和歌・忘れたいのに
「忘れ草垣もしみみに植ゑたれど醜(しこ)の醜草なほ恋ひにけり」
万葉集巻12・3062 よみ人しらず
愛しい人を忘れられるという
「忘れ草」を垣根にびっしりと植えた。
あの人を忘れたい一心で、
藁にもすがる思いで。
それなのに、この役に立たずのダメな草め。
わたしはまだ
あの人に恋しているじゃないか。
いつまでも未練が消えてなくならない。
わたしはどうすればあの人を忘れられる?
もう、途方に暮れてしまったよ…。
*
この「忘れ草」とは、
カンゾウのことを指します。
忘れたくても、忘れられない。
それこそが恋の魔力なのですね。
作者はそのもどかしさに憤りを感じ、
忘れ草に八つ当たりをしています。
自分の力ではどうにもならないのが、恋。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?