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自分の言葉に責任を持って行動できていますか?(『詩経』正月篇)

今回取り上げるのは『詩経』正月篇からの言葉。

具に予れを聖なりと曰うも、誰れか烏の雌雄を知らんや
(読み:トモにワれをセイなりとイうも、タれかカラスのシユウをシらんや)

『詩経』正月篇

人々は皆、「自分は優れている」「自分は行いは正しい」などと言っているが、誰がカラスのオスとメスを区別することができるだろうか、という意味。

カラスを見てオスメスを判別することができる方はいらっしゃいますか?

少なくとも私はできません。

仮にカラスと意思疎通ができて、「ボクはオスだよ」と教えてくれたとしても、私にはそれが本当かどうか見分けがつかないと思います。

どのカラスも(私にとっては)見かけ上は同じカラスに見えるからです。

それと同じように、自分でいかに優れていると言っていても、他人からはその真実を確かめることはできません。

つまり、口先の発言だけでは他人の信用を得ることはできない、ということですね。


立派なことを言うのは簡単です。

「〇〇やってました!」
「〇〇の専門家です」
「〇〇の実績あり」

発言するのは自由ですし、実際に自信と経験を持っているのかもしれません。

しかし、発言には責任が伴います。

責任を持って行動し、周囲の方からの期待値を超えることができなければ、かえって信頼を失ってしまうでしょう。

自身の発言を信じてもらうためには行動し続けるしかありません。

孔子も以下のように発言しています。

吾人に於けるや、その言を聴きてその行を観る
(読み:ワレヒトにオけるや、そのゲンをキきてそのコウをミる)

『論語』公冶長篇

私は他人に対して、その言葉をよく聞いて、その通りに行動するかきちんと見ているのだ、という意味。

孔子の弟子で発言だけは立派な方がいたのですが、ある日、その弟子がサボっているところを孔子に見つかってしまいます。

激怒した孔子は「もう口先だけの言葉は信じない。発言を聞いたら、実際にその通りに行動するかよく観察する」と言ったわけです。


それもあってか、孔子は発言することよりも、行動することを重視していました。

事に敏にして言に慎む
(読み:コトにビンにしてゲンにツツシむ)

『論語』学而篇

為すべきことは速やかに実行して、発言する言葉は慎重に選ぶ、という意味。

君子は言に訥にして、行いに敏ならんことを欲す
(読み:クンシはゲンにトツにして、オコナいにビンならんことをホッす)

『論語』里仁篇

立派な人は発言するのは苦手であっても、行動することは素早くありたいと願う、という意味。

どちらも孔子が大事にしていた考え方です。


私も「古典・歴史愛好家」を名乗る以上、皆様により良い古典・歴史の知恵をお届けできるように気を引き締めて執筆しています。

専門家と名乗るのは気が引けるので「愛好家」なのですが、それでも肩書きをつける以上はそれに見合った行動をしたいです。

「凪平さんの記事なら信頼できる」

そのように思っていただけるようにするには、日々真剣にかつ誠実に発信を書き続けていくしかないと思っています。

必ず原文と書き下し文は確認しますし、研究者によって意味の解釈が複数ある箇所は、前後の文脈も意識して自分の中で納得できる方を選ぶようにしています。

とはいえ、それで意味が分かりにくい・ハードルの高い記事になってしまうのは避けたいところ。

私は古典と歴史に興味を持つ機会を提供したいと考えているので、できるだけ原文に近い内容で、かつ皆様にとって分かりやすい内容になるように意識して記事を書いています。

1つ1つのnoteにはどうしてもある程度は時間がかかってしまうので、仕事を終えてからnoteを書くのは大変なことも多いです。

ですが、それが「古典・歴史愛好家」を名乗った自分との約束だと思っています。

皆様にお届けする記事が、少しでも分かりやすい記事になっていたら嬉しいです。

日々の小さな行動を積み重ねて、自分の肩書きに恥じない人物になれるよう、これからも努力を続けていこうと思います。

具に予れを聖なりと曰うも、誰れか烏の雌雄を知らんや
(読み:トモにワれをセイなりとイうも、タれかカラスのシユウをシらんや)

『詩経』正月篇

口先の発言だけでは他人の信用を得ることはできない、という言葉をご紹介しました。

人々からの信用を得るためには、発言に見合った行動をしなければなりません。

忙しい毎日の中で時間を作って行動するのはなかなか大変なのですが、まずは小さなところから行動を始めていくのはいかがでしょうか?


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凪平コウ@古典・歴史愛好家
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