小波 季世|Kise Konami
旅にまつわるエトセトラです。
人生について徒然なることを徒然なるままに書いています。
本にまつわるエトセトラです。
音楽にまつわるエトセトラです。
あのお酒とあの思い出ハタチを迎えてから10年が経った。10年もあれば、大学や地元、会社や旅先でのいろんな「お酒」の思い出がそれなりに降り積もっている。 学生の懐にもやさしい値段の飲み放題のお店で、おそるおそる飲んだカシスオレンジ。だだっ広い河原でバーベキューをしながら、喉に流し込んだ缶チューハイ。寒い冬の恒例だった誰かの家での鍋パーティーに、必ずといっていいほどあった梅酒。たまに帰る実家で「せっかく季世が帰ってきたから」と、家族が用意してくれていた地元の日本酒やワイン。社会
たまたま立ち寄った恵比寿の書店で見つけた本の中で、そんなおしゃれな問いを見つけた。山手線のなかでも特におしゃれな街と呼ばれる恵比寿。本の品揃えも中身もさすがにハイセンスだ。 息も凍るくらい寒さの厳しい北国の片隅で暮らしていた10歳の自分は、34歳の自分をどう思うのだろう。 たぶん「嘘でしょ?でたらめばっか!オトナってそうやっていっつもコドモをからかう!!」とませた調子で怒るに違いない。 気づけば10歳の自分自身すら信じられないような現在地にいる。 ■「世界のオオタニさ
人生で初めて手術を受けた。 私の体の中に「ポリープがある」と告げられたのは、8月のジリジリと焦げるように暑い土曜日。健康診断で要精密検査になり、「一応行ってみるか」くらいの気持ちで受けた検査。麻酔から覚めてまだ少しぼんやりとした頭のまま、医師に呼ばれる。 そうだろう、そうだろう。帰り道、おいしいものでも食べて帰ろうと思ったのも束の間。 思わずガクッとなる。たいていの人は本当に「大丈夫」だから、医師もいつもの癖で私にも「大丈夫」と言ってしまったのだろう。でもそのワンクッシ
■親子の出迎え早朝、静かな雨音で何度か目が覚める。東京から新幹線とバスを乗り継ぐこと約5時間かかって到着する、1,000メートル級の山々に囲まれた山間のまち。その片隅にある民家の2階の和室。窓のすぐ外は山々で、昨日この家に着いたときは鹿の親子が出迎えてくれた。 できたら朝から散策に出かけようと思っていたけれど、移動続きで昨日も2万歩近く歩いていたためか、体が動かない。貪欲に動き回り、とにかく「見た!来た!」とアリバイ作りのようにToDoリストを埋めるための旅でもなし。心底
久々に読書会を開催。「積読しそう、でも読みたい!」という本を読むための絶好の機会でもあり、一つの作品を鏡にいろいろな人の人生や価値観を知ることのできるチャンスでもある。参加者の皆さんが本当にあたたかかった。
■春の日のメロディーポストを開けると、夜空色の封筒が入っていた。見覚えのあるその封筒。受け取るのは2回目だ。 中身はわかっていた。だからこそちゃんと落ち着いたときにこそ開封したいと思っていたら、数日が経っていた。静かな部屋の中で一人そっと封を開ける。中に入っていたのは、数枚のモノクロ写真と折りたたまれたメッセージ。私は一瞬で「あの日」に戻っていった。 * * * 春の昼下がり。窓から明るい日差しが降り注ぐなか、長テーブルを囲んで、それぞれが思い思いに食事と会話を楽しん
「こうなれ」「ああなれ」と声高に叫んでくる文字の多さ。
■過去からの贈りもの 7月某日、大学の先生からメッセージが届く。今年ゲストとして大学1年生向けの授業にお邪魔した。その受講生の提出課題についてのお知らせだった。 提出課題は、それぞれの学生が趣向を凝らした短い動画形式でまとめられていた。数ヶ月前、授業で私が話したこととリンクするような内容もいくつかある。技術的には荒削りでも、圧倒的な素直さで胸のど真ん中に飛び込んでくる言葉や表現。目の奥が熱くなって、思わずまばたきした。 小手先の技術は、圧倒的な素直さの前にはひれ伏すしか
"祈りのナガサキ"を訪れた10年前の8月9日。 「現場に行ったからといって、すべてがわかった気になってはいけない」 あの日から10年、私は何か「わかった」のかどうなのか。 https://note.com/konami_kise/n/n632cf7a34855
自分が主語じゃない言葉は信用できないと思ってしまうのは、「大きい主語」を振りかざすことへの忌避感があるせいかも。 「『みんな』に迷惑でしょ!」とか「だから『年寄り(あるいは若い人)』は!」とか。ついそういうことを思ってしまった時、自分の解像度の低さに悲しくなる。
「正論は正しい。だが正論を武器にする奴は正しくない。お前が使ってるのはどっちだ?」 『図書館戦争』で一番印象深かった言葉。
「自己理解が大事」とよく聞くけれど、なかなか難しい。 そんなとき 「10年前の自分へのメッセージ」や 「10年後の自分からのメッセージ」を 考えてみると、おもしろいかも。 3年、1年、半年、3ヶ月スパンでもいい。過去や未来の自分の視点を持つと、いい意味で今の自分を俯瞰できる。
■宝物のようなほめ言葉6月某日。尊敬する方に、お見せした原稿を手放しでほめられた。今でも夢なんじゃないかと思う。書くことを人生のなりわいの一つにしているとはいえ、本当に尊敬している––高校生の時から知っている––プロの書き手の方からの言葉だったから。 あたたかいお言葉と「!」やニコニコマークがいっぱいの感想原稿を受け取った日から、何度も見返している。愛を持って厳しいことも率直におっしゃる正直な方からの賞賛だったからこそ、うれしくてしょうがない。 上っ面だけの賞賛や心ない
こんにちは、小波季世です。文筆家として主にコンテンツ(本や音楽、映画、舞台や旅、食などありとあらゆる体験)について綴っています。 Profile大学2年生の3月、20歳のときに仙台で東日本大震災を経験。人類の負の面に着目する観光「ダークツーリズム」の観点から、被災地内外の人的交流について石巻・台湾・シンガポールでフィールドワーク研究をしていました。 できること Works■エッセイ ・KIRIN×note #また乾杯しようコンテスト 審査員賞受賞作 大学時代に1ヶ月間
■プロローグ日本から飛行機を乗り継いで25時間ほど。ロンドン、ヒースロー空港。子どものときから好きで、年末にはいつも観たくなる映画の舞台。人生2回目のヨーロッパ旅行はそこからスタートした。 イギリスへの入国手続きはあっけなく終わる。EU諸国やカナダ、オーストラリアなどといった国のほか、日本や韓国のパスポートを持っている入国者は、無人ゲートでパスポートを機械にスキャンさえすれば、すぐに入国できる。それ以外のパスポート保有者は、有人ゲートに並ぶ必要がある。映画やドラマで見るよ
■穢された豊かさ。そしていま。1日1日の密度が、それまでの1年をぐらぐらと煮詰めたくらいに濃かった4月。旅に出た。 成田空港から飛行機で西日本へ。初めて降り立った土地や懐かしい土地を歴訪した数日間。最後に訪れたのは、香川県は豊島にある豊島美術館だった。 訪問の数週間前に読んでいた冒頭の小説にも登場するこの美術館。私がその存在を知ったのは、元々は親友夫婦に勧められてのこと。いつかは行きたいと思っていたその場所が小説に登場した瞬間、旅の最終目的地は決まった。 瀬戸内海沿い