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死刑判決は速やかに撤回して再審を。

新聞は購読していない。8月13日たまたま職場で毎日斜め読みする日本経済新聞朝刊の「春秋」ドキュメンタリー映画「マミー」について書かれていた。

和歌山毒物カレー事件。なんと林さん関係者が冤罪を訴えているということが書かれていた。

自分自身冤罪に興味がある。早速映画のチケットを予約して翌日8月14日に観た。衝撃的な内容だ。今日は映画を観て感じたことを手短かにnoteする。

横浜シネマリンにて。

再審請求が受理されている。

「和歌山毒物カレー事件
1998年7月25日に和歌山県和歌山市園部で起こった毒物殺人事件である。
急性ヒ素中毒者67名、うち死者4名を出した日本でもかなり大きな凶悪な殺人事件だ。
事件後の捜査の結果、被疑者として「林眞須美」さんが逮捕され、その後裁判が行われ2009年5月19日に林さんの死刑判決が確定した(現在大阪拘置所に収容されている)。
一方で事件から月日が経つにつれて捜査の杜撰さや目撃証言の曖昧さ、また裁判での検察側の証拠の非科学性が徐々に指摘されるようになり、現在、冤罪の疑いが出てきており、2024年2月現在、和歌山県地方裁判所で再審請求が受理されている状況にある。

私自身この映画を観るまでは恥ずかしながら「この事件は既に終わったこと。」と認識していた。しかしながらこの映画を観終わってからは余りにも「浅はかだった」と自分を自戒した次第だ。

マスコミ報道により同調圧力的な世論が形成された典型的な事件

事件当時の報道を思い出してほしい。被害者遺族の方には申し訳ないが当時の報道の私のイメージは以下の映像が脳裏に焼き付いてる。

当時のテレビで報道されていたマスコミ関係者に水をかける林さん
当時のテレビで報道された林健治さんの写真

林さんの関係者の皆さんには大変申し訳ないが、マスコミ取材関係者に一方的に水をかけているように(見える)映像や写真、そして林健治さんのサン色つきサングラスから想像するイメージ等からマスコミ関係者が世論を一つの方向に持っていくような情報だったと言えないだろうか。これらの映像がワイドナショーで毎日のように流されることにより、林さんが犯人と思わせるように仕向ける何らかの力が働いたのではないかと私自身感じるところである。
そしてあまりにもショッキングな事件だったこともあって世論も一気に同じ方向を向き始め、最終的には逮捕され死刑判決を受けるに至ってしまう。
しかしながら、林さんは一貫して裁判で無罪を主張しており「動機が未解明であること、自白がないこと、直接証拠がないこと」の理由により再三に渡り再審請求を行ない上述のとおり2月に受理されている(この件は全く知らなかった)。

小さな港町で起きた凶悪な毒物殺人。

一日も早く犯人を捕まえて「安寧」を取り戻したいとの強迫観念に駆られて偏向的な報道が行われ、「疑わしきは罰せず」という刑事裁判の基本原則が忘れ去られてしまった事件(関係者が気が動転して無意識に忘れてしまった)とマスコミが誘導した典型的な事件と言えるのではないか。

この報道から言えることは、マスコミ関係者は、主観を忘却し客観的事実にフォーカスした報道に徹せよというに尽きる。

映画の構成についてはぜひ観て確認のこと

映画の構成はドキュメンタリー映画として淡々と二村監督の地道な取材に基づき構成されている。ネタバレnoteにはしたくないのでぜひお近くの単館映画会場へ行って生で観て感じて考えてほしい。
二村監督の「真実を知りたい」「無実の人を助けたい」という単純で素直な純粋な気持ちが、映像の中から飾らない形でひしひしと伝わってくる。二村監督の体中から言葉にできない湯気・熱気が出ていると感じてしまうほどの徹底的に取材を敢行する行動力には驚くしかない。

冤罪と疑われるこれだけの科学的根拠と関係者の証言

(1)混入したヒ素鑑定方法への疑義
そもそも目撃証言がない事件である。裁判での検察側の証拠も状況証拠を積み重ね詰めていく手法を採用している。しかしながら改めて一部の専門家が裁判で提出された証拠書類を読み込んでみると、あまりにも稚拙で杜撰な科学的とは言えない証拠があるというのである。

この裁判の証拠に疑義があると主張する一人が、京都大学・河合潤教授だ。当時同一のヒ素と確定づけた証拠は、事件の前年に稼働した大型放射光施設「SPring-8」による実験による。物質に高エネルギーの光をあて、原子レベルの解析を可能にする実験装置で、朝日新聞も当時「最先端の技術が事件解決の糸口をもたらした」と報道するなど脚光を浴びた。最先端技術で調べるのはよいが、このデータでもって林さんが所有していたヒ素と確定づけるにはあまりにも稚拙だと言わざるを得ない。当時の鑑定者の主観によるものと言われてもしょうがないレベルの非科学的証拠なのだ。

(2)唯一の現場に林さんがいたという証言の曖昧さ・不確実性
また当時の事件現場でカレー鍋のそばにいたのは林眞須美さんだと証言する近隣住民の証言も「えっ???そんなことも忘れてしまうの???」というくらい初歩的な記憶忘れを起こした証言をしている。また林さんの家族も事件当時林さんと一緒にいたと主張しているが、裁判では証拠として認められず証拠不採用となっている。

本来であれば、これらの証拠を改めて再調査したり確認作業を行なうのが刑事裁判の原則だと思うが、今までのところ裁判所はすべて却下し、死刑判決を撤回しないまま現在に至っている。

人間は間違う生き物である。提出された証拠に少しでも疑い(隠蔽?データ改ざん?)があれば速やかに再調査し、真実・事実を追求することが必要不可欠ではないか。

もはや日本において科学は崩壊したと言える。あらゆるものが忖度と責任逃れで蔓延しているということを垣間見せてくれる映画であり裁判だ。

この事件をインターネットで調べると多様な分野のマスメディアが冤罪疑惑について語っているので時間があれば観てみたい。また観てもらいたい。

・無罪を訴え続ける林眞須美死刑囚 再審の経緯と争点は(公開:2021年7月16日)
・【和歌山カレー事件は冤罪?】証拠とされたヒ素の鑑定は科警研による「対数」を用いた数字のトリックで捏造された鑑定不正だった(前編)(公開:2022年7月25日
・【和歌山カレー事件は冤罪?(後編)】ヒ素検出の鑑定不正に加え、台所から急に出てきたヒ素入りタッパーや、科警研担当者は別件で証拠偽造。冤罪と言われる数々の理由とは?

かなり多くの証拠への疑義が取材され報道されている(ただし大手マスコミは報道していない)。

とにかく一人でも多くの日本人にこの映画を観てもらいたいというのが今自分が一番皆さんに言いたいことだ。目立たないが生きること、冤罪について多くを考えさせてくれる素晴らしい映画であったことは主張しておきたい。


映画「Mommy」パンフレット


映画「Mommy」パンフレット

日本人が同調しやすい民族であることを如実に表す事件がありそれを再現した映画についてもnoteしていますので併せてご覧ください。


Pentatonix Performs "Seasons of Love"

人生はあっという間に過ぎていく。1年365日貴重な人生である。
「冤罪は決して許されるものではない」ということはこのnoteの最後に記しておく。

真実を照らせ。

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