#228 火を消すことより火を起こさないことを称えたい
こんにちは。ITベンチャーエンジニアのこへいです。
前回、前々回、プロフェッショナルの仕事は期待値をコントロールすることであり、期待値をコントロールすることは生産性の向上に繋がるという話をしました。
期待値をコントロールし、プロジェクトを炎上させずに8割の労力で完遂することは非常に価値のあることであると考えているのですが、意外と評価はされないと感じます。
というのも、前評判で難しいと言われているプロジェクトを無事に簡潔させることよりも、炎上して何とか火を消したプロジェクトの方が注目を集めるからです。
炎上が発覚すると社内でもトッププライオリティの課題となり、火を消すためにヘルプがかき集められ一丸となって火を消しにかかります。そのプロジェクトの状況は社内でも注目され関係者も増えていくため、炎上を食い止めることが出来た時は拍手喝采です。窮地を切り抜けたメンバーには「良くやった」と称賛され、多くの関係者の間には達成感が生まれます。
火を消してくれたメンバーには最大級の賛辞を贈りたいです。
一方で、「難題を解決した」という成功体験や美談として終わらせてはいけません。当然、振り返りをして次のプロジェクトでは炎上を未然に防げるように、この経験を組織の血肉とします。
しかし、それで終わりではありません。
プロジェクトの火を消すために、そのプロジェクトにリソースを集中させるということは他のプロジェクトの人員を減らすことを意味します。すると、今度はヘルプを出したプロジェクトが炎上のリスクを抱えることになります。
数珠つなぎの炎上の連鎖を止めることは容易でありません。
そのため、プロジェクトを炎上させないことはもっと評価を受けるべきであり、難しいプロジェクトを難しくなくなるように期待値をコントロールすることも賞賛されるべきと考えます。
そして、炎上させないためのプロジェクト進行やノウハウに注目を集めることが健全です。
ですが、実際には火を起こさないことより、火を消すことが大きな注目を浴び、評価を得ます。
プロ野球の試合でもダイビングキャッチでアウトを取るとスタンドは盛り上がります。カッコいいですからね。
ただ、バッターが打つ瞬間に打球を予測し適切なポジションを取ることで態勢を崩さずに捕球することでゲッツーを奪えたかもしれません。ポジショニングの悪い野球の守備でのダイビングキャッチを称えてしまうののは評価者のレベルが低いということです。
サッカーにおいても本当に良いキーパーは試合終了時にグローブが汚れていないと言われます。コーチングによりディフェンスラインをコントロールすることでシュートを打たせないことがよりセーフティだからです。
相手が格上で守備一辺倒の試合でディフェンスラインが完全に崩された状況でもファインセーブは称えられるべきです。
ちなみに、火を消すことはアドレナリンが出て楽しい面もあります。
コーチングが下手で決定的なシュートを打たせてしまったとしてもシュートストップしたキーバーは興奮しチームもキーバーを称えます。当事者は「あれはコーチングが良くない」などと冷静に判断することは出来ません。そのため、コートの外から客観的に状況を分析し改善を促す監督やスタッフ、ベンチメンバーの存在は重要なのです。
会社組織においても、正しく評価し改善を促せるマネージャーや社員一人一人のレベルの高さが重要です。
ファインセーブで盛り上がるチームに水を差す行為は嫌がられるため、適切に改善を促すことは非常に難しいですが、改善を実現させるのが良いマネージャーであり、プロフェッショナルなのだと思います。
ということで、今日は火を消すことより火を起こさないのが本当のプロフェッショナルであり、火を起こさないことを称えられるのがプロフェッショナルな集団であるという話でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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