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【超短編小説】ころがるいし(300字)

石は転がり続けていた。

雨が振ろうが、風が吹こうが、毎日転がり続けていた。

だが、それは自分で考えての行動ではなく、ただ自然に身をまかせているだけであった。

ある日、石は思った。

「自分は何故転がり続けるのだろう?」

そう思った時、石は再び転がりたいと思える日まで、転がることを止める決心をした。

雨が振ろうが、風が吹こうが、石は微動だにしなかった。

しかし、自然に身をまかせて動かされている時よりも、自分の考えで止まっているときの方が、石は自分が生きていることが実感できた。

石にはいつの間にか苔がつくようになり、ひと回りもふた回りも大きくなったようにみえた。

そろそろ動きだそうとしたとき、

石は意志に変わっていた。

【超短編小説】ころがるいし(300字)

これは以前連載していた300字小説のリメイクです。

慌ただしく転がり続ける日々。

転がされているのではなく、

自分の意思で転がり続けたいと

転がり続ける男はそう思います。

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小川 功治朗
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