宝物の時間
先日、6年間の読書記録を綴っていたXのアカウントを閉じた。本を読んで感想の文章を考え、イメージ書影を撮る。SNSで読書アカなるものがなかったら、きっとこんなに本を読んだ6年間はなかっただろう。心が触れ合う出会いも忘れられない宝物。
でもいつまで続けるかはずっと考えていた。理由の一つは時間を取られ過ぎること。ひょっとしたら本を読んでいる時間より、XのTLを追っている時間の方が長かったかもしれない。たくさん温かいいいねをいただくのは嬉しいことで、自分もその方々のホームに伺いお返しをする。それだけでほとんど真夜中までかかる。いつも反応してくださる方々のポストも見逃がさないようにと密かに作っていたリストを辿る。
私がフォローしていた方々は穏やかで律儀なかたが多く、相互になっても変わることなく交流してくださった忘れ難い存在だ。
そんな大切な方々とお別れする寂しさに耐えられるのだろうかという思いは今もある。ただ、Xを閉じた後の開放感は正直なところ大きい。携帯を見ている時間が格段に減り、さまざまな雑誌を心ゆくまで乱読したり、膝に乗ってくる猫を撫でながらサブスクの映画を何本も観たり。定期的に読了ポストを上げることは義務ではないのに、Xの中ではいつの間にか自分への『MUST』になっていた。
『MUST』〜ナニナニしなければならない…..というあの英語。
最近読んだ森沢明夫作品の『さやかの寿司』にこんなフレーズが出てくる。
強い意志を持って頑張るのも大事だけど、じつは、人生のなかから『MUST』をなるべく無くしておくことも大事なんだよ。わたしたちの頭に無意識に刷り込まれた『しなければならない』とか『こうあるべき』っていう考えって、けっこうな確率で、間違いだったり、思い込みだったりするんだって。
馴れ合いになってしまったやり方で自分を縛らず、頭も身体も心もなるべく自由に開放しておくこと。何も追わない気楽さにこの一週間はゆっくり睡眠をとり、新しいイヤホンを買って散歩の景色を楽しんだ。
大好きな読書はもちろん続けている。今月は14冊読んでいた。きっと月末今頃は今月読んだ本のポストが読書アカのTLを賑わせていることだろう。
今月の一推しは何と言っても小川洋子さんの『ミーナの行進』だ。米TIME誌発表の「2024年の必読書100冊」に選出された作品。世界各国の小説をはじめ様々なジャンルから選ばれた100冊の中、日本人作家の作品はこの一冊のみという。
未読の方はぜひ手にとられてみてほしい。端正な文章、ノスタルジックで不思議な読み心地の奥に密やかに流れる優しさと哀しみ。
これからnoteで、読書の記録をはじめ色々な日々の思いを記していく。
できればXで仲良くしていただいた方々の目に留まることを期待しながら。
「愛してる」の響きだけで 強くなれる気がしたよ
いつかまた この場所で 君とめぐり会いたい
スピッツ『チェリー』