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読書感想文「握る男」

「握る男」 原宏一
☆☆☆☆☆

金森とゲソの二人のすし屋見習いが日本の食を制する話


目的のためには手段を選ばないゲソは、周りの人の弱み(キンタマ)を握り自分の思うように物事を進めていく。

邪魔な上司を排除したり、見習いとして入った「つかさ鮨」を乗っ取るなどし、最終的には日本の食を制するまで成り上がった。


ゲソは他人の弱みを握ることに長けていた。弱みを握るということはあまりいいことには思えないが、弱みを握ることが長所だったのである。と僕は考えた。

ゲソは人間観察能力が高かった。長く付き合っていなくてもその相手の性格を見抜いた。そして、人間観察能力に加え、その人を利用する能力も高かった。

他人を利用するような人を見ると「なんだあいつは」と思っていたが、その人は意外と人間観察力と他人を利用する能力が高いのかもしれない。


また、食を制するうえでゲソの片腕として活躍した金森は、本を読み進めるごとにゲソに服従していくようになった。

初めは金森自身も弱みを握られるなどし、ゲソに対して嫌悪感を感じていたこともあったが、ゲソと二人三脚で物事を進めていくうちにいつしかゲソにある種の忠誠心のようなものを抱えていた。

弱みを握られ利用されていたが、他の人とは違う扱いをされていたから金森はゲソ忠誠するようになったのだと思うが、知らず知らずのうちにゲソに飲み込まれていった金森はおろかだと感じたが、そうするしかなかったのだとも感じた。そして、金森が服従することさえもゲソの計算内だったと思うとすごさと恐怖を感じる。


「握る男」というタイトルは、寿司を握るとキンタマ(弱み)を握るをかけているのだと思うが、その二つがきれいなものときたないものという対照的な二つに感じられた。

最後には意外な展開もあり、すらすらと読める本だったが、他人に貸しを作りたくないと感じる本だった。

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