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逢坂志紀掌編集

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筆者、逢坂志紀の掌編、短編集。
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2018年12月の記事一覧

この街の車窓から

この街の車窓から

お前は今、どんな景色を見ているんだろうか? 
今年も嫌いな年末年始がやって来た。仕事納めを目の前に最後の最後までバカみたいに働く。今日は営業先を十数件はしごして自社のカレンダーを渡して回った。疲れたとかくたびれたとかを通り越してバカらしくなる。オレは一体何をやっているのだろうか? と。
ある日、不意に生きていることの理由が分からなくなる。それは白のワイシャツにトマトソースを飛をばしたことや、たまた

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Birthday

『誕生日おめでとう、良かったら今度ご飯でも』
 当たり障りのない誕生日LINE。もう七年以上前、学生時代に何度かデートした間柄の先輩男性からの連絡だったので、少しドキッとした。まだ会おうとも言われていないのに、朝、鏡に映る自分の姿を凝視してしまった。まだかわいいとかキレイと思ってもらえるだろうか? 職場での男性からの人気が落ちているのは、ひしひしと感じる。デスクから顔をあげて左右に首を巡らせて、自

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恋愛(らぶ)レボリューション21  ―プロローグ・運命の人―

―プロローグ―

二十一世紀になった頃、歌われた曲がある。一つの時代をつくったあのモーニング娘。の恋愛レボリューション21。アップテンポで恋に落ちた乙女を歌った曲だ。そう、二十一世紀の入り口で我々の世界に恋愛革命が起こったのである。いや、起こすはずだった……と言うのが正しいだろうか? なぜならあの偉大なつんく♂は「みんなで恋愛革命」と歌わせたのだ。

 ここで言う“みんな”とは無論ネクストジェネレ

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君は言った。

「春が好き」

君は言った。

「夏が好き」

君は言った。

「秋が好き」

君は言った。

「冬が好き」

僕は言った。

「君が好き」