【読書noteNo.22 今まで読んだことのないブックガイドに出会ってしまった…三宅香帆『人生を狂わす名著50』】
本は、面白いから読むものですよ~
って言ってくれるだろうな、と期待していた。
しかしである。
出だしから、いい意味で裏切られた。
戦闘モード剥き出しの文章で笑ってしまった。
読書は戦い
でも、この言葉に嘘はない。
断言できる。
だって、本を読むことで、自分が今まで当たり前だと思っていた価値観が、音をたてて崩れるなんてことは、実際に最近あったから。
坂口安吾の『堕落論』を読んでから、「道徳や制度は、確かに大事だけど、それに縛られたら人生窮屈だよな」って考えにシフトができるようになったし…
また、本ではないけれど、岡崎京子の漫画『pink』を読んで、「仕事に精を出すのは大事だけど、必要以上に意味や生きがいなんか見いださなくてもなんとかやっていけるよな~、というかしかめっ面して仕事していても楽しくないよな~」と考えられるようになった。
そう、私の人生は、本によって狂わさせられつつあり、本との戦いは始まったばかりだ。
さて、今回、紹介するのはこの本。
この本の著者は、今話題の三宅香帆さん。
なんと、三宅さんのデビュー作らしい。
この本のスゴさは、二つある。
三宅さんの本に対してあふれでる熱量と扱っている本のジャンルの広さである。
1.三宅さんの本に対してあふれでる熱量
引用した文章は、三島由紀夫の『美しい星』の書評である。
三島作品は、何冊か読んだことがあったが、この作品は読んだことがなかった。
この書評を読んで、確かに三島は、自分の思想に忠実な作家だよな~と思いかえした。それゆえに、自ら命を絶つのだから。
三宅さんは、三島の代表作については、そこまで共感できなかったと素直に語りながらも、『美しい星』については、絶賛していて、どこが面白かったのかを具体的に書いてあるから、手にとってみたくなった。それにしても三宅さんの熱量よ……。
自分の場合は、同じ作者の作品読んだとき、この作品は、自分にとってイマイチだったな~と思っても、三宅さんのように、「正直にノれなかった」とは書けない。それが、今の自分にとっての課題かもしれないな~と読んでて感じた。
「○○という作品は、~という点で、自分にとってはイマイチだが、⬜️⬜️という作品は、~という点で、自分に刺さった」と書くことが、⬜️⬜️という作品の面白さを一層引き立てることができるのでは?と思う。
今の自分の書評には、この同一作者の作品比較が全くといっていいほど、できていなかった。ここが、今の自分にとっての反省点かも。
2.扱っている本のジャンルの広さ
小説をメインにした書評家かな~とおもったら、扱っているジャンルの広さに驚いた。
小説だけでなく、海外文学、詩集、漫画、社会学といった幅広いジャンルの本を扱っているからだ。
これだけでなく、各作品紹介の最後に、この本を読んだ方におすすめする「次の本」というコーナーがあって、そこで三冊紹介されている。つまり、書評で取り上げている本50冊+関連本150冊=200冊を取り上げていることになる。なんという情報量だ。ここのコーナーに取り上げている本を読むだけでもいいな~と思ってしまうほど。
不道徳で、アブノーマルな本をメインに取り上げよう、とちゃっかり宣言をしていた私。
そんな本の面白さを引出すためには、三宅さんのように幅広いジャンルの本を読まないと、いけないな~と反省した。
○○という作品は、~な点で不道徳です。そして、~という道徳的な価値観を非難しているのです、と根拠立てて説明する必要があるもんな……。
そんなわけで、私の本に対する向き合い方をガラリと変え、書評スタイルを変えさせたこの本は、まさしく自分の人生を狂わせた本である。
今まで、読んだことのないブックガイドに出会ってしまった……。