不安が尽きない人は、心を鏡のようにして「今、ここ」に集中しよう(『荘子』應帝王篇)
今回取り上げるのは『荘子』應帝王篇からの言葉。
過去を追いかけたり、未来のことで気苦労したりせず、淡々と対応はするものの、心に留めたりはしない、という意味。
マインドフルネスのお話ですね。
つまり、過去のことをいつまでも悔やんだり、将来のことでソワソワ心配したりせず、目の前の今に適切に対応しなさい。ただし、終わったらいつまでも悩んだりせず、そっと消え去るままにしなさい、ということですね。
荘子は、過ぎ去ったことでいつまでも悩んだり、まだ来てもいない将来のことで不安になったりして心を乱すのは、とても無駄なことだと言っています。
大事なのは、「今、ここ」に集中すること。
過去も未来も気にせず、ただただ目の前の物事に集中して取り組む。
取り組み終わったら、その時点で過去のことになるので、それ以上は考えない。
そして、また目の前の物事に集中する。
これの繰り返し、まさにマインドフルネスです。
このような状態のことを、荘子は鏡に例えています。
立派な人物の心の状態は、まさに鏡のようなものだ、という意味。
一体どういうことでしょうか?
例えば、目の前に鏡があると想像してみてください。
そこに映っているのはあなただけ。
昔のあなたでも、未来のあなたでもなく、今この瞬間のあなただけです。
鏡は目の前のものを映し出します。
目の前にあったものが鏡の前を離れると、その姿も映らなくなります。
また、未来の姿を映し出すこともありません。
映し出すのは、ただそのときに目の前にあるものだけ。
荘子は鏡の姿に、人としての理想の心のあり方を見出したのです。
私たちは悩む生き物です。
アメリカ国立科学財団の研究によると、人間の脳は一日の間に約1~6万回もの思考を行っています。
しかも、そのほとんどがネガティブなものだそうです。
これほど悩んでいる私たちですが、悩みには、悩んで解決するものと解決しないものがあります。
過去のことは変えられませんし、未来のことは完全に予想することは不可能です。
ベトナムの禅僧であり、学者、詩人でもあるティク・ナット・ハンは以下のように語っています。
私たちにできることは、目の前のことに集中して、一歩ずつ未来への歩みを進めていくことだけなのです。
心を鏡のようにして、ただ目の前のことにだけ集中しましょう。
そして、今この瞬間の一つ一つを全力で楽しみましょう。
その積み重ねがマインドフルネスなのです。
過去を追いかけたり、未来のことで気苦労したりせず、淡々と対応はするものの、心に留めたりはしない、という言葉をご紹介しました。
ポイントは、心を鏡のようにすることです。
「今、ここ」にある問題だけを映し出すようにしましょう。
また、過去に囚われたり、未来のことで不安に悩まされたりしている人は、マインドフルネスの概念を試してみるのがおすすめです。
『荘子』にはマインドフルネス関連の言葉も豊富に掲載されています。
以下の記事でも取り上げましたね。
その他の古典では、『菜根譚』も参考になると思います。
儒教・道教・仏教の3つの思想を取り入れている名著です。
以下の記事で詳しくご紹介しているので、よろしければご覧ください。
記事内でもご紹介しているのですが、精神科医のラス・ハリスさんのイメージトレーニング法は特に参考になるかと思います。
これらの記事が、皆様の心労を和らげる手助けになれば幸いです。
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