お菓子とビール
夜中。ざあざあと雨が降っている音が心地よかった。
もうさっきほどの雨音は聞こえなくなり、明日は晴れるのだろう。
春の雨。私は寝ずに、でも眠れないことに少し焦りながらそれを忘れるためにも黙々といま読んでいる本を読むことに集中していた。
サムセット・モームを知ったのはつい最近、なんとなく本屋で手に取った小説がとてもとても好きだったことから他の作品にも興味を持って、いま読み進めている。
お菓子とビール。
人それぞれ好む作家は異なるようで、読みやすい文章も異なる。
だから私は人から勧められた本をそのまま読むことはできないし、人に何か勧めて欲しいと言われても、安易に自分が面白かった本を進めることを躊躇する。自分が好きだと思った作家の全ての作品が好きと思えるかというとそうでもなく、本当に感覚でしかなく、それ以上はその作家に対する好奇心、その人を知りたいという欲求からくる探求がなせるものだと思う。
私はこの人が書いた小説を面白いと思った。
そう思う理由は、きっと私が現実に人に会って接して抱く感情と変わらないものなのかもしれないと思った。言葉では言い表せすことが難しいような、雰囲気や会話したときの感覚、明確に表現することもできるものだけれど、表現する以前に感じてしまう相性のようなもの。そに人が何を考えて生きてきて、何を重視して生きているのか、といっただいたいの当て推量のようなもの。
私はこの人と相性がいい。そう思える人に出会えることはそんなにないように、この作家の書いた小説が好きだ。と思えることもそんなにない。
その中で、私はモームが書いた小説を好きだと言えることに満足した。