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趣味は新聞コラムを読むこと

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新聞各紙のコラムについて書いたものをまとめています。
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#新聞

ツネ様

ツネ様

 新聞の何が好きかといえば、興味のない記事があることである。普段自らは知ろうとしない情報に近づくことができるのは近頃得難い魅力だ。インターネットは気を利かせすぎる。先回りしてくれるのは有り難いが才気ばしったところがどうも好きになれない。三国志で曹操が楊脩を嫌っていたのと多分同じ感情だと思う。鶏肋鶏肋。
 インターネットは寄り道をさせてくれない。ネットサーフィンなんて寄り道の極みではないかと思われる

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しみじみ飲めばしみじみと

しみじみ飲めばしみじみと

 新聞各紙一面コラムを読むのを趣味にしております。主に読売新聞「編集手帳」朝日新聞「天声人語」毎日新聞「余録」日経新聞「春秋」産経新聞「産経抄」京都新聞「凡語」を毎日チェックしているんですが、全紙が同じことを題材にしていることって年に一度あるかないかくらいなんです。すごく珍しいことなんですが。

 1月11日の「編集手帳」で八代亜紀さんは少女の頃、自分のハスキーな声を「嫌だな嫌だな」と思っていたこ

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タルト・タタンと不正がたんと

タルト・タタンと不正がたんと

 12月28日の産経新聞『産経抄』に高島屋のクリスマスケーキの件が書いてあり、あの無惨な崩れ方をしたケーキに3歳の子が雪だるまやツリーを装飾して作品に仕上げたというエピソードが紹介されていました。転んでもただでは起きないというのか、災い転じて福となす、というのか。
 そんなエピソードに続いて、フランスには「ケーキのなり損ない」という名の菓子もあると書いてあり、気になったから調べてみたところ、どうや

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4月14日の新聞1面コラムチェック

4月14日の新聞1面コラムチェック

 日に日に存在感が大きくなるチャットGPT。毎日どこかでこれに関する記事を見かけます。読売新聞『編集手帳』も今日はチャットGPTの話題でした。いわく、「利便向上を止められないのは文明の法則だろう。著作権侵害や子供たちの学びへの影響など懸念は無尽蔵にある。」AIの持つ情報量並みに無尽蔵な懸念を一つ一つ丁寧に解決していかねばなりません。
 AIは膨大な情報量を持ち、その中から所定の情報を取り出してくる

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エッセイ『当たり前になっていくのが恐ろしい』

エッセイ『当たり前になっていくのが恐ろしい』

令和4年10月25日

 毎日新聞を眺めておりますと、あ、これは「毎日新聞」を眺めているという意味ではなく「毎日、新聞」を眺めているという意味です。
「I read Mainichi-Shimbun」ではなく「I everyday read newspaper」です。※「a」とか「the」とかの付け方はわからないので間違っていたら謝るしかない。なら、最初から「毎日、新聞を」と書き出せばそれで済む話

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エッセイ『ところでゴリラは見ましたか』

エッセイ『ところでゴリラは見ましたか』

 ザ・イエローモンキーに「見てないようで見てる」という曲がありますが、逆に見ているつもりで見えていないこともあります。

 昨日の毎日新聞2面のコラム「火論」に大治朋子さんが書いていました。アメリカで1999年に発表された「選択的注意」なる実験では、黒色と白色のシャツを着た人々がボールをパスし合う動画を作り、被験者に「白いシャツの人は何回パスをするでしょうか?」と質問したうえで、その動画を見せます

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エッセイ『セーラー服のおっさん』

エッセイ『セーラー服のおっさん』

令和4年10月7日

 本日の朝日新聞に『「不健全」の理屈』という特集記事があり、とても面白かったです。コロナ対策の給付金をめぐる裁判で、国が性風俗業について「本質的に不健全」と主張したことを受けた特集記事なんですが、この記事のなかのミッツ・マングローブさんの文章がよかった。

 ドラァグクイーンやスナックママを経て、テレビなどで活躍されているミッツ・マングローブさんは、性風俗産業に対して国が「不

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8月17日の新聞1面のコラムたち

8月17日の新聞1面のコラムたち

 「変化球がくると読み、直球がきて見逃し三振に倒れても、根拠があれば選手を責めることはない」ノムさんこと野村克也さんの言葉です。読売新聞『編集手帳』で知りました。そんなことを言いながら、チャンスで凡退したらネチネチネチネチ文句を言ってそうですが。

 気象庁が6月に開始した線状降水帯の半日前予測は、なかなか的中が難しいようで、東北に発生した線状降水帯は発表できませんでした。7月に2回出た九州の発生

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家康になりたくてもなれないワケ

家康になりたくてもなれないワケ

 読売新聞『編集手帳』によると、徳川家康は30歳の頃、武田信玄に大敗を喫しました。籠城を勧める家臣の声に耳を貸さず、決戦に打って出たのですが、結果は敗北。城に帰った家康は、敗軍の将の顔を描かせ、慢心の戒めにしたといわれています。異説の研究も進んでいるそうですが、どうせ働くならこの説の家康みたいな上司のもとで働きたいですよね。一般的な、私が近くでよく見かける上司は、まず、敗北の責任を負おうとしません

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8月13日の新聞1面のコラムたち

8月13日の新聞1面のコラムたち

 読売新聞『編集手帳』によると、うまくいっているときに邪魔をするという意味の「水を差す」は「お湯や料理に水を注いで、ぬるくしたり味を薄めたり」して台無しにされることから来ているそうです。「一説によれば」と書いてあるので他にも説はあるのだと思いますが、この水を注いだ人にもおそらく悪気は無いのでしょう。むしろ、よかれと思ってやったのではないでしょうか。「悪気はなかった」というのは免罪符にはならないので

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8月12日の新聞1面のコラムたち

8月12日の新聞1面のコラムたち

 読売新聞『編集手帳』で「黙れ事件」なるものを知りました。日本が戦時体制に向かっていた1938年のこと。政府による人的・物的資源の統制を可能にする国家総動員法案の衆院での審議中、長広舌をふるっていた陸軍の説明員がヤジを飛ばした議員を「黙れ」と一喝した事件。どなられたのは陸軍出身でありながら軍の政治介入に批判的だった宮脇長吉でした。軍による議会軽視の象徴として歴史に残る事件です。軍によるものではない

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8月11日の新聞1面のコラムたち

8月11日の新聞1面のコラムたち

 読売新聞『編集手帳』が甲子園の応援席で掲げられたタオルに記された言葉に注目していました。「勝ち登れ」。「勝ち上がれ」ではありません。「勝ち登る」という言葉はありませんが、特別な思いの込められた造語なのです。今年の夏に急逝した愛工大名電3年生野球部員、瀬戸勝登さんの名前にちなんでいるそうです。こういう事情を知らなければ「勝ち登れなんていう言葉はない。勝手に言葉を作るんじゃない」などという批判をして

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こんな時代って、いきなり来るんだ

こんな時代って、いきなり来るんだ

 昨日の京都新聞の文化面に作家の星野博美さんの言葉が載っていました。星野さんは執筆中に新型コロナウイルス感染が拡大して、国家が個人の自由を制約する「空気」を実感しました。特定の営みに「不要不急」のレッテルを貼る風潮が、戦争に資する「時局産業」以外を切り捨てた戦時中と重なりました。

「自分の権利があからさまに侵害される、こんな時代って、いきなり来るんだと驚いた」

 私の父親はコロナ禍になる少し前

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オリビアを聴きながら8月7日の読売新聞『編集手帳』

オリビアを聴きながら8月7日の読売新聞『編集手帳』

 涌井慎です。趣味は新聞1面のコラムを読むことです。読売新聞『編集手帳』には奈良時代の歌人大伴家持が詠んだ和歌が紹介されていました。

石麻呂に我物申す夏痩せに良しというものそ鰻捕り食せ

 夏バテ気味の石麻呂ちゃんにウナギでも食べなよと勧めています。夏の土用にウナギを食べようとキャンペーンを打ったのは平賀源内だという説があり、本来は冬が旬のウナギが夏にも売れるように仕向けた、というようなエピソー

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