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茶事の懐石料理
茶道というと抹茶をシャカシャカ混ぜてお客様に飲んで頂く…そんなイメージの方が多いでしょうし、私もそれぐらいしか知りませんでした。お茶を飲む前に美味しいお菓子も食べれるしいいよね…でも作法を知らないのでなんとなく敬遠しがちでした
抹茶をお客様へ飲んで頂く…その通りなのですが、なぜ抹茶を振る舞うのか、それが最高のおもてなしだからなのでしょう。抹茶は中国から伝来しましたが、当初は薬としてきたものでしたカテキンやビタミンを摂ることで身体の免疫力が高まります。そして抹茶を甘く美味しく飲むために先にお菓子が出されます。コーヒーなどはお菓子とコーヒーを一緒に頂きますが、抹茶は先にお菓子を頂いて口の中を甘くすることで抹茶はより美味しく頂くことができます。
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そして茶道とはお客様をおもてなしするための日本的な道のひとつです。
茶道を習うとわかりますが、抹茶を頂くために茶事では食事をいただくことから始まります。
茶事での食事は会席ではなく懐石料理と呼ばれます。昔の修行僧の方々は一日一度、午前中にしか食事を取らなかったようで、その後に空腹を感じた時には懐に温かい石を抱えて暖をとっていました。 一日に一度の食事は石と同じく体を温める効果があったことから、修行僧が食べる食事にを懐石料理と呼ぶようになったそうです。茶事で暖かいものは暖かく、季節の旬を感じながら召し上がっていただく。そんなおもてなしに溢れた食事が提供されます。
懐石料理では最初に季節のお刺身や和え物などの向付け(むこうづけ)とご飯、お味噌汁がお膳や折敷(おしき)で運ばれてきます。
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この最初のご飯は煮えばなで、パスタで言えばアルデンテ、粒がたった芯のあるご飯を頂きます。ご飯は全部食べてしまわずに一口残しておきます。食事を進めていると煮物が出てきてそのあとに人数分少なめにご飯の入った飯器がとり回されます。炊き立てのいい具合に蒸らされたご飯を頂きます。また一口は残しておきます。一口残すというのはまだお腹一杯になっていないというサインであり、礼儀でもあるのですね。
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その後焼き物と共に再び今度はご飯が沢山盛られた飯器がきます。三回目のご飯は空腹度合いによって好きなだけよそって頂けますが、飯器は空にしてお返ししないとなりません。そして自分のお椀には一口分やはりご飯を残します。それぞれの飯椀によそうのです。懐石で三回のご飯の味、食感の違いが味わえます。
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懐石ではお酒も振る舞われます。お酒に合わせて八寸(はっすん)と呼ばれる海のもの、山のものが振る舞われます。
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そして最後の最後に湯桶(ゆとう)と呼ばれる釜の底に残った焦げた飯を、さらに弱火できつね色に焦がし、熱湯をそそいで薄い塩味をつけたものが香の物と共に出されます。いわばお茶漬けみたいな感じです。
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そして食事が終われば主菓子が出され、一度中立ちします。席が改められ
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そしてもう一度席入りして濃茶、干菓子、薄茶を頂いて茶事は終わります。
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慣れないうちは難しく感じるかと思いますが、おもてなしという心で考えてみると全て意味のある作法であり、相手に対して心配りを考えれば身についてくるような気がします。無論私もまだまだ道の途中であり、精進あるのみなのですが、本質を知りたいと思う心が上達への近道なような気がします。実際の懐石では色々お話しをお聞きしながらのリラックスした楽しい時間です。機会があれば皆さんにも経験して頂きたいなと思っています。