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乳がん経験者に筋肉が重要な理由
こんにちは、乳がん専門トレーナーの奥松です。今回は乳がん経験者向けに、なぜ筋肉が重要なのか解説します。
結論 : 抗がん剤などの影響で、がん経験者の筋肉量が大幅に減少します。低すぎる筋肉量は乳がん予後を悪化させると報告されており、筋トレなどで筋肉量を維持することが重要です。
細かな解説は以下の通りです。
乳がん経験者の筋肉量は少ない
がん治療によって筋肉量が大幅に低下することが複数の研究で報告されています。筋肉が減る理由として、抗がん剤や運動不足、栄養不良などが挙げられ、2021年のアメリカスポーツ医学会で、Fairman博士は「抗がん剤によって、加齢10年分の筋肉が失われる」と報告しています(1)。
↑がんと運動分野の専門家 Fairman博士の発表スライドより。
筋肉量や体力が低下した状態を医学用語でサルコペニアと言い、乳がん経験者のサルコペニア率は45%程度で(2)、一般的な日本人サルコペニア率の1~29%よりも高い値になってます(3)。※研究によってサルコペニアの判定基準が違いますので、1つの参考情報として捉えていただけると幸いです。
低すぎる筋肉量は乳がん予後を悪化させる可能性がある
5,000人以上を対象とした研究では、サルコペニアがある乳がん経験者の死亡リスクは、サルコペニアがない乳がん経験者よりも1.7倍高かったと報告されてます(2)。乳がんに限らず、肺がん、胃がん、大腸がんでも、同様の研究結果が報告されており、低すぎる筋肉量はがんの予後を悪化させます。
サルコペニアは主に高齢者の介護分野で使われるのですが、乳がん経験者は抗がん剤や運動不足などの影響で、筋肉が減りやすく、中年でもサルコペニアになる可能性があります。
筋肉をつけるためには、筋トレがおすすめ
筋トレは筋肉をつけるために、ものすごく効率が良いです。もちろん、ウォーキングも素晴らしい運動ですし、乳がん再発予防や死亡リスクを下げる効果が期待できます。ただし、筋肉をつけるという観点で見ると、下の図からも分かる通り、ウォーキングでは筋肉はつきにくく、筋トレをした方が圧倒的に筋肉がつきます(4)。
↑各運動による筋肉量の変化。
筋トレをすると上半身がマッチョになって服が似合わないという懸念点もあると思いますが、がん経験者の場合はそもそもの筋肉量が低く、筋トレで筋肉量を維持することすら難しいです。よほどのことがない限り、ゴツくなることはありませんので、ご安心ください。
おすすめの筋トレ
私は日々、乳がん経験者向けにパーソナルトレーニングやオンラインフィットネスをおこなっていますので、その際に好評だった運動動画をまとめています。ぜひ動画をご覧ください✨
↑初級者向けエクササイズ。
↑乳がん再発予防のための自宅筋トレ。
筋肉量を測定するには?
マンマリアツキジでは筋肉量や体脂肪率を測定するために、インボディという体組成計を導入しています。インボディは市販の体組成計とは異なり、腕やお腹などの体脂肪や筋肉も測定できる優れものです✨
↑ジムにある最新型インボディ。
私の経験上、乳がん経験者のよくあるパターンとして、お腹周り脂肪が多く、上半身の筋肉が少ないケースをよく見ます。人によっては下半身の筋肉量も低い場合もありますので、個人に合わせながら運動や食事のプログラムを提案しています。
↑インボディで部位別の筋肉量などが見れます。
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↑インボディ点数の例
筆者紹介
奥松功基(スポーツ医学博士)
2021年に筑波大でスポーツ医学の博士号を取得。専門は乳がん経験者向けの運動と食事。聖路加国際病院と共同研究を重ね、学会や学術雑誌でも発表多数。現在は築地にある乳腺クリニック マンマリアツキジ専属のパーソナルトレーナーとして活動中。
参考情報
(1)Ciaran Fairman, Exercise to Increase Muscle Mass in Cancer Has Been Ineffective: Here's why and what we can do about it, ACSM annual meeting, 2021.
(2)Xiao-Ming Zhang et al., Sarcopenia as a predictor of mortality in women with breast cancer: a meta-analysis and systematic review, BMC Cancer, 2020.
(3)サルコペニア診療ガイドライン作成委員会, サルコペニア診療ガイドライン 2017 年版.
(4)Leslie H Willis et al., Effects of aerobic and/or resistance training on body mass and fat mass in overweight or obese adults, J Appl Physiol, 2012.