界を広げまくってやがてくたばるその間際にいちばん広い世界を生きていられればいいなと思います。

蠱惑暇
こわくいとま

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