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禅僧が語る、心を磨く掃除の作法


はじめに:年末の過ごし方

今年も残すところあと5日となりました。
2024年も早いものですね。皆様はどのようにお過ごしでしょうか。
きっと多くの方が、いつもより念入りに掃除をされているのではないでしょうか。

気持ちよく新年を迎えたい―そんな思いで、普段手の届かないところまで掃除をする方も多いと思います。

たとえば、エアコンのフィルターを外して洗ったり、カーテンを取り外して洗濯したり。
大掃除の季節ならではの光景ですよね。

サラリーマン時代の掃除の思い出

私は、お坊さんになる前はサラリーマンをしていました。
年末になると、会社でも大掃除の季節。
デスクの引き出しの中を整理したり、棚の上の書類を片付けたり。
給湯室の電気ポットを念入りに磨いたり、共有のパソコンのデータを整理したり。

家に帰れば、今度は家庭での大掃除です。
蛍光灯のカバーを外して水洗いしたり、窓ガラスをピカピカに磨いたり。
ベランダの排水溝の掃除まで、普段はなかなか手が回らない場所まで丁寧に掃除していました。

禅宗における掃除の意味

そんな掃除ですが、日本仏教のお寺、特に禅宗では特別な意味を持っています。

「一に掃除、二に看経、三に学問」

これは何を意味するのでしょうか。
修行において、まず最も大切なのが掃除。
その次にお経を読むこと(看経)、
そして勉強すること(学問)という順番なのです。

一般的に、お寺というと経を読んだり、お勤めをしたりというイメージが強いかもしれません。
でも実は、それ以上に掃除が大切にされているんです。

なぜ掃除に夢中になるのか

皆さんも、こんな経験ありませんか?

たとえば、休日の朝、「今日は掃除をしよう」と思い立って、まずは自分の部屋から始めることにしました。
本棚の整理をしていたら目の前の荷物が気になり、そちらを押し入れに。
押し入れを開けたらもう着ない服が掛けてあり、それを仕分けする。

気がつけば、予定していた以上の場所まで掃除してしまっている。
「キリがいいところまで」と思っているうちに、あっという間に時間が過ぎていく―。

掃除がもたらす心の安定

このように夢中になれるのが掃除の不思議なところです。
掃除に集中している時、私たちの心は自然と落ち着いていきます。

日常生活で感じているイライラや、将来への不安。
そういった気持ちから、自然と離れることができるんです。

これは、禅の教えにおいて非常に重要な点です。
私たちは普段、様々な思考や感情に心を奪われています。

でも、掃除という単純な動作に没頭することで、心が自然と整理されていくのです。

お寺での掃除の作法

さて、そんな大切な掃除の具体的な作法をお伝えいたします。
とはいっても、特別なことではありません。

まず、「高いところから低いところへ」という原則。
これは自然の理に適った方法です。
たとえば、壁を拭く時は上から下へと拭いていきます。
上を後から拭くと、下が再び汚れてしまいますからね。

次に「奥から手前へ」という原則。
部屋を掃除する時は、必ず奥の方から出口に向かって掃除をします。
埃を効率よく外に出すことができるためです。

要するに、当たり前のことを当たり前に行う。それだけです。

永平寺式の机の拭き方の極意

とはいえ、あまり一般的ではないこともあります。

特に印象的なのが、永平寺での机の拭き方です。
一見単純な机拭きですが、実は細かな決まりがあるんです。

左奥からスタートし、右の奥に向かって横一直線に拭いていきます。
そして、雑巾を雑巾の大きさ分だけずらし、今度は右から左へ。
このように、つづら折りの形で手前に進んでいくのです。
最後は机の縁を丁寧に一周拭き上げて完成です。

一度身につけると、とても効率的で、しかも隅々まできれいに拭くことができます。
今でも私は、この方法で机を拭いています。

おわりに:新年を迎える準備

年末の掃除は、決して単なる清掃ではありません。
心の整理整頓をする貴重な機会でもあるのです。

普段の生活に追われて、なかなかゆっくりと掃除をする時間が取れない方も多いと思います。

でも、年末という区切りの時期に、少しずつでも掃除をする時間を作ってみませんか?
きっと、心もすっきりとした状態で新年を迎えることができるはずです。

また、人生における悩みや疑問をお持ちの方は、いつでもダイレクトメッセージにてご連絡ください。
みなさまの心の「掃除」のお手伝いができれば幸いです。

蓮城院副住職のコウブンでした。

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