Kei

鹿児島で国語科の教員をやってるおっさんです。「高校生と古典」をテーマに、あるべき授業の形や伝えるべきことを模索してます。思いつきの言語化の場としてnoteを利用中。

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鹿児島で国語科の教員をやってるおっさんです。「高校生と古典」をテーマに、あるべき授業の形や伝えるべきことを模索してます。思いつきの言語化の場としてnoteを利用中。

マガジン

  • 短歌と和歌と、時々俳句

    簡単な子育て日記と古典和歌、俳句、近現代短歌の鑑賞文を載せています。古典和歌は八代集と玉葉集、俳句は芭蕉の作品が中心です。短歌は適宜。毎週更新予定。高校生向けの図書案内に載せる文章の草案です。

  • 古典授業実践録

    中高一貫校で実施した古典の授業の実践録です。

  • 「古文入門」ガイドマガジン

    世にあまたある「古文入門」をテーマとした本について、書評を書いていきます。

  • 古今和歌集一人ゼミ

    古今和歌集を歌群ごとに講読していきます。お気づきの点がありましたらコメントを頂けると幸いです。よろしく御願いします。

  • ネタにできる古典

    古文や漢文の作品から、生徒受けが良さそうなものをピックアップしておいておきます。備忘録。

最近の記事

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古典に、参加せよ

 古典は楽しくない。  その通りです。古典を面白いと感じる人など、多数派であるわけがない。古典と呼ばれる作品の執筆者は僕らをターゲットとして書いてないし、僕らは彼ら作者たちが当然共有していると考えている常識を知らない。古典がむき出しのままそこらへんにポコンと置いてあったとして、その内容が僕らの心に刺さる訳なんてないんです。  そしてそれは、教科書に載っている作品が1000年前のものだから、というわけじゃない。1000年どころか100年前の作品だって、感情移入しながら読める

    • 【短歌と和歌と、時々俳句】28 鶴

       今日は長谷川櫂の『日めくり 四季のうた』(中公新書 2010)から2月末日の句を読みました。   去りかねてまだ二千羽の鶴残る(暉峻桐雨)  暉峻(てるおか)は本名を康隆と言います。早稲田大学で近世の文学を研究した国文学者でした。鹿児島出身の俳人でもありました。だから長谷川はこの句の鶴を「出水平野の鶴だろう。北へ帰る季節なのになごり惜しいのか帰らずにいる。その心の綾が『去りかねて』。」と評しています。出水のツル観察センターは3月の第2週まで開所しているそうですから、2月

      • ⑷「老子」を読んで小論文を書こう

        1、時間数:5~6コマ   対象:高校2年生男子 2、目的:生徒が老子の発想と現代評論とを結びつけ、古代中国思想を身近に感じてみること。 3、準備: ⑴ 『老子』(第十四章、第八章、第十一章) ⑵ 高階秀爾「余白の美学」(または原研哉「白」) ⑶ 『たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」』⑷ デジタルデバイス(Googleclassroomの使用が可能なもの) 4、手順 ⑴ 「老子」第十四章から八、十一の順で読解。第十一章が一番分かりやすいこと

        • ⑶ 大鏡を読んで年表を作ろう(道長と公任

          1、時間数:多数 2、対象:「雲林院の菩提講」読解済み。大鏡についての基礎知識を身につけている高校2年生。 3、目的:生徒が平安中期の天皇及び貴族について知識と印象を持つこと。 4、準備:『古典探究』、ノート、辞書、デジタルデバイス(インターネット接続が可能なもの)、年表台紙 5、手順(概略)  ⑴ 大鏡の「花山院の出家(または退位)」を講読する。兼家、道兼、花山院の関係を確認する。  ⑵ 栄花物語の「花山院の出家(または退位)」を紹介する。花山院と藤原頼忠の関係を

        • 固定された記事

        古典に、参加せよ

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        • 短歌と和歌と、時々俳句
          37本
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          4本
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          7本
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          17本
        • 古典常識を調査する
          4本

        記事

          ⑵ おみくじを作ろう

          1、時間数:1コマ   対象:男子高校生(2年生) 2、目的:生徒が和歌を読み解き、実生活と結びつけて考える経験をすること。 3、準備: ① 平野多恵『神さまの声をきく おみくじのヒミツ』(川出書房新社 2017年) ②おみくじ台紙(①に収録されたおみくじより、最もシンプルな「住吉大社おみくじ」を参考にエクセルで作成) ③コレクション日本歌人選全巻 4、手順 【一時間目】  ⑴ 説明(10分):上記目的と台紙の配付。作成案内。コレクション日本歌人選を1人一冊配布。漢字

          ⑵ おみくじを作ろう

          ⑴ 平安貴族de人生ゲーム

          1、時間数:2コマ程度 2、目的:生徒が平安貴族の人生を想像し、また古文常識を身近に感じてみること。 3、準備:人生ゲーム台紙、マス用資料集(教員作成)、サイコロ、プレイ記録用紙&レポート用紙、古語辞書、便覧(あれば) 4、手順 【一時間目】  ⑴ 説明(10分):上記目的と資料の配付。ストップコマ(台紙参照)の読み合わせ  ⑵ ゲーム作成(30分):マスの内容を書かせる。※30分では終わらない班がほとんど。 【二時間目】  ⑶諸注意(5分):悪ふざけして盛り上がる

          ⑴ 平安貴族de人生ゲーム

          【短歌と和歌と、時々俳句】27 初日の出

           初日の出が見たいと言ったのは長男である。インフルエンザでどこにも行けなかった年末を終えて鬱屈としていた僕たちは、家族全員で見に行くことにした。  鹿児島の元旦は良く晴れて暖かかった。海に向かう人は多い。海岸沿いのコンビニの駐車場には隙間なく車が並んでいた。東の空はすでに朱の色が深くなってきている。その朱が一番濃い空と接する山の端が、蚊取り線香みたいにじんわり赤く輝く。次の瞬間眩い光が溢れだした。日の出だ。  始まりの光を眺めていると詩情があふれ出す。日本文化を担ってきた先

          【短歌と和歌と、時々俳句】27 初日の出

          【短歌と和歌と、時々俳句】26 渡部泰明『雲は美しいか』(平凡社 2023年)書評

           年賀状を書かなくちゃいけない。  大晦日に言うことでもない。だけどそろそろ年賀状という習慣も終わりにしようと思う中ではなかなか手が動かない。これはもちろん言い訳。  せめて恩師にだけは出そう。そう思ったのは、本棚にある『雲は美しいか 和歌と追想の力学』(平凡社 2023年)が目に入ったからだ。  本書は僕の本棚に2冊ある。1冊は予約注文して購入した。もう一冊は著者である師が贈ってくれた。購入したのは3月で恵投いただいたのは10月ごろだった。この時期のズレが何を意味するのかを

          【短歌と和歌と、時々俳句】26 渡部泰明『雲は美しいか』(平凡社 2023年)書評

          【短歌と和歌と、時々俳句】25 藪柑子

           長谷川櫂『日めくり 四季のうた』(中公新書 2010)は一年365日のそれぞれに「うた」を配して解説を加えている。「読売新聞」連載の「四季」をまとめたものだ。  本日、12月27日の歌は藪柑子を詠む歌が紹介されている。  藪柑子が根付く程度のうろを抱えた樹。それなりに大きいはずだ。その樹は冬の風から藪柑子を守るように聳える。樹に守られた藪柑子はやがて小さな赤い実を結ぶ。まるで親と子と孫のよう。優しい組み合わせだ。  この時期、藪柑子の赤い実は山野で目立つ。庭先にも植えら

          【短歌と和歌と、時々俳句】25 藪柑子

          【短歌と和歌と、時々俳句】24 秋風

           10月までの猛暑を予告されている本年も、朝夕に少しずつ、本当に少しずつ、秋の気配が滲み出し始めています。今夜は久しぶりにエアコンではなく風の涼しさで眠ることができそうです。  「朝ぼらけ」は未だ明けやらぬ頃合いをさします。現在で言えば朝4時から5時ころでしょう。  荻はススキによく似た草。  この荻にのる露を見ることで秋を実感し、好忠は風の涼しさに気づきます。    視覚に導かれることでようやく秋を肌感覚で感じられるということ。思い込みに支配されがちな僕たちにいかにもあ

          【短歌と和歌と、時々俳句】24 秋風

          <短歌>8月21日(月)

           夏休みが終わり、仕事が始まる。 金色に輝く夏と灰の日の間にあった銀色 たぶん  夕方走ると少し楽だった。火照りが顔まで上ってこない。真夏の扉を秋がノックしている。 「今までねずっと頑張ってきたからね夕方くらいは休ませて」と夏  今夜の夕食は7歳の次男が作ってくれたカレー。初めて作った料理が嬉しくて、でも不安で、次男はドキドキしながら家族みんなに感想を求めてる。 「旨くない時には言って『わかんない』」辛味は優しく包んで欲しい

          <短歌>8月21日(月)

          〈短歌〉8月19日(土)

           サマーナイト 大花火大会だった。打ち上げ前にドローンのディズニーショーがあった。夜空をキャンパスとしたタイタンの芸術。こうして少しずつ、現代は神話に近づいて行く。 ドローンの描くミッキー大空にお金の色で笑うミッキー

          〈短歌〉8月19日(土)

          <短歌>8月18日(金)

           朝。自由研究を始めない長男を怒鳴り、自由研究についてはもう声掛けしないことにしました。    水底のアサリのように食いしばる歯が見えるまで気づかぬ父は  昼。だらつく僕と子どもたちに妻がピリついています。  煮えきらぬ野菜に七味をまくようだソファのアホと般若の妻と  夜。幼稚園の夕涼み会から帰ってきた娘がつかれて泣いています。泣き喚く娘を風呂に入れ、息子たちに晩飯を食わして歯磨きさせ、皿を食洗機に入れ、部屋を片付けたら、少しだけ妻が褒めてくれました。  妻と僕同僚な

          <短歌>8月18日(金)

          歌物語2「音にのみ」(新古今集恋歌2)

           『新古今和歌集』の恋歌、その2首目だ。  「音にのみありと聞き来しみ吉野の滝」は吉野川の滝についての語りだ。吉野川と言えば「あふことは玉の緒ばかり名の立つは吉野の川のたぎつ瀬のごと」(古今和歌集恋歌三 673   読人知らず)のように「たぎつ瀬=ごうごうと音を立てるほど激しい流れ」で有名だ。そしてこの『古今集』歌に限らず吉野の川や滝は恋情の比喩としても定番だから、当時の読者や聞き手は「音にのみ」歌の吉野川の語りを激しい恋情の比喩だと予想したことだろう。  その吉野の滝が「今

          歌物語2「音にのみ」(新古今集恋歌2)

          歌物語1「よそにのみ」(新古今集恋歌1)

           気高い彼女には潤うほどに瑞々しい紫が良く似合う。  内裏が火に襲われたあの夜、真っ先に避難するべき彼女が立ったのは燃え盛る陰明門の真正面だった。内裏が火事の脅威にさらされるのは初めてで、誰もがパニックに陥っていた。そんな中でも比較的冷静だった数名は、火の前に立つ彼女の姿を見出して、避難させようとした。中には彼女を聞き分けのない小娘と見て、抱き上げて場所を移そうとする者もいた。そんな男の手を軽やかに躱し、腰の入った拳一発で男を這いつくばらせた彼女は、こちらを向いて言った、「

          歌物語1「よそにのみ」(新古今集恋歌1)

          古典の入門7『知ってる古文の知らない魅力』鈴木健一

           『知ってる古文の知らない魅力』は高校で古文を習った人向けの本だ。例えば古典に興味のある学生や中高の先生など。『徒然草』の序文を「誰でも知っている」と断じられて「まあそうだよな」と思える人、と言ってもよかろう。  ややハードルは高いかもしれないが、本書は知的な面白さに富んでいる。その面白さを鈴木は と説明する。  どういうことか。それを分かってもらうには具体例を示した方が早いだろう。ネタバレになってしまうが、「はじめに」のみとするのでご容赦いただきたい。  鈴木が「はじめ

          古典の入門7『知ってる古文の知らない魅力』鈴木健一