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『その数字目標が、人の命、人の人生にとってどれだけの価値があるのか』 (「ノルマは逆効果」より ①)

藤田勝利さんの著書、「ノルマは逆効果」。

この本を通して藤田さんが訴えたいのは、以下の2点だろうと私は受け止めています。

▼ ノルマが組織と人にどれだけの悪影響を与えるか、そしてその怖さ。
▼ 必要なのは「管理」では無く、本当の「マネジメント」。

特に「マネジメント」(マネジメントの原理原則)については、ドラッカースクールで学んだ経験を持つ藤田さんならではの渾身の解説が、この本最大の価値になっているように感じます。

実際に、私の心に響いた言葉が沢山ありましたので、シリーズでいくつかご紹介をしていきたいと思います。


まずは第1章、『「自分ごと」になっていない目標は全てノルマ』からの言葉です。

 “その数字目標が、人の命、人の人生にとってどれだけの価値があるのでしょうか。”(p16)

この問いは、是非とも、全てのマネージャー、全ての経営者に深く考え直して欲しい問いだと思います。

その数字目標は、人がその命を使ってまで達成を目指さなければならない目標なのでしょうか

そしてその目標を達成した先には、いったい何が(社員にとってどんなメリットが)待っているのでしょうか。

それを語らずして、数字を一方的に「やれ」と言うのは、暴挙に近いのではないかとすら思います。

藤田さんはこう続けます。

  “会社のために人があるのではなく、人と社会の幸福のために会社はあるはずです。” (p16)

数字至上主義の企業においては、人はどうしても数字をやるための手段や道具として位置づけられてしまいます。

でも人は機械ではありません。人が人として生きていくには、やはり幸せの追求がその軸にあってしかるべきですし、それが人のもつ権利だと思います。その権利を会社が奪ってはいけません。

企業の存在意義については、様々な議論があります。

日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズを書かれている坂本光司さん(人を大切にする経営学会会長)は、その著書で以下のように述べています。

 ”企業の真の目的・使命は何なのか。それは「企業に関係するすべての人々の永遠の幸せの追求、実現」である。
(「人を大切にする経営学講義」 より)

そして、「日本でいちばん大切にしたい会社」で紹介され、一躍有名となった伊那食品工業。

伊那食品工業の会長である塚越寛さんは、著書『リストラなしの「年輪経営」』で、こう述べています。

 ”経営にとって 「 本来あるべき姿 」 とは、 社員が幸せになるような会社をつくり、それを通じて社会に貢献する 」 ことです。売上げも利益も、それを実現するための手段に過ぎません。”

塚越さんの経営スタイルは、木の年輪のように少しずつではあるものの前年より確実に成長していくことを目指しており、「年輪経営」と名付けられています。

そこには、人の成長以上に会社を無理に成長させることはしないという塚越さんの思いが込められているものと思います。

実は「ノルマは逆効果」の第1章の最後にも、この『年輪』の言葉が出てきます。

「『持続的成長』とは、どのような局面でも、1年1年着実に『年輪』を刻んでいくことです。(中略)誰も経験したことがない道の世界で成長し続けるためには、人材育成と同じスピードで年輪を重ねていく、身の丈を超えた無理な拡大は絶対にしないという『覚悟』が必要だと思っております。」(p32)

これは、トヨタ自動車の決算説明会で、豊田章男社長が述べられた言葉として紹介をされています。

豊田社長は、自ら伊那食品工業へ直接訪問し、塚越会長からその経営姿勢を学んでいるという話を耳にしたことがあります。そんな背景から、このメッセージが飛び出したものではと思います。

日本を代表とする大企業、そしてカイゼンで有名なあのトヨタが、その価値観を変え、人を(人の幸せを)中心とした経営へと進化しようとしています。

それは今まさに、全ての会社が、数字至上主義を捨て、人と社会を幸せにするという本来の目的に立ち返り、変わらなければ生き残れない時代になったんだよという、豊田社長の世の中へのメッセージなのだと思います。

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