歌物語1「よそにのみ」(新古今集恋歌1)
気高い彼女には潤うほどに瑞々しい紫が良く似合う。
内裏が火に襲われたあの夜、真っ先に避難するべき彼女が立ったのは燃え盛る陰明門の真正面だった。内裏が火事の脅威にさらされるのは初めてで、誰もがパニックに陥っていた。そんな中でも比較的冷静だった数名は、火の前に立つ彼女の姿を見出して、避難させようとした。中には彼女を聞き分けのない小娘と見て、抱き上げて場所を移そうとする者もいた。そんな男の手を軽やかに躱し、腰の入った拳一発で男を這いつくばらせた彼女は、こちらを向いて言った、「