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【シナリオ】中学生、頼まれ好き少女と、自分1番な学級委員の話。
ーはじめにー
誰かに頼られると、頼ってもらえるのが嬉しくて、
なんでも引き受けちゃう人っていませんか?私です。
頼りを引き受けすぎて、いつもパンクします。
今回はそんな性質を持ってる中学生と、正反対に自分軸がしっかりしている中学生のふたりが主人公です。
正反対の関係が、お互いに良い影響をもたらします。
〇中学2年生
6月終わり頃
教室の真ん中の方の席に隣同士座り、クラスの人数分のノートを机に置き、宿題チェックをしている咲良と、学級日誌を書いている帆乃。
帆乃「…今日三限って…あ、数学か。…なにやったっけ。」
咲良「数学はあの、方程式のさ、」
帆乃「あー、原田が間違えてたやつか!指されて。」
咲良「あ、うん、そうだと思う。」
帆乃「おっけーおっけー。」
帆乃、学級日誌を記入する。
咲良「…。」
帆乃「あ、話しかけちゃって大丈夫だった、?」
咲良「あ、うん。」
帆乃「あ、よかった。…てか、どうせ宿題出てないの篠崎と美來くらいなんじゃない?」
咲良「あ、ううん、篠崎くんは出てたよ。」
帆乃「まじ!?珍しい。」
咲良「昼休みに来た、「写させてー」って。」
帆乃「え、で、写させたの?咲良ちゃん。」
咲良「うん。」
帆乃「えぇ、ダメだよ甘やかしちゃ。」
咲良「なんか、頼ってもらえるの、嬉しいし。」
帆乃「そうやって自分を安売りするの良くないからね?知ってるよ?掃除当番とかもよく代わってるでしょ。」
咲良「あー、うん。」
帆乃「なんで!」
咲良「いや、ダメな時はほんとに断るよ?でも、みんな放課後忙しそうだから。」
帆乃「そんな優しいから、皆んな甘えちゃうんだよ。」
咲良「甘やかしちゃダメ?」
帆乃「だめ、絶対だめ。」
咲良「…でも、お願いして、いいよって言われたら、嬉しいでしょ?」
帆乃「いや、そりゃ嬉しいけどさ…。それが何回も続くとね、周りはその、舐めてかかっちゃうんだよ、咲良ちゃんのこと。「この子なら代わってくれるー!」って。」
咲良「頼られるのは嬉しいけどね。」
帆乃「頼られるのと、頼られすぎるのは違うよ?」
咲良「…難しい。」
帆乃「そうかなー。」
咲良「帆乃ちゃんだって、よく頼られるじゃない?学級委員だし。」
帆乃「頼られるんじゃなくて、仕事だからやってるんだよ。わたしは、仕事をこなしてるだけ。」
咲良「学級委員がまとめてー、とか、学級委員が決めてーとかっていうのは頼りじゃないの?」
帆乃「頼りじゃないよ。間違いなく頼りじゃない。」
咲良「…ん?」
帆乃「例えばね、二学期の学級委員が…そうだな、篠崎だったとします。」
咲良「ほお。」
帆乃「だけど、篠崎はちゃらんぽらんだから、まとめることが出来ませんと。」
咲良「チャランポラン。」
帆乃「そんな時に先生とかみんなが「おい箕輪(帆乃)ー、元学級委員なんだからまとめてやれよー」っていうのは、これは頼り。」
咲良「…あ、もう学級委員じゃないのに、そういう仕事を頼むからってこと?」
帆乃「そゆこと。今私らがやってるのも、日直の仕事だからやってるわけでしょ?仕事をこなしてるわけでしょ?」
咲良「うん。」
帆乃「これは、誰かに頼られてやってる?」
咲良「やってない。」
帆乃「そゆこと。私は仕事以外のことはやらないの。情でも絶対に動かない。」
咲良「なんで?」
帆乃「損だから。」
咲良「損?」
帆乃「私だけが遊ぶ時間を減らして、頼られてやることやってやるってのに、頼ってきた相手がその空いた時間で遊んでたら嫌じゃん。」
咲良「…遊んでるのかな?」
帆乃「…咲良ちゃんのために言うけど、咲良ちゃんを頼ってきた相手は、空いた時間70パーの確率で遊んでるよ。」
咲良「…あら。」
咲良「…でも、30パーは助けられてるのか…。」
帆乃「違うよ?咲良ちゃん違うよ?」
咲良「え?」
帆乃「70パーは、甘やかしなんだよ??」
咲良「でも、30パーは助けられてる。」
帆乃「…咲良ちゃんは本当にいい子なんだね。」
咲良「いやいや。」
帆乃「あのね、発想の転換だよ。30パーだけを助けようとは思わない?」
咲良「そんなこと出来るの?」
帆乃「私はそうやってるよ。頼ってきた相手、全部突っぱねてる訳じゃなくて。本当に困ってる人だけを受け入れるの。」
咲良「どうやって見分けるの?」
帆乃「それは、…勘だよ。」
咲良「…勘?」
帆乃「うん。」
咲良「勘???」
帆乃「うん。え?」
咲良「…私には無理だ。」
帆乃「えええなんでなんで、簡単だって。頼ってきすぎな人とか、「あ、こいつ嘘だな」って思ったのを突っぱねればいいだけだって。」
咲良「…見分けられないよ。」
帆乃「いや、まじ簡単よ?」
咲良「帆乃ちゃんは簡単かもしれないけど、私は帆乃ちゃんじゃないから。」
帆乃「そうかなぁ。」
咲良「私は全員、困ってる人に見えちゃう。」
帆乃「…難しいか?」
咲良「難しいよ。だって、万が一遊びに行くから掃除代わって欲しい人とかも、サボりじゃなくて、本当に行きたい遊びかもしれないでしょ? あとは、いつもはサボりのつもりで頼んでた人も、その日だけは本当に大切な予定があって、代わって欲しいのかもしれないし。」
帆乃「…。」
咲良「難しいなー。それ見分けられる帆乃ちゃんってやっぱり凄いね。」
帆乃「…得意不得意、あるよね。」
咲良「あると思う。」
帆乃「咲良ちゃんはいい子だなー。」
咲良「…違うよ。」
帆乃「いやいや、謙遜するとこちゃう。ほんとに。ありがとうって言っとき。」
咲良「ううん、謙遜じゃなくてほんとに、いい子とかじゃなくて。」
帆乃「何。」
咲良「…弱いんだ。嫌われたくないからね。」
咲良、作業に集中し始める。
帆乃、そんな咲良を見つめる。
帆乃「誰も嫌わないよ、そんな簡単に。」
咲良「…帆乃ちゃんは嫌いな人いなさそうだもんね。」
帆乃「いるよ?いっぱいいるよ?」
咲良「えっ。」
帆乃「嫌いな人とは関わらないようにしてるから、そう見えるだけだよ。」
咲良「そうだったんだ。」
帆乃「でも、咲良ちゃんのことを嫌いって言う人、絶対居ないと思うよ。」
咲良「それはないよ。」
帆乃「ううん。」
咲良「だったらもっと、友達いるもん。」
帆乃「みんな咲良ちゃんのことをよく知ったら、絶対に嫌いにならないよ。」
咲良「上辺だけだから?」
帆乃「あんま、素出さないでしょ。」
咲良「どれが素かもわからない。多分出てないんだと思う。」
帆乃「今は?」
咲良「…わかんない。」
帆乃「…私、咲良ちゃんのこと、実は苦手だと思ってた。」
咲良「え?」
帆乃「嫌いじゃないよ?」
咲良「…うん。」
帆乃「だって私と全然違うじゃん。何でもひきうけて、何でも身代わりになって、なんでそこまでして自分の身を削るんだろうって思ってた。だから今日も実は、そういう話吹っ掛けた。」
咲良「…うん。」
帆乃「でも、今日話して、好きになっちゃった。咲良ちゃんの素を知って、好きになった。」
咲良「え?」
帆乃「知らなかったんだもん。こんなに、人のことを大切に思ってるって。」
咲良「…そんなことないって、だから、嫌われたくなくて、」
帆乃「同じことだよ。人って、誰かじゃなくて、自分のことでもあるよ。」
咲良「自分?」
帆乃「自分のことも大切に思ってるから相手を敬うし、相手のことも大切に思ってたじゃん。本当に行きたい遊びかもしれないって。嫌われたくないんでしょ?」
咲良「嫌われたくないは、自分のため。それって悪いことだよ。」
帆乃「自分のこと大切に出来ない人は、誰かにも優しく出来ないよ。」
間。
咲良「帆乃ちゃん。」
帆乃「ん?」
咲良「帆乃ちゃんって、すごく大人だね。」
帆乃「はい?」
咲良「私、そんなこと言える人周りにいなかったから。ちょっとびっくりしてる。」
帆乃「ウケる。」
咲良「私も帆乃ちゃんのこと誤解してた。キラキラしてたから。」
帆乃「理由になってないよそれ。」
咲良「クラスの中心の人って、なんかこう…自分勝手だと思ってた。勝手なイメージごめんね。」
帆乃「自分勝手だよ私。損するとか言っちゃったし(笑)」
咲良「でも、私も自分勝手だった。自分が嫌われたくないから、断ってなかったわけだし。」
帆乃「人間みんな自分勝手だね。」
咲良「そうかもしれない。」
帆乃「エゴだね。もしかしてこれ、中学生で気づけちゃった私たち凄いのでは?」
咲良「あはは、凄いかもしれない。」
帆乃「明日みんなに言ってやろ。」
咲良「カッコイイね、帆乃ちゃん。」
帆乃「え、咲良ちゃんの方がカッコイイよ。」
咲良「なんで?」
帆乃「んー、私にはできないことができるから。」
咲良「それ、帆乃ちゃんもだよ。」
帆乃「じゃあ、2人ともかっこいいね。」
咲良「そうだね。」
咲良「日誌かけた?」
帆乃「あっ、やば。そっちは?チェック。」
咲良「終わったー。」
帆乃「うわぁごめん!えっと、四限は、」
咲良「四限は体育だね」
帆乃「お、体育は思い出せるよ。えっとね、」
咲良「跳び箱だね。」
帆乃「ちょ、先に言うの無しー!」
咲良「ごめんごめん(笑)」
おしまい
ーあとがきー
断るのが苦手な子っていますよね。
クラスで目立つような子でも、そうでない子でも。
何でも引き受けちゃう子。
それにはただ優しいだけじゃなくて、優しさの裏に色んな思いがあることを知って欲しいっていう話です。
そしてそんな子を、利用するのではなく尊重してあげて欲しい、というお話でした。
咲良と帆乃は、クラスでは別のグループにいるような子です。そんなふたりがたまたま日直で一緒になって会話を交わすのって、化学反応が起きていいですよね。
これからも2人は、しょっちゅう話すような仲にはならない。けれど、お互いに認めあっている素敵な仲。