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荘子

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『荘子』に関する記事をまとめています。
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記事一覧

ツールが発達した今だからこそ試される私たちの良識(『荘子』天地篇)

今回取り上げるのは『荘子』天地篇からの言葉。 便利な道具があると、必ずそれを使って作業しようとする。 しかし、便利な道具ばかりを使って作業していると、余計な考えを抱くようになる、という意味。 つまり、便利な道具に頼ってばかりいると、それらに振り回されて、本来の人としての純粋さを失ってしまう、ということですね。 「機心」は「小賢しい企み」といった意味ですが、ここではもう少しマイルドに訳してみました。 荘子は、今回の言葉を以下のようなエピソードを用いて語っています。 簡

期待を背負ったときこそ、自然体でいることを意識する(『荘子』達生篇)

今回取り上げるのは『荘子』達生篇からの言葉。 稷が走らせている馬は、(力を使い果たしているので)おそらく死んでしまうだろう、という意味。 つまり、限界を超えて無理をしたりせず、いつでも自然体で取り組みなさい、ということですね。 今回の言葉をよく理解するために、『荘子』のエピソードをご紹介しましょう。 むかしむかし、あるところに東野稷(とうやしょく)という乗馬の名人がいました。 彼は自慢の乗馬技術を披露しようと、衛国の君主である荘公に会いに行きます。 お目通りが叶う

健康管理の秘訣は、自分の状態を把握して不足分を補うこと(『荘子』達生篇)

今回取り上げるのは『荘子』達生篇からの言葉。 よく養生するということは、さながら羊を養うようなものである、という意味。 羊を養うとは、いわゆる羊飼いのことです。 「養生」の意味も改めて確認してみましょう。 今回は、前者の「衛生をまもり健康の増進に心がけること」の意味となります。 要するに、健康に生きるためには羊飼いを参考にしなさい、ということですが、これは一体どういう意味でしょうか? 荘子は、羊飼いについて以下のように述べています。 群れから遅れた羊を見つけたら

退職や転職などの大きな決断は、心が落ち着いているときに行おう(『荘子』徳充符篇)

今回取り上げるのは『荘子』徳充符篇からの言葉。 静かな心を持つことで、世界の真の姿を把握することができる、という意味。 つまり、物事の本質を見抜くには、まずは自分の心を落ち着かせなければならないということですね。 私は、人の心には一枚のフィルターがあると思っています。 自分の心の状態に応じて姿を変え、私たちの見るものに影響を与える、そんなフィルターです。 例えば、日常のありふれた風景を見た場合。 自分の心がポジティブなときは世界も明るく見えますが、心が疲れていると

情報に溢れる今だからこそ、落ち着いて物事を見つめることが大事(『荘子』徳充符篇)

今回取り上げるのは『荘子』徳充符篇からの言葉。 静かな心を持つことで、世間の真の姿を捉えることができる、という意味。 「衆止」とは、世間にある色々なものの定まった姿のこと。 つまり、物事の真偽を判断するには、何よりも落ち着いて物事を見つめることが大事、ということですね。 今年は世界各国・地域で重要な選挙が行われる選挙イヤーです。 先日は台湾で総統選挙が行われましたが、来月以降もあちこちで選挙があります。 2月:インドネシア大統領選挙 3月:ロシア大統領選挙 4

不安が尽きない人は、心を鏡のようにして「今、ここ」に集中しよう(『荘子』應帝王篇)

今回取り上げるのは『荘子』應帝王篇からの言葉。 過去を追いかけたり、未来のことで気苦労したりせず、淡々と対応はするものの、心に留めたりはしない、という意味。 マインドフルネスのお話ですね。 つまり、過去のことをいつまでも悔やんだり、将来のことでソワソワ心配したりせず、目の前の今に適切に対応しなさい。ただし、終わったらいつまでも悩んだりせず、そっと消え去るままにしなさい、ということですね。 荘子は、過ぎ去ったことでいつまでも悩んだり、まだ来てもいない将来のことで不安にな

相手の見た目ではなく、行動を見て判断できる大人になりたい(『荘子』列御寇篇)

今回取り上げるのは『荘子』列御寇篇からの言葉。 人の心は山や川が織りなす大自然よりも険しく、その心を理解するのは広大な天のことを理解するよりも難しい、という意味。 つまり、人の心は複雑怪奇なので、外から見ただけで理解するのは難しい、ということですね。 天には春夏秋冬や朝昼晩といった一定の周期やルールがあり、外から見た様子と実体が一致しています。 しかし、人はむしろ表情を偽って本心を隠しがちです。 『荘子』は次のような例を挙げています。 一見真面目そうなのに、実はプ

定期的な振り返りがより良い人生を形作る(『荘子』則陽篇)

今回取り上げるのは『荘子』則陽篇からの言葉。 60歳になるまでに思想や考え方が60回変化した、という意味。 衛という国にいた蘧伯玉(きょはくぎょく)という賢人が60歳になったとき、過去59年間を振り返って自分を見つめ直したという話からきています。 この賢人は1年ごとに過去の自分を振り返り、良いところは伸ばして、間違っているところは改めていったわけですね。 それを60年間繰り返した結果、周囲から賢人と呼ばれるほどの人物になったのです。 つまり、1年ごとに我が身を振り返

唯一絶対の正解なんてないのだから、自分に合った方法を試してみよう(『荘子』天運篇)

今回取り上げるのは『荘子』天運篇からの言葉。 水の上を行くには舟を用いるのが一番良い、という意味。 逆に、陸の上を行くのであれば車や電車が良いでしょうし、空を行くのであれば飛行機が一番良いはずです。 つまり、物事にはそれぞれに適した方法がある、ということですね。 ここ数年で、 「〇〇すべきだ」 「みんな〇〇してる」 「〇〇しないなんて損してる」 といった刺激的な言葉を目にすることが増えました。 人間はメリットを得ることよりも、損をしないことを優先しがちな生き物な

周りのことなんか気にせずに、思うままに行動してみよう(『荘子』大宗師篇)

今回取り上げるのは『荘子』大宗師篇からの言葉。 直訳的には、時期を失うのは賢者のすることではない、という意味。 一見これは「時がきたら逃さずに行動せよ」という意味に見えますが、実際はむしろ逆です。 つまり、タイミングを見計らって一喜一憂するのは賢者のすることではない、外部の要因は気にせずに、自分の思うままに行動せよ、ということですね。 この箇所は「真人(しんじん)」についての話題となっています。 「真人」とは道を極めたすごい人のことです。 いわゆる仙人みたいな人を

大自然に比べれば大したことない、そう思えたら勝ち。(『荘子』齊物篇)

今回取り上げるのは『荘子』齊物篇からの言葉。 人間はその時々の心の持ちようによって、日々他人や内なる自分と闘っている、という意味。 私たちは人と関わる際、いろいろなことを考えます。 「なんて声をかけたらいいかな?」 「あの話をしたら喜んでくれるかな?」 「もしかして嫌な気持ちになってないかな?」 大なり小なり、こういった不安や打算、欲望などを感じながらコミュニケーションを取っているものです。 また、これは自分との対話でも同じです。 一人でいるときや夜寝る前、もしく

あなたの夢や目標は誰にも否定できない(『荘子』逍遥遊篇)

今回取り上げるのは『荘子』逍遥遊篇からの言葉。 千里先に行こうとする者は、三ヶ月前から食料の準備を行う、という意味。 一見すると単に事前準備の大切さを説いているようにも見えますが、実は違います。 これは志の高さについて語っているのです。 荘子は次のような例え話をします。 大鵬(中国における伝説上の鳥)が大空を飛ぶために羽ばたく気持ちは、小さい鳥には理解できないものだ。 例えば、どこかに出かける場合を考えてみよう。 その人がどこか近場に行くだけならば、特に準備しな

日々の成長が感じられなくても焦ってはいけないよ(『荘子』齊物篇)

今回取り上げるのは『荘子』齊物篇からの言葉。 ニワトリの卵を見て、その卵に時を告げることを求める、と言う意味。 ニワトリであれば時を告げることはできますが、卵のままでは不可能です。 つまり、焦ってせっかちになりすぎることの例えですね。 仕事をしたり家事をしたりしていると、あっという間に一日が過ぎていきます。 空いた時間に何かやろうと思っても、あまり時間が取れずに終わってしまうことも多いです。 そのため、日々の成長が感じられず、このまま続けていても良いのかと不安にな

問題解決の糸口は、心と視野を広く持つこと(『荘子』庚桑楚篇)

今回取り上げるのは『荘子』庚桑楚篇からの言葉。 この世界を一つの籠とするならば、もはや雀に逃げる場所はない、という意味。 つまり、心と視野を広く持てば思考が柔軟になり、世の中のあらゆることに手が届くようになる、ということです。 物事を成し遂げる方法は一つだけではありません。 例えば、手取りのお給料を月5万円ほど増やしたいと思った場合、 昇給を目指す 副業を始めてみる メルカリで不用品を売る ポイ活でコツコツお金を稼ぐ などなど、達成する方法は色々と考えられま