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【知らないと損?】行動経済学まとめ。経済学との違い、実験例(プロスペクト理論、損失回避など)
今回ご紹介するのは”行動経済学”です。
2025/1更新
※プロモーションを含みます※
※感応度逓減性について説明が間違っていたので修正しました。
>髙澤様ご指摘ありがとうございます。
みなさん”行動経済学”という学問をご存じでしょうか。近年ノーベル経済学賞を受賞して注目を浴びており、営業やマーケティングで顧客理解のために活用されています。研究を牽引しているのはダニエル・カーネマンやリチャード・セイラーらです。
代表的な書籍はこちら。
顧客の購買行動を理解するうえで覚えておいたほうが良い、(むしろ知らないと損をする)学問でもあり、また、心理学という意味では対人関係に直結することもあり全ての人が知っておいたほうが良いかもしれません。
人がその時その時の感情や気分で動いてしまうことの裏に潜む学問をしっかり学ぶことでいっそう深い営業活動、マーケティングを展開できることは間違いないと思います。
1.まとめ
行動経済学は、行動経済学=経済学×心理学
※従来の経済学に心理学(行動心理、認知心理、等)を掛け合わせて人々の経済行動を研究している。
行動経済学の理論は”プロスペクト理論”が代表例であり、①損失回避②参照点依存性③感応度逓減性を柱としている。
実験例は多々あり、その内代表的なものだけ後述します。
2.行動経済学とは?経済学との違い
はじめに行動経済学と経済学は、以下の関係で表すことができます。
行動経済学=経済学×心理学
つまり従来の経済学という学問に心理学(行動心理、認知心理、等)を掛け合わせて人々の経済行動を研究しているのが行動経済学となり、経済学との違いは明確にあります。
経済学は、人々はいかなる状況下でも自身の利益最大化のために行動する(=合理的選択理論)と仮定して研究されてきました。しかし、実際の人の行動は合理的と言えるのでしょうか。
・期待値が低いギャンブルに手を出してしまう人
・いつもは一番安い食材なのに、ボーナス後には奮発してしまう人
・本当は買うつもりがなかった商品なのに、つい買ってしまう人
これらの人の心理や感情にも目を向けることで行動経済学の理論は生まれました。この理論のいくつかは、企業のマーケターや販促、営業からすると当たり前のように感じるものも少なからずあります。しかし、重要なのは体系的にまとめられた”学問”として身に付けることでより汎用的に活用できるのでぜひ理解してみるのが良いと思います。
3.行動経済学の理論一覧
行動経済学の理論は”プロスペクト理論”を覚えておくことが一番大事かと思います。この理論で、多くのものは説明できると個人的には考えています。プロスペクト理論は①損失回避②参照点依存性③感応度逓減性を柱としており、以下の図でまとめて示すことができます。
※修正しました。
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①損失回避:人は利益を得ることよりも、損失を受けることの回避を優先する。☆損失回避が最も有名かもしれません☆
同じ金額について「利益A1を得る」「損失A2を受ける」の感情の大きさをそれぞれα1、α2とします。このとき、図中の曲線では「感情の大きさはα2>α1ということが分かります。
⇒同じ100万円でも「受け取ったときの喜び」と「失ったときの悲しみ」はどちらが心を動かされるかというと「悲しみ」ですよね。
②参照点依存性:人の感情や判断基準は個人のもつ参照点(時点、比較対象、等)によって変わる。
人はある事実をそのままで受け取らず、何かとの差や比較により判断基準や感情が変わることがある。図中では赤い●点が各人の参照点です。
⇒テストで同じ70点を取ったとしても「平均点80点の試験」と「平均点20点の試験」の結果では喜び方が変わりますよね。
③感応度逓減性:人の感情は与えられるインパクトが大きすぎたり、慣れが生じると感覚が鈍る。
【説明修正しました】「利益A1を得る」「利益A3を受ける」ときの感情の大きさをα1、α3とするともちろんα3>α1です。しかしこのとき、図中からは「同じA1の利益を得ていても、利益A1からさらに利益A1もらうとき(A3)の感情の差分(α3ーα1)はα1より小さいことが分かります。
⇒同じ100万円でも「何ももらっていない状態から受け取る100万円の喜び」と「既に100万円もらっているときにさらに得る100万円の喜び」は前者のほうが大きいということです。これは②の参照点依存性も関係しており、”すでに100万円もらった”ことに参照点が移り、慣れが生じてしまうのではないでしょうか。
※書籍やWEBで行動経済学の理論一覧に、経済学とは関係ない単なる心理学の理論が掲載されていることがあります。通常時は問題なくても、有識者と話すときは混合しないほうが良いかと思います。
4.実験例の解説
行動経済学にももちろん理論を裏付ける実験例があります。理論と紐づけていくつかご説明します。
(1)期待値は同じでも、選択されるのはどちら?
A:無条件で10万円もらえる
B:50%の確率で20万円もらえるが50%の確率で何ももらえない
期待値は10万円で同じであるため、経済学的には選択肢に差はありません。しかし、プロスペクト理論における損失回避、参照点依存性の心理が人間にはあります。
Aを選べば手元に10万円が確実にもらえる(参照点)。そこからBの選択肢「50%でさらに10万円もらうことと、50%で10万円を失うこと」を考えます。このとき10万を「得ることの喜び」よりも「失うことの損失感」を避けるため(損失回避)にAの選択肢を選ぶ人のほうが多いとのこと。
(2)人はモノやコトに愛着を持つ生き物
A組:(柄付きコップを渡される。)何円でコップを売りますか?
B組:柄付きコップに対して何円で買いたいと思いますか?
同じ柄付きコップに対して、A組はB組よりも数倍程度の値打ちをつけないと手放そうとしませんでした。これは保有効果というもので、人は一度ものを所有すると愛着をもつ傾向があるとわかっています。※一方で、コップを失うことの痛みがコップを得ることの数倍にのぼる(損失回避)ために対価を求めたのだとも考えられます。
5.まとめ
行動経済学は、行動経済学=経済学×心理学
※従来の経済学に心理学(行動心理、認知心理、等)を掛け合わせて人々の経済行動を研究している。
行動経済学の理論は”プロスペクト理論”が代表例であり、①損失回避②参照点依存性③感応度逓減性を柱としている。
他にも保有効果、ヒューリスティックス、等様々な理論があり、それらの中にはプロスペクト理論で説明できるものもある。
内容は以上です。簡単にでしたが行動経済学についていかがだったでしょうか。他にも多くの理論がありますが、まずは代表的なプロスペクト理論、損失回避などに焦点をあてました。今回はここで筆を休めることとし、次回また他の行動経済学の理論、実験例についても触れたいと思います。行動経済学の書籍も多くあるのそちらもまとめてみます。
行動経済学でせめてこれは知らないとマズイかなと思う書籍です。
関連記事はこちら。記事の中で行動経済学の書籍の紹介もありました
以上です。