品種ごとの苦労と業者トラブルと成長の歴史:実家のいちご農園での20年
小竹いちご園は2004年に農業をスタートし、最初は6棟のハウスでいちごの栽培を始めました。しかし、それだけでは収入が十分ではなく、8棟に増やして対応しました。
お客さんから「新しい品種が出るんだってね。どこで食べられるの?」という問い合わせが増えたことをきっかけに、直売所に足を運んでもらう良い機会になると考え、新しい品種を取り入れることにしました。
しかし、簡単に品種を増やせるわけではありません。様々な問題があります。
苗の著作権問題
品種の挑戦の前に、栃木県ではいちごの苗には著作権があり、基本的にその県内でのみ栽培できる「育成者権」が与えられます。無断栽培は種苗法違反であり注意が必要です。例えば「とちおとめ」は著作権が切れており、どの県でも栽培可能ですが、他の品種は県外や海外に持ち出すことは禁止されていますのでご注意ください。
(実際県外の方でミルキーベリーを栽培しているという方からコメントが来た事がありました)
農協出荷に関する問題
新品種を取り扱う際、農協出荷をメインに行っている農家が優先されるため、農協出荷以外も行っている私たちは後回しにされることが多いです。この構造は栃木県のいちご農家にとって大きな課題だと思います。
この構造が普通のサラリーマンぐらいの生活できる農家を産まない、赤字の農家だらけである一つの原因だと思います。
小竹いちご園の品種ごとの挑戦
品種ごとに収穫量や時期、果肉の柔さがなど扱い方が異なり増やせば増やすほど栽培の難易度は上がります。しかしお客様に喜んでもらえるなら挑戦する価値があると思っています。
品種の説明はホームページにも書いてますので、ぜひご覧ください。
とちおとめ
最初に手がけた品種は「とちおとめ」で、程よい酸味がありケーキ作りに最適ですが、病気に弱く収穫量も多くありません。年々価格が下がってきたため、新しい品種を取り入れることを決断しました。
スカイベリー(2014年開始)
2014年、新品種「スカイベリー」を栽培開始しました。
しかし、農協が新品種を栽培する農家を選定するため、私たちは遅れてスタートしました。
栃木県ではとちおとめに取って代わる、あまおうのような利益の取れる高級路線で行こうとしていた為、出荷基準が厳しくほとんどが価格の低いランクで取引されてしまい、市場にで回らない事、味で勝負せず収穫量を重んじる構造が問題で評判があまり良くなく、目にする機会も少なかった為、現在では作っている農家はかなり少なくなりました。
ロイヤルクイーン(2015年開始)と出荷停止事件
2015年には、炭そ病に強い品種「ロイヤルクイーン」を導入しました。
知り合いの社長からエバーウイングスさんを紹介していただき、私たちが味に惚れ込んだ事で導入を決めた品種でした。
しかしこの品種は栃木県県の品種ではない為、農協出荷ができず、農業出荷以外の販売ルートを確保する必要がありました。
当初、エバーウイングス株式会社の販路を利用したかったのですが、ロイヤルクイーン以外の販売ルートが弱く、農業出荷より価格が安かった為、こちらで業者を探すことにしました。
しかし適正な取引ができる業者が見つからず、結局利用できませんでした。
その業者は、
毎日いちごを取りに来ないこと
いちごを野ざらしに保存していること
全ランク(B品など)を取引してもらえない
といった問題がありました。
このような状況により、農協以外の業者に出荷することのデメリットが明らかになり、
結果的に私が直売で売れる方向にシフトする大きなきっかけの一つとなりました。
この状況も農協以外の取引業者が育って来ない
構造上の問題だと思います。
しかし、直売に頼ることは負担も大きく、持続的な解決策が必要でした。そこで、安定した出荷先を確保するために、いちご部会に謝罪し、農協出荷を再び受けられるよう手続きを行うことを決断しました。
農協出荷は全サイズ買取してもらえる事が大きなメリットです。
この結果、出荷先の安定は得られましたが、ロイヤルクイーンの栽培は1年限りで終了しました。
ミルキーベリー(2019年開始)
2019年には「ミルキーベリー」を導入。この白いちごはインパクトがあり、多くのお客様に喜ばれましたが、収穫期間が短く、病気に弱いため収穫量を増やすのは困難で、
需要があるのに、増やせない品種です。
私のInstagramでも1万いいねが着くほど海外需要もありそうなのですが、
海外に輸送できるほど身が強くないなど
このように販売が難しい品種でもあり、
栃木県全体の0.02%しか栽培されていません。
とちあいか(2020年開始)
2020年には、栃木県が推している新品種「とちあいか」を栽培開始。病気にも強く、収穫できる時期も早い、身も大きいなどとても良い品種です。
その為現在では栃木県内外で最も多く見かける品種です。
とちひめ(2024年開始
)
2024年には「とちひめ」の栽培を開始します。
この品種は栃木県のいちご観光協会に所属していないと栽培できず、直売所での販売において大きな強みとなっています。
品種の多様化が生む直売所への誘導
新品種を栽培することで、お客様が直売所に足を運ぶ理由を提供できます。「ここでしか買えない」という魅力を持つ品種があることは、お客様にとって大きな引きつける要素です。
デメリットもありますが、
農家としてのブランド力を高め、リピーターを増やすためにも価値ある挑戦だと私は思います。
まとめ
このように、さまざまな品種を栽培してきた20年の歴史は、多くの挑戦と成長の連続でした。
新品種の導入や栽培の工夫を通じて、いかにしてお客様に魅力を感じてもらうかを考え続けてきました。今後もさらにお客様に喜んでもらえる農園づくりを続けていきたいと思います。
続く
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