＃２ 自分を大切にする 「身なりをととのえることお気に入りをもつこと」
【これは個人の日記とフィクションのあいだのお話。９５%くらいが実際のことで、５%くらいがフィクション（ルカという名前の女の子の存在と、その子の日記という設定がフィクション）】
今日の朝、お仕事に行くパパを見送ったあと、ママがバスタブにお湯をはったので一緒お風呂に入った。わたしたちはよく、バスタブに浸かりながら本を読んだり、考えていることについて話し合ったりしている。お風呂で考え事をするとすっきりしたり、モヤモヤしていても出た瞬間には元気になっていることが多い。ママもわたしもお風呂がだいすきだ。
今日の朝、ママはお風呂場でなんの本を読んでいたのかわからないのだけれど、読んでいた本をぱたんと閉じて「そうだわ！」と言って急にバスタブから立ち上がった。お風呂のお湯が突然大きく揺れたから、わたしは危うくお風呂の中でひっくり返るところだった。
それから、ママと髪の毛を洗った。実はばくろ（暴露）すると３晩も洗っていなかったのだ！もちろん毎日お風呂には入っているし、昨日の夜もちゃんと入ったのだけれど、面倒くさくて髪の毛は洗わなかったのだ。でも、パパから臭いって苦情が来ていないから大丈夫だったとおもう。
ママも最近、お仕事に行っていないことを理由にこうしておろそかにすることがたまにある。
髪の毛がすっきりすると、ますます気持ちがいいなぁとおもった。
ママはくせっ毛だから、乾かした後はていねいにアイロンもかけていた。ママは前まで定期的にストレートパーマをかけていて、毛先が内側にくるんとなったボブヘアがトレードマークだったのに、今はすっかり肩よりだいぶ伸びている。「もうストレートパーマはかけないの？」と聞いたら、「今は心も体も、ストレートパーマはうけつけないの」と言った。なんとなくわかるようなわからないような、でもなにか事情があるのかもしれないとおもった。
さっぱりしたあと、ママは朝ごはんにリンゴを剝いてくれた。それから、久しぶりに上等のグラスを出してくれて、そこに豆乳を注いで出してくれた。
このグラスは、ママとわたしの大のお気に入りでとってもきれいなんだ。毎日使うものとして買ったんだけれど、「もし割れてしまったら嫌だ」といってママはたまにしか使わせてくれない。
あさごはんを食べながら、ママは「清潔にしてきちんと身なりを整えることや、お気に入りのものを使うのはとても大切なことよ」と言った。たしかに、洗っていない頭でいるよりずっと気持ちよくって、きれいなガラスのコップを見ているだけでうれしい気持ちになった。
「自分を大切にしなくちゃね。もしぼさぼさの頭でいたら、自分はそういう人間なんだって自分で自分のことをそう思ってしまうし、自分にひどい扱いをしていたらそういう扱いをうけて当然の人間だと自分で思い込んでしまうの。お気に入りのものは見ているだけで嬉しくなるでしょ。」ママはこの考え方を知っていたけれど、しばらく忘れていたらしい。おもいだしたのは、さっき、お風呂で読んでいた本のおかげかしら？
お昼にはママ特製のミートソーススパゲッティを作ってもらった。ママはこうして時々、自分のためだけに（もちろんわたしにも出してくれるのだけど）このミートソースを作る。じつはママも子供の頃、自分のママに、つまりわたしからしたらおばあちゃんに作ってもらっていた大好物なんだって。
玉ねぎ、にんじん、ピーマン、えのきなどの野菜を細かくみじん切りにして、ひき肉と炒めてから水とコンソメまたはブイヨンで野菜が柔らかくなるまで煮たあと、トマトケチャップを入れて水分を飛ばしながら煮詰めるらしい。半分はお野菜で出来ている。レシピは、「聞いていなかったから、ぜんぜん違うものかもしれないわ」とママは言っている。それでもママは何度もその作り方で作るし、わたしはこれを美味しいとおもう。
ママはたまに「わたしは母のようにはなりたくなわ」というけれど、「母の料理はどれも美味しくてわたしはきっと幸せだったんだわ」とも言う。（なんでおばあちゃんのようになりたくないのか、わたしは知っているけれど、それはまたこんど書くことにする）
わたしもおばあちゃんの作ったごはん食べてみたかったな。
今日はどこにも行かなかったけれど、ママに髪をひとつに束ねてもらって、自分で選んだお気に入りのカチューシャつけて過ごした。
