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#2太陽のプリンセス
プリンセス・クルセイド #2 【太陽のプリンセス】 5
「さて、ここで決着をつけましょうか。多少、行儀は悪いかもしれませんが!」
「ひゃっ!」
イキシア王女が横薙ぎに振り回した薙刀を、アンバーはかがみ込んで躱した。頭の上で風が鳴る。
「まだまだっ!」
アンバーが顔を上げると、イキシア王女が流れていく薙刀を強引に振りかぶり、今度は縦に振り下ろそうとするのが見えた。アンバーは屈んだ姿勢のまま、真横に飛び退いて回避を試みる。間一髪で直撃は免れたが
プリンセス・クルセイド #2 【太陽のプリンセス】4
チャーミング・フィールドに降り立ったアンバーは、自分の感覚をすぐには信じられなかった。目の前には草原が広がり、湖も見えた。ここまでなら何ら問題の無い風景だ。しかし所々に立ち並んでいる石柱には、奇妙な違和感があった。何かを支えるために立っているのでもなければ、等間隔に立ち芸術性を醸し出しているわけでもない。途中でひび割れ、折れているものさえ少なくない。不可解な物体はこれだけではない。湖の上空には、
もっとみるプリンセス・クルセイド #2 【太陽のプリンセス】3
翌朝、アンバーは竹箒を手に、毎日の日課である軒先の掃除をしていた。通りに立ち並ぶ民家や工房にまだ人の気配は無く、まだ穏やかな眠りについているようだ。それでも、彼女は手際良く軒先を履き終えてしまうと、そのまま流れるようにして工房のシャッターに手をかけた。
「……そっか、今日からは開けられないか……」
アンバーはそう呟くと、シャッターから手を離した。父があの状態では、もう工房を営めない。幸か不
プリンセス・クルセイド #2 【太陽のプリンセス】2
アンバーが目を覚ますと、目の前は真っ白だった。おぼろげな意識が回復してくるにつれ、そこが自宅のリビングであることに気がついた。目の前にあるのは天井だ。彼女はソファに上に横たわっており、体の上には普段ひざ掛けとして使っている布が掛けられている。しかし何故か、服はエプロンドレスのままだ。
「……私、どうして?」
「起きたようだな」
突然どこからか声が聞こえて、アンバーは咄嗟に身を起こした。す
プリンセス・クルセイド #2 【太陽のプリンセス】1
ガーネットには夢があった。
彼女が生まれたサンドベウスの名物、コロシアム。国の文化財として保護されているその場所は、年に一度の武芸大会で有名だ。大会では王都から集結した腕自慢の騎士たちが剣の技を競い合う。その勇姿に、幼き日の彼女は心を奪われた。いつの日か自分も騎士となり、このコロシアムで闘うのだと自分に誓った。
夢見る者の成長は早い。彼女は年月とともに剣の腕を上達させ、見事王都に騎士とし