No.17 ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」
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2018年7月中旬
(あぁ〜…緊張するな…)
僕は、ビンタン区のあるカフェにいた。
やっとの思いで取り付けた、
イェンとの約束があったのである。
(ここまで長かったな…)
6月初旬にファンティエトでイェンと出会い、
その後メッセージのやり取りをし始めた。
イェンから返信が来るたびに、
Google先生に質問しては、
イェンに送る、これを繰り返した。
何度かデートにも誘った。
「Are you free on next weekend?(次の週末は暇?)」
「No I'm busy.(ダメ、忙しい)」
また、
「I wanna go to 〇〇 coffee shop.
Do you wanna come with me?
(〇〇というコーヒーショップに
行きたいんだけど、一緒に行かない?)」
「No I've been there before.
(行ったことあるから行かない)」
と、何度かデートに誘っては、
断られ続け、最終的に、
「Plz teach me Vietnamese!!(僕にベトナム語を教えてくれ!!)
I can teach you Japanese!!(僕は、日本語を教えられるよ!!)」
と伝家の宝刀を抜き、
何とか約束を取り付ける事に成功した。
そんなやり取りの後であるため、
(本当に来るだろうか?)
と疑心暗鬼で、ソワソワしていた。
僕が待っているのは、2階の階段付近の席だった。
ふと、カツカツという音が階段から
聞こえてきた。
(イェン…かな?)
と待っていると、彼女の顔が見えた。
「Hi long time no see you.(やあ、久しぶりだね)」
「Hi(ええ)」
そのまま沈黙する。慌てて、
「Did you order drink?(飲み物頼んだ?)」
「No not yet.(いいえ、まだよ)」
「OK エモーイ!!(すみません!!)」
店員が上がってくる。
彼女は、ベトナム語で何かを頼んだ?
「What did you order?(何を頼んだの?)」
「Hot cocoa.(ホットココア)」
他愛ない会話を終えると、
彼女は、急にオホンと咳払いをした。
「How much have you studied Vietnamese?
(ベトナム語をどの位勉強したの?)」
「Not at all yet.(まだ全然だね)」
「Ok if so let's start from first step
(じゃあ、初めからスタートしましょう)」
(何か、やたら先生然としてるな。)
関心しながらいると、
彼女がカバンから何かを出した。
「I give you this text book(この教科書をあげるわ).」
(え!!まさか、俺の為に買ってくれたの?)
ベトナム人の平均年収は、約30万円。
月収に直すと、平均2.5万円だ。
彼女は日系企業に勤めている為、
平均よりは高いだろうが。
彼女の心意気に感動してると、
「Hey! What are you doing?(何してるの!)
Open the textbook!!(教科書を開きなさい!)」
「Ok! Ok!」
(とんだスパルタ教師だったな(苦笑))
彼女に追い立てられるように、
ベトナム語の勉強に取り組んでいくのだった。
彼女について、ベトナム語の6つの声調を
繰り返し練習していく。
「マ〜、マー、マ〜!…」
隣で、イェンが、下を向き、
お腹を抱えて笑いたいのを必死に
抑えている。
僕が止まると、
「Keep going!(続けて!)」
と促す。僕がまた、
「マ〜、マー、マ〜!…」
とやり出すと、
また下を向いて、笑い出す!!
いい加減嫌になった僕は、
「Hey!! Don't laugh at me!!(ねえ!笑わないでよ!)」
「Sorry! Sorry! But…(ごめん!ごめん!でも…)」
「But?」
「You are terrible!!hahaha!!(あなたヒドイ!!)」
ついに笑い出してしまった。
僕も可笑しくなって、笑い出した。
先生が匙を投げたら、もう勉強どころではない。
もういい加減僕も疲れて来たので、
「Hey! Did you come here by motorbike?(ねえ、バイクで来た?)」
「Yes.」
「How about driving around?(バイクでドライブしない?)」
「Ok but can you drive motorbike?(バイク運転出来る?)」
「Of course!!(もちろん!!)」
僕らは、カフェでお会計を済ますと、
彼女のバイクで街に出た。
コーヒー代は、彼女は固辞したが、
教科書のお礼と言って、
僕が奢った。
「Where will we go?(どこに行くつもり?)」
「Somewhere else!(どこかさ!)」
「I like that!(いいね!)」
僕らは、街中を、右へ左へと駆け抜けていく。
僕は、イェンに、
Which way? = どっち?
Right = みぎ
Left = ひだり
という日本語を教えたので、
曲がり角に差し掛かる度に、
「どっち?」
「ミギ!」
というやり取りをする。
また、右しか行けない道で、
「どっち?」
「ヒダリ!」
「You mistake!! Right is みぎ!!」
「Oh I mistake!!バシッ!!」
「Why did you hit me!!(何で叩くんだよ!!)」
イェンがケラケラ笑う。
くだらないやり取りだが、
これだけで楽しい。
永遠に続いても良いと思っていたが、
日も落ちて来たので、彼女の家の側まで
バイクで送った。バイクを降りて、
彼女にヘルメットを返し、
「Thank you so much for today!!(今日はありがとう!)」
と伝える。イェンは、
「Thank you. It was funny day.haha(今日はおかし日だったわ)
See you next time!!(またね!)」
と言い、バイクで去って行く。
(またね!って事は、また会ってくれるんだ!)
ウキウキしながら、タクシーに乗って
自宅に戻ると、現実に引き戻された。
(黒川社長への報告書と、
プレゼン資料作成しなきゃ…)
PCを引っ掴むと、もう一度外に出て、
最早行きつけのThe Coffee house & Tea Bag
に入っていく。
(今日も夜は長そうだな。)
その予想通り、結局、黒川社長への報告資料は
The Coffee house & Tea Bagカフェの
閉店時間までに終わったが、プレゼン資料がまだだった。
深夜まで営業している、ソーナムカフェをハシゴして、
朝方まで作業をして、何とか終えたのだった。
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