カフェ経営の思い出
僕が経営していた「ハイヌーンカフェ」を閉店してもうすぐちょうど10年になります。一戸建ての本社の庭を利用してテラスを造り、8年にわたって経営していました。20席ほどの小さな店でしたが、綱町の三井倶楽部でフレンチを作っていたシェフに来てもらい、洋食中心のメニュー構成、樽生のギネスやワイン、カクテルなどアルコールも充実していて、手前みそですが地域一番店として繁盛していました。酔っぱらって来ると、近くを通る新幹線の騒音すら潮騒の音に聞こえたりして(嘘ですが)、南の島の波打ち際のカフェといった雰囲気にしたいなと考えて店づくりをしていたのです。
近隣のみなさんはもちろん、わざわざ遠くからやって来て下さるお客さんや、有名芸能人の方も何人も来て頂いたりしましたし、何より当社の社員が食事に困ることがないので、さほど儲けはありませんでしたが楽しく経営していました。
当社のメイン事業は企業相手のコンサルティング事業ですので取引金額は最低でも数十万円単位なのですが、カフェですと数百円からせいぜい数千円単位です。また当然原価もかかりますし廃棄ロスもありますのでビジネスの構造が全く違います。しかし本当に学ぶことが多く、コンサルティングや研修の事業で活かせる知恵、ノウハウを実践で学ぶことが出来ました。
楽しく経営していたのですが、シェフが自分の可能性を広げたいと海外赴任を希望し、当社では難しいので海外大使館の公邸料理人になることになり、ちょうど10年前の3月1日に、3月末で閉店しますと告知をしました。その10日後に東日本大震災が起きてしまったのですが、さばき切れないと思っていたミネラルウォーターや缶詰の食品、避難所で使える調理器具などを被災地に送ることが出来たことが最後の思い出となりました。
今はコロナで外食のお店は大変ですが、美味しい料理を出してお客さんが喜んでくれるのはシンプルに楽しい仕事です。機会があればいつかまた挑戦してみたいと思っています。
ちなみにカフェの元シェフは、今も某国の公邸料理人として日夜、外交官や大使館を訪れるお客様のために美味しい料理を作り続けています。いつかコロナが明けたら、彼の料理を食べにその国まで行ってみたいものです。