今回は、最高のサービス業を具現化しているサービス業として、帝国ホテルのサービス業を取り上げてみたいと思う。アマゾンでは、もう新品は手に入らないようなので、積ん読が成功したようである。
まず、これだけの伝統と権威を誇る会社(帝国ホテル)が、仕事のやり方をよくもここまで開陳してくれたなあと思いました。ここまでの、組織力を誇る会社で働いたことはなくて、それも勉強になりました。大企業の組織も、基本的には、顧客満足のためにあるのであって、加えて、業務を効率化するための組織でもあるわけです。帝国ホテルの仕事の本質は「徹底的な客観視」にあると推察しました。こういう原理で動くと面白いだろうなあという組織はありますが、たいていの会社は、最前線で働いている人の資質とか教養に依存するところが大きいのも、間違いないと思います。ここまでやる帝国ホテルのノウハウの蓄積も、世間のために役立ってほしいという思いから、書籍化してくれたんだろうと思います。徹底した客観視とメモによるマニュアルのブラッシュアップが帝国ホテルの仕事なんだろうと思っています。ここまでやられると、他のホテルは、二流の烙印を押されても仕方がないと思います。利用者としては、とりあえず宿泊できれば、払った対価に対する最低限のサービスの提供となるわけで、一般の会社で、ここまでやるのは、ヤリスギになる可能性もあります。従業員は、配当収入も、もらえず、「休みも多くて、給料も高くて、勉強もさせてもらえる」というのが、唯一の望みであり、株主やオーナー経営者は、従業員に要求しすぎても、かわいそうだという気持ちにもなる本でした。株式も持ってるオーナー経営者側からの給料で働く従業員へのサービスというサービスという考え方もあってもいいですよね。「帝国ホテルで働いていました」と履歴書に書けることが、唯一の従業員にあげられる勲章だとしたら、ホテルごとに、サービス内容には、違いがあって、企業特殊的な能力が身についただけで、他のホテルでは使いづらい人材という評価を受ける可能性もありますよね。
また、サービス利用者側に立つと、あくまで、一般のお客さんは、中等の品質のものを要求しているのであって、一般の人が行くお店でやると、ヤリスギになっちゃって、気楽に入っていけるお店として、通っているのであって、そういうのが無くなってしまって、逆にサービスがグレードダウンする可能性もありますよね。
また、アルバイトでやってる者に、そこまで要求するかという、私の経験もありました。それは、社員の仕事だと思った経験が思い出されました。その会社は、アルバイトが明らかに、時間を消費して、時間外で働いている労働にも、お金を払わせないで、ただ働きさせる会社でした。
本書も、なんか働いている人がかわいそうになるような本でした。笑っているのは、配当収入がもらえる原始株主だけだと思ったりもしました。しかし、現在では、帝国ホテルも、外資系ホテルの進出や大衆化に失敗し、経営が危ういのではないかと思いました。また、大衆化で、逆に仕事が無くなり、つぶれてしまう可能性もあるのではないかと思うのですが、その路線では、明らかに売上が落ちていたのでしょう。時代の進化を表現されて、つぶされてしまう可能性もあります。
しかし、接客で、こんな細かいところまで、思慮を凝らすか、という気持ちを持てたのは、新発見でした。
こういう風にやるのが無理な仕事も世間にはありますよね。
帝国ホテルみたいな、上流階級の人が利用するサービスをバカバカしいと考える人もいると思いますが、私も、本書を読んで、その1人となりました。
とにかく本書を読んで、サラリーマンとして、会社勤め、組織づとめをする人として、生きていくための視点が変わったのは事実である。この本が言っていることは、結構深いと思いました。本書は、何回も読まさせていただきました。セブンイレブンのアルバイトがやる接客を見る目が変わるなどの効果もありました。接客業で、ここまで内実を明らかにした本って、珍しいですよね。しかも、超一流の接客業ですからね。
本書は、公務員のウラとオモテの政策管理に使われたりしても面白いでしょうね。