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こどもの本棚:35年ぶりの続編! ねぇ、どれがいい?

昨年82歳で逝去したイギリスの絵本作家ジョン・バーニンガム。日本でもたくさんの絵本が翻訳されていますが、長男が大好きなのがこちら。

「ねぇ、どれが いい?」ジョン・バーニンガム 訳まつかわ まゆみ 評論社

「もしもだよ、」と始まるこの絵本ではAとB、どれがいい?と選択肢の提示が繰り返されます。そしてその選択肢がかなり独特、シュールなものばかりです。

例えば、

ジャムまみれと、
みずびたしと、
イヌにひかれてドロだらけと、
どれがいい?

いや、どれも遠慮したい。うーん、しいていうなら水浸し?かな。
洗濯は一番楽そうだし。泥だらけは本当に洗濯が大変なので、勘弁してほしいです。

長男が好きなのは、

どれがいい?
2000えんでイバラにとびこむのと、
10000えんでしんだカエルをのみこむのと、
20000えんでおばけやすきにとまるのと。

ケラケラ笑いながら、「どれもやだよねー」と言っています。

予定調和じゃないことやナンセンスであることの面白さを堪能できる絵本です。

家族でお気に入りのこの絵本。35年の時をへて刊行された続編を、先週図書館で発見しました。

「またまた ねえ、どれが いい?」ジョン・バーニンガム 訳まつかわ まゆみ 評論社

35年もたっているのに、翻訳者も出版社も同じことに胸が熱くなります。

構成は前作と同じで、選択肢が繰り返されます。シュール度は前作よりやや落ち着いています。

2作目を読みながら、絵のタッチが違うような気がしました。前作でも絵の輪郭は力強いはっきりした線ではなく、点線だったりちょっと薄かったり二重だったりするのですが、今作ではさらにもっと揺れているような・・・。
絵も不安定な印象です。

顔を近づけてよく見てみると、表紙も各ページも下絵の鉛筆書きと思われる線がそこかしこにそのまま残っていました。

そこでふとこの作品が出版されたのっていつなんだっけ?と奥付を見てみると2018年となっています。亡くなる前年です。

80歳を超えて描いた絵本なんだと頭におくと、また見え方が変わります。確かに絵の完成度でいえば前作には及ばないのかもしれませんが、魚のユーモラスな表情や男の子のしましまの靴の色合いに、ジョン・バーニンガムも楽しみながらこの絵本を描いたんじゃないかなと想像しました。

下書きのあとが残っている絵本というのもかなり珍しいのでは?
長年の積み重ねたキャリアがあってなお、下書きをしてから絵を描き続けていたというところに作家の真面目さを感じます。本文のシュールな質問だけを見ていたら、そんなふうに思いをはせることはなかったでしょう。

1冊でも、2冊見比べながらでも重層的に楽しめる絵本です。




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